空だけが広い、この社会を憂う / 映画『すばらしき世界』の感想にかえて
前作『永い言い訳』を5人目の子どもと呼ぶ西川美和監督が、5年ぶりに産み落した『すばらしき世界』。刑務所から出てきた主人公の三上は、殺人を犯した元ヤクザである。
名もなき人間が、システムのすき間を埋めている旭川刑務所での13年の刑期を終えた三上は、東京の下町で暮らし始める。予想通り「社会」は彼に不寛容だった。社会とはシステムのこと、そしてシステムに従う無数の人々のことだ。
しかし、何人かは違った。スーパーの店長、身元引き受け人の弁護士とその妻、役所のケースワーカー。常識やル