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深夜特急よ、オレの体を照らしてくれ!

「ミッドナイト・スペシャル」という歌がある。初めての商業録音は1926年。30年代に録音され、以降の定番となったレッドベリーのヴァージョンをカバーしたブルース・シンガーやフォーク・シンガーを始め、50年代末のイギリスでスキッフル・スタイルでヒットさせたロニー・ドネガン、それをおそらく少年時代に聞いていたポール・マッカートニーやヴァン・モリソン、そしてクリーデンス・クリアウォーター・リヴァイバルのようなロック・バンドによるヴァージョン、ポップ・コーラスのアバに至るまで、数多くのアーチストが採り上げているブルースのクラシックだ。

「ミッドナイト・スペシャル」は、牢屋にとらわれた囚人達を発祥とし、アメリカ南部に広がったとされている。1930年代にレッドベリーの演奏がジョンとアランのロマックス親子によって録音されたのも、実際に刑務所内だった。歌詞に登場する「ミッドナイト・スペシャル」とは、ここではひとまず深夜特急といった意味で理解することにしよう。「深夜特急よ、オレの体を照らしてくれ」として、歌い手はヘッドライトの光が自身の体に当たることを願う。「オレの体を照らしてくれ」と歌う、この歌詞の意味が前々から気になっていた。今一つ、その意味が分からなかったのだ。

最近になって、刑務所の囚人達の間で、深夜特急のヘッドライトの光が牢屋に漏れ込み体に当たった者は、"自由の身になれると信じられていた"と知って、腑に落ちた。であればこそ、「『ミッド・ナイト・スペシャル』よ、オレに光を当ててくれ」と切実に願う気持ちがわかる。「ミッド・ナイト・スペシャル」のヘッドライトは、自由への救済の光だったのだ。

アメリカのフォーク・ソングにおいては、鉄道は常に重要なテーマであり、要素だった。草原や山間を快走する列車の姿に喜びを見いだしたかと思うと、時には遥かな故郷を思い起こさせる望郷の象徴であり、またブルースやゴスペルにおいては特にそうなのだが、自身を自由と栄光に導いてくれる魔法そのものだった。


歌がヒットして広まるにつれ、「ミッド・ナイト・スペシャル」は特別な光を放つ列車とでもいうように、おそらく歌詞の解釈は一般化していったのだろう。しかし根っこの根っこの所では、より具体的で深く切実な意味がはらまれていたと知って、思わず背筋を伸ばしながら歌を聴いている自分がいた。


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