音楽家 佐久間順平に会った_5
ゆっくり話を聞きたいと思っていた人がいた。さりげない振る舞いや、ふと発する言葉に惹かれた。自分の場所で生きているように見えた。どんな来し方をしてきたのだろう。覗きたくなった。そんな人たちの探訪記「あの人を訪ねる」。
第四回には、佐久間順平クンに登場していただきました。
佐久間クンとボクとは、高校で同級生でした。高校時代に二人が組んだデュオ「林亭」の活動は、休止期間を挟みつつ今も続いており、以来50年余の永き時を重ねました。
そしてお互いの年齢は、70歳の古希になりました。この人生の節目のタイミングに、佐久間クンからじっくり話を聞いてみようとの思いから、このロング・インタビューがスタートしました。
今回は佐久間クンと親交の深い小室等さんのこと、そして南こうせつバンドの一員としてサポートを続けている南こうせつさんについて、語ってもらいました。
前編の
「音楽家 佐久間順平と会った_1」はこちらから、
「音楽家 佐久間順平と会った_2」はこちらから、
「音楽家 佐久間順平と会った_3」はこちらから、
「音楽家 佐久間順平と会った_4」はこちらから、ご一読ください。
小室等さんから広がった人の輪。
大江田:こうして話を聞いてくると、ことあるごとに佐久間を永さんに会わせる場所に引っ張り出そうとしたりしてくれたりと、小室等さんって佐久間にとってすごく大切な人なんだね。
佐久間:うん。
大江田:小室さんと初めて会ったのは、いつごろなの。
佐久間:ちゃんと覚えてないんだよ。確か渡さんの繋がりだったと思う。ライブの現場で会ったんじゃないかな。しばらくして小室さんのレコーディングにも、呼んでもらうようになった。
大江田:1977年のヒルトップ・ストリングス・バンドのアルバムのプロデューサーも小室さんだものね。そういえば「スパイものがたり」のお芝居の舞台でも共演していたよね。
順平さんのこと
ぼくが、ステージで順平さんと一緒したのは、数年前、ミュージカル仕立ての芝居『スパイものがたり』の再演時でした。彼の活躍はみみにしていましたが、ぼくの事情もあり、其の日までとうとう合奏することはありませんでした。『スパイものがたり』といえは゛知る人ぞ知るあの歌「雨が空から降れば」が、劇中歌としてつかわれた芝居です。
この芝居は小室等を中心とする“六文銭”の生演奏とともに進行していきます。
演奏の中心に、順平さんがいたわけです。ただでさえ、楽器奏者としては出番のない僕は、カスタネットをたたいたりの“擬音屋”に転職させられたのでした。
その舞台以降は幾度かステージを一緒することもあり、やっと、イギリス館に、彼を引っ張り出すチャンスにめぐまれたわけです。売れっ子の彼が出演の承諾を電話で言ってきたのは、遠くアメリカ合衆国でのみなみこうせつさんのコンサートの合間でした。そして、僕がそんな留守番電話をきいたのは、横浜のあちこちを走り回ってふらふらになって帰ってきたあとでした。
順平さんの歌と演奏をゆっくり聞かせてもらいます。そして、二人で何ができるのか、それもたのしみです。
2003年夏 及川記
六文銭の一員、及川恒平さんが、ご自身のホームページにこのように書いておられました。
佐久間:MXテレビで放送されていた「小室等の新 音楽夜話」にも、よく呼んでもらった。あの番組には、さとう宗幸さんや、ジェリー藤尾さんのサポートでも出演したよ。
大江田: 林亭も呼んでもらったね。「佐久間順平さんは何度もこの番組に出演してるから、今日は彼から話を聞くのはやめて、大江田信さんの話を聞きましょう」と小室さんから本番で急に振られて、オレが焦るという出来事があった(笑)。
大江田:フォーライフ・レコードでの小室さんのアルバムの録音に参加しているよね。
佐久間:うん。
大江田:アレンジを頼まれたの?
佐久間: アレンジというほどのことじゃないけど。さて、どうしようかっていう時にね、みんなでアイデアを出しながらアレンジを進めていった。ああだこうだって言いながらやるんだから、時間かかるんだ。今思うと、一番贅沢なレコーディングだよね。
武満徹さんの作品集「武満徹ソングブック」を小室さんが制作した時には、オレがたたき台の譜面を用意したのね。武満さんの合唱曲はスコア譜になっているでしょ。スコアのピアノ譜とコーラス譜からコードを解析して、譜面を作ったんだ。
佐久間: その後、小室さんを介してクラシック・ギタリストの荘村清志さんのために、「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」や「翼」といった武満さんの楽曲をギター譜にしてくれって言われてさ、一生懸命書いた。クラシック・ギターの譜面の書き方って独特なのよ。ああ、これ難しいなって思いながら、見様見真似で書いたんだ。さらにまた「アルトの人と一緒にやるから、武満さんの『翼』と『小さな空』の伴奏用の譜面を書いてくれ」って言われて、また書いたよ(笑)。
大江田: コンサートの本番には行ったの?
佐久間: 本番には行けなかったな。リハーサルに立ち会った。ああしよう、こうしようって言いながらちょっと変更した。
荘村さんって、ものすごく上手なんだよね。オレの書いた「翼」の譜面を弾きながら、「ここは、さらにオクターブ上まで行っていいですか?」と聞いてくるからさ(笑)、驚いちゃうんだけど、「はい、やってください」って答えたよ(笑)。
佐久間順平編曲、小川明子歌唱、荘村清志伴奏による「翼」と「小さな空」のライブ演奏の模様です。「小川明子&荘村清志2015 王子ホール」より。
大江田: 武満さんて、コードを意識して曲を書いているのかな?
佐久間: 完全にコードを意識してるよ。特に合唱曲は、メロディーがシンプルで親しみやすい。ただ一筋縄ではいかないコードを使うから、あれ?って思うんだ。
大江田: このメロディーには、こういう和声をあてはめたいっていうのがあるんだね。
佐久間: そうそう、それもクラシックのアプローチっていうより、ジャズ理論のアプローチなんだな。だからオーギュメント系のコードを使ったりしているのね。「翼」も軽〜い4ビートになってる。ジャズがすごく好きだったからだろうね。
大江田: 「翼」は、すごくいい歌だよね。
「翼」は、1996年1月から1996年3月のあいだ、筑紫哲也さんがキャスターをしていたTBSテレビの番組「筑紫哲也NEWS23」のエンディングテーマになった。
佐久間: 石川セリさんが歌うヴァージョンが使われたよね。武満さんは、石川セリさんの歌声が好きだったらしい。
武満さんが亡くなって後、2002年から「武満徹全集」の出版が始まった。その「第5巻 うた、テープ音楽、舞台・TV・ラジオ作品、補遺」の「うた」の項で、武満作品を歌った小室さんのアルバム「武満徹ソングブック」の制作に関わったミュージシャン全員が集まって、「翼」について小室さんと共に行った座談会の模様が掲載されている。
小室さんは、いつまでもチャレンジしていく。
大江田:1998年9月10日のサイトウ・キネン・フェスティバル松本の「武満徹メモリアルコンサートIII」公演に、小室さんのサポートで出演しているね。
佐久間:小室さんと、ハーモニカの八木のぶおさんと、オレの3人で演奏した。マンドリンやバイオリンやら、いろいろ演奏したな。
大江田:パンフレットに「死んだ男の残したものは」「翼」ほかを演奏って書かれている。 客席の真ん中に小澤征爾さんが座って聞いていて、緊張したって言ってたよ(笑)。
2006年5月には、すみだトリフォニーホールで行なわれた「武満徹のうた~ポップスと合唱の音楽会」に出演している。その翌日が、林亭の春一番の出演だったので、会うや「昨日さ、クラシックの人たちに混ざって、緊張したんだよ」って、ボクに説明してくれたよ(笑)。これも小室さんのサポートだね。
2001年4月 「小室等カルテット」(小室等、田代耕一郎、八木のぶお、佐久間順平)の一員として高円寺JIROKICHIに出演したほか、2002年には「佐久間順平、小室等コンサート」、2004年には「高田渡&佐久間順平&小室等」でも高円寺JIROKICHIに出演している。そのほか1991年の小室さんのアルバム「午後のレフュージー」発売の際は、東中野ポレポレ坐でのライブにレコーディングメンバーの一員として参加したり、こうしてみると小室さんとのステージ共演は、数が多いね。
大江田:小室さんから得たものって何だろう?
佐久間:そうだな。いつまでたってもチャレンジしていく姿勢かな。小室さんには新しいものがすごく重要で、変わらず作り続けているんだよ。すごいなと思うんだよ。
最初の頃の小室さんは、フォークソングの範疇からは出てなかったじゃない。ところがさ、渡辺貞夫さんが1962年にアメリカのバークリー音楽大学に入学して、1965年に帰国する時に持って帰って来たバークリーメソッドを小室さんは勉強するのね。だからあの人の作曲法には、バークリーメソッドが入ってるわけ。フォークソングメソッドじゃないんだよ。だから変なコードを使ったりするわけ。
大江田 : それはご自身から聞いたの?
佐久間 : うん。
小室さんは谷川俊太郎さんと仲良くなって、一緒に作品作りを始めるじゃん。谷川さんの詩にも、バークリーメソッドを使って作曲をしていくんだ。だからちょっと不思議な感じになるんだ。
「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」の誕生秘話。
佐久間 : 谷川さんの作詞で武満さんが作曲した「ぽつねん」という曲があって。それのスコア譜があるんだけどさ、スコアの指示を書くところに武満さんの自筆で「Dedicated to Hitoshi Komuro」って書いてあるんだよ。小室さんがスコアを見せてくれた。
武満さんもクラシックの現代音楽の世界だけじゃなくて、ジャズとかフォークソングとか演歌とか、いろんなとこに目を向けてやっているんだなってことがわかるよね。
大江田:ハイ・ファイ・セットが歌った「燃える秋」というちょっとしたヒット曲もあったね。映画の主題歌だった。
佐久間:武満さんの映画音楽の作り方は、どうやらまず最初にテーマを作ってさ、テーマの変奏とそれから展開を作り、長大な1曲に仕上げる。それを必要な楽器編成で録音する。録音のときには、じゃあ、次はBパートに行ってDパートに行ってCパートに行って、みたいな感じで録るらしいんだよ。時代劇とか、そうやって録ってたんだって。
黒澤明監督作品の映画音楽を、武満さんは担当しているでしょ。黒沢さんはとにかく気分屋で、その日の気分によって現場がすごい変わるらしいんだ。機嫌が悪いと「こんな曲は駄目だ」と怒る。監督からケチョンケチョンに駄目出しされて、「もうできません」となって宿舎に引き揚げる。もう打ちひしがれてさ、ついつい出てきた歌が「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」なんだって(笑)。そういう裏話を聞くとさ、笑えないんだよオレは(笑)。
大江田:どうして笑えないの?
佐久間:一生懸命に作ってケチョンケチョンに言われて、否定されて。その気持ちがわかるんだよ。TBSのラジオドラマの音楽制作の仕事で、オレにもそういうことがあったからな。
誰の原作の小説だったかなぁ。昭和の戦後すぐの時代を背景にした、駄目な親父と3人の娘の物語。プロデューサーの岩澤敏さんから、音楽ディレクターのKさんが請け負った仕事だった。Kさんからオレに制作の依頼があった。オレはちょっと冒険しようかなと考え、アイリッシュ・ミュージックを使おうと思って、用意して行ったのね。録音スタジオの現場で岩澤さんに「ダメだよ、これは使えないよ」って言われたんだ。ミュージシャンも2、3人ほど呼んでいたんだけど、みんな固まっちゃってさ(笑)。Kさんにはアイリッシュ・ミュージックを使うことを含めて、おおよそのプランは伝えていたはずだったんだけど、岩澤さんには伝わってなかったんだな。
用意した譜面から使えそうなメロディーとコードをひろって、アプローチを変えテンポを変えサウンドを変えて、何とか録ったよ(笑)。アイリッシュの方法は一切使えないから。そういう経験もあるからさ、武満さんの「明日ハ晴レカナ、曇リカナ」を聞くとね、もう身につまされて(笑)。
初めて出会っていきなりバイオリンを弾いた。
大江田:そろそろこうせつさんのお話を聞いてもいい?
佐久間:どこですれ違ったかっていうと、やっぱり小室さんの縁なんだ。群馬県に月夜野って町があるじゃん。今は周囲と合併して、みなかみ町になっているけど。
1997年に、月夜野町が400人くらい収容するホールを作って(注:現みなかみ町カルチャーセンター内つきよのホール)、こけら落としに小室さんが頼まれてコンサートをしたの。ゲストにこうせつさんを呼んで。小室さんチームと、こうせつさんチームによるコンサートだよね。
そのときにこうせつさんから「バイオリン持っているんだったら、神田川を弾いてよ」っていきなり言われたわけ。それで「神田川」だけ弾いたのね。
日比谷野音でこうせつさんが1992年から毎年やってるグリーンパラダイスという野外コンサートがあって、1999年に小室さんが呼ばれた。オレも小室さんのサポートで演奏した。
その翌年の2000年に、かぐや姫が再結成するんだよ。こうせつさんと伊勢正三さんと山田パンダさんのかぐや姫に加えて、パーカッションとキーボードとオレの3人が、再結成ツアーに参加した。それで全国で10ヶ所ぐらい演ったかな。
ああ、終わったなと思っていたら、その次の年だったか、1月の末だったと思うけど、こうせつさんのマネージャーの嵐さんから、電話がかかってきたのね。「2月X日空いてますか?」と聞かれたからさ、「空いてますよ」って答えた。「実は川越でコンサートをやるんですけど、ちょっとサポートで入ってくれませんか」って言われたのね。
「いいけど、急ですね。どうしてなの?」って聞いた。その時点でこうせつさんのサポートで付いてたのは、ベースの河合徹三とキンタくんっていうギタリストと、ピアニストのピアノコウジの3人。実はこの年の1月28日に、大雪警報が出て東京に雪が降ったんだよ。翌朝に、ピアノコウジは雪かきをしようと思って家の外に出た。雪かきをしているうちに、つるんって転んで肘を打って骨折しちゃったんだ。当然ながら弾ける状態じゃないよね。
そういう事故が起こったもんだから、じゃあバイオリンを入れようかってことになって、慌てて嵐さんから電話があった。それからもう3日後が本番なんだよ。譜面と音資料を頼んで、急いで送ってもらった。音源からフレーズを拾ったり、自分なりのフレーズを譜面に書いたりしながら、2日間で練習した(笑)。多分7、8曲だったと思うけど。そして当日に会場で一回だけリハーサルして、本番を終えた。何とか終わって、はい、お疲れさんって(笑)。その後、オレがサポートに付くようになっちゃった。ピアノコウジの雪かきがなかったら、今はオレはこうせつさんをやってないんだよ(笑)。
大江田:月夜野の会場で、「神田川」にバイオリンで入ってくれって言われて演奏した時は、うまく行ったんだね。
佐久間:まあね。
大江田:その時は、このサポートが次に繋がるなという気持ちは、あんまりなかったのかな。
佐久間:全くないよ。川越の時も、言ってしまえばピアノコウジのトラじゃない?だから1回きりで終わりだなと思ってたんだよ。
大江田:そうなんだ!
佐久間:再結成ツアーに参加して、そしてその後のこうせつさんのツアーにも参加するようになった。だから2000年からなんだな、今年で丸25年経つわけです。
25年間で変わってきたこと。
大江田:バイオリンに向かう姿勢も、バイオリンの音そのものに対する自分の取り組みも、この期間でずいぶん変わってきたんでしょ?
佐久間:変わったよ。だってあの頃は下手くそだったもん。ものすごい下手だったから(笑)。もう練習しなきゃって、練習して練習して。
大江田: 練習を重ねたのね。
佐久間: そう。だってCDやDVDになって、市販されたりするじゃん。うわあ、下手くそだなあと、もう自分でつくづく思ってさ(笑)。最近でもまだ下手くそだけどね。ちゃんとしたバイオリンの人の音を聞くとさ、なんて上手いんだろうって(笑)、すごく思うからね。
大江田:なるほどねぇ。今でも練習をしつつ、自分に課題を与えたり、色々な発見を指標に加えたりしながら、目指してるものがあるということなんだね。
佐久間:うん、そうね。やっぱりね、下手よりうまい方がいいからさ。
大江田:こうせつさんのサポートの仕事しながら、自分としてもうちょっとこうしたいなとか、考えていることってある?
佐久間:やっぱりミュージシャンとしてはさ、例えばギターだったらね、ジャンゴ・ラインハルトみたいに弾きたいし、パット・メセニーみたいにも弾きたいとか、あるじゃん。バイオリンだったらさ、例えばステファン・グラッペリみたいに弾きたいし、イツァーク・パールマンとかヤッシャ・ハイフェッツみたいに弾きたいし。歌だったらさ、例えばスティーヴィー・ワンダーみたいに歌えたらなとかさ、あの人は天才だけどポール・マッカートニーみたいに歌えたらな、サッチモみたいに歌えたらなとかさ。みんなすごいよね、本当にすごいと思うね。
憧れだよね。そういうふうに普通の人は考えちゃうんだけど、渡さんは多分考えてないんだな。
大江田:いま挙がったような名前の人は、渡さんは聞いていないのかな。
佐久間:いや、聞いているよ、絶対。そこを踏襲しようとは思わないだけで。ボブ・ディランもそうじゃん。あらゆるものを聞いてる。それで自分の意見を持っている。
大江田: 不思議な人だよね。
佐久間: 大分で仕事があったついでに、スタッフ共々こうせつさんの家に寄らせてもらって、お茶をもらいながら、こうせつさんの処にあるギターの弦を取り替えたり、ギターを磨いたりしたのね。新しいオーディオ・ルームで、ディランの最新作を聴きながらやったんだけど、それがすごくいい。もちろん内容は全然わかんないんだけど、自由さがわかる。たがが外れたかのような感じの自由さで、ディランが歌ってる。君たちは、みんな自由だからねって歌っているように、聞こえるわけ。
東京国際フォーラムで「あの素晴しい歌をもう一度コンサート2023」があった。
大江田:2023年の9月29日だね。きたやまおさむさんとニッポン放送の上柳昌彦さんが進行役で、岡林信康、クミコ、清水ミチコ、南こうせつ、森山良子といった方々が出演されてます。
佐久間:その翌日も、こうせつさんと一緒だった。「昨日のコンサートの岡林さんがよかった」っていう話になったんだ。「ボクもすごくいいと思った。独自の路線で自分を貫いて、ただやってる。それはこないだ聞かせてもらったディランに通じますよね」って言ったら、こうせつさんが「そうなんだよね」って。
大江田:面白いね。
佐久間:こうせつさんには、いろんな音楽を聞いて、いろんなものを吸収して、またこれから先も作っていこうっていう意欲が、十分にあるわけよ。世間の人には「神田川」の人という認識しかないんだけどさ。
大江田: 現こうせつバンドの河合徹三さんも、いろんなことを一生懸命やってて、楽しそうだよね。
佐久間:うん。本当に彼は自分のやりたいことを、やりたいようにやってる感じだよ。
10の質問と答え
大江田: 最後に、今までインタビューをした方たち全員に聞いてる10の質問というのがあるんですけど。難しく考えずに直感的に答えてください。
好きな言葉を教えてください。
佐久間:ありがとう。
大江田:嫌いな言葉を教えてください。
佐久間:殺す。
大江田:気持ちを高揚させるものは何ですか。
佐久間:音楽かな。
大江田:うんざりすることはありますか?
佐久間:うんざりねえ、人間の業だな(笑)。
大江田:好きな音はありますか?
佐久間:音は大体好きだな。朝に聞く鳥の声とか、すごい好きだな。もう嬉しくなるよね。カラスの声でさえ嬉しいもんな。セミとか、秋の虫の声とか。
大江田:嫌いな音はありますか?
佐久間:そうだな、やっぱり戦争を想起させる音は嫌いだな。工場の音とかも、あんまり好きじゃないかもしれない。
大江田:好きな悪態を教えてください。
佐久間:アホですね!(笑)
大江田:今の職業以外でやってみたい職業を教えてください。
佐久間:特に無いかな。
大江田:絶対やりたくない職業はありますか?
佐久間:政治家かな(笑)。
大江田:あなたは今、天国に着きました。神様になんと言われたいですか?
佐久間:「ちょっと、忙しいから手伝ってくれる?」(笑)
C・S・ルイスが書いた「ナルニア国物語」って知ってる?物語の最後のところで、扉の話が出て来るのね。扉を通過すると天国というか、いい世界に行ける。その扉が見えない人は、ほら穴の真っ暗な中にいる。そこである種の選別が行われるんだよね。そういう話がある。
これを読んだときに、俺はその扉の門番の役なのかなと思った(笑)。だから、もしも神さまがそこにいるなら、「お前、ここで手伝え」って言われるのかなと思ったわけ(笑)。
大江田:長々とありがとうございました。