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『オキュパイ・ラブ』上映会
ドキュメンタリー映画『オキュパイ・ラブ』の上映会を開催しました。
アラブの春、スペインの15M運動、そしてニューヨークのオキュパイ運動を追ったドキュメンタリーで、2011~2012年に撮影され2013年に公開された作品です。
「愛」を芯に置いた独特な映画
監督はカナダ人のベルクロウ・リッパー。過去にカナダのアカデミー賞と呼ばれるジニー賞を二度、受賞しています。本作では、運動の当事者に共感しつつも、スタンスとして外部の眼に徹しているように感じます。作品を通して彼らに同じ問いを投げかけ続けます。その問いとは
この危機を、愛の物語に変えられるだろうか?
というもの。
愛の物語?
英語では”love story”と言っているぞ。
果たして、どういう意味なのだろうか?作品中、何十回と繰り返される「愛」という言葉、その真意を考えながら鑑賞しました。
僕らの上映会「URLシネマ」は、鑑賞後の対話を大切にしています。今回はワールドカフェのスタイルで対話をしました。
・彼らが言う「愛」とはどんなものだろうか?
・自分が理想とする社会(世界)は、どんなものだろうか?
シンプルながら深いお題に、それぞれの心に湧いた思いや、世の中への意見を自由に交わしました。
新しいタイプの市民運動
エジプト革命。エジプトで30年ものあいだ独裁を続けていたムバラクは、わずか2週間でその座を降りました。大規模運動の場となったタハリール広場には、数千人の市民が集まり、その数が多すぎて警察も軍も手が付けられなくなります。そこは彼らの自治区となっていきました。
スペインの15M運動。反緊縮、反グローバル化を訴える人たちが口を揃えて「水平」という言葉を使います。自分たちは水平につながっているのだ、と。そこにはキング牧師のような強烈なリーダーはいません。新しい運動の形だ、と彼らも誇りに思っています。
ニューヨークのオキュパイ運動。まるで地球儀の西から東へ、エジプト革命(1月)、15M運動(5月)が飛び火して、ニューヨークでは9月に始まりました。ウオール街を占拠し自治を始める彼らは、あくまでも横の連帯を大切にし、「要求ではなく議論の場」「問題の確認だ」と言って参加者同士が語り合ったり歌ったり。作家や専門家が過去に例を見ない市民運動だと口々に解説を入れます。
2011年に起きたうねりは、怒りに任せた抗議運動ではなく、思いやりや信頼を源にしたムーブメントの様相を呈します。
格差への不満から始まった彼らのメッセージも、地球環境や人権問題などが加わり多様なものへ膨らんでいきました。
皆さんの意見 〜愛(love)とはどんなもの?〜
この映画で繰り返し出てくる「愛」という言葉は、実にいろいろな使われ方をしていました。対話の時間では、彼らの愛(love)とは、どのようなものだったのだろうか、ということを話しました。
・愛とは共感すること。
・愛情のほうが訳としてしっくりきます。あらゆる人間に生まれながらにして備わっているのが他者への愛情です。
・有無を言わさない感じがして違和感を持ってしまいました。
・相手を思い慈しむこと。そのために行動し幸福を感じること。
・映画の「love」は、意味が広かった。信用すること、受け入れること、否定しないこと。オープンなつながりのための心持ち。
・自分を愛するからこそ、信頼し、行動に起こすと感じた。
やはり日本人の愛は「恋愛」の意味合いが強いのに対して、英語の「love」には思いやる、信用する、などのエッセンスを含んでいるように感じます。
その後、社会の格差は改善しているのか?
僕は、上映会の最後に数枚のスライドを映して「現在の話」をしました。あれだけの熱量と広がりをみせた運動の後、本当に格差の問題は解決へ向かっているのだろうか。
映画のその後、現在の姿を共有するためです。
調べると、格差はむしろ広がっています。私見としては、世界中の大国が「金融緩和」を推し進めたことにリンクします。目先の景気対策のために市場へ供給されている大量のお金は今のところ、金持ちをより富ませる方向へ流れているようです。
春は必ず訪れる
後のスライド。本作『オキュパイ・ラブ』にも登場した作家レベッカ・ソルニットの言葉です。
最オキュパイ運動の途中、ある夜に運動のテントや看板が一夜にして撤去されたことがありました。それをうけて彼女が寄せた寄稿文の一部に、この言葉がありました。
【花を引き抜くことはできても、春の訪れは止められない】
まだ道半ばなのかもしれません。本当の自由と平等、そして愛と幸せに満ちた世界。
そう、「春」が必ず来るのを信じること。
諦める必要はないこと。
そんなことを感じる、とても力強い言葉です。
※次回は『happy - しあわせを探すあなたへ』を上映します。
Urano, a member of URL cinema with "LOVE"
● 参考:アラブの春●
アラブの春は、2010年12月に起きたチュニジアの反政府運動(ジャスミン革命)が、中東全域に広まった一連の騒乱の総称。外国の武力でもなく、政権内部のクーデターでもなく、一般市民の蜂起によって超長期の独裁政権が次々に倒れたことは、歴史上特筆すべきものです。(リビアのカダフィはなんと42年も独裁者の座についていました。)
政権が倒れた4か国以外にも、憲法が改正された国もありました。下図は外務省のサイト情報ですが、色の塗られていない国でも、数千人規模が同時期に発生しています。SNSの伝搬力がリアルに躍動したのがアラブの春でした。
シリアを始めとして、リビアもイエメンも決して自由と平和を勝ち取ったとは言えないのが現状のようです。
北アフリカのモロッコにもアラブの春は影響したようです。
当時、どのようなことが起きていたのでしょうか。
僕らはまさに震災の最中でした。海外のことに関心が向いていなかったと思います。
モロッコやエジプトのその頃のことは、これから知りたいところです。