10. ケーキ屋からレストランへ
私は今まで主にレストランのパティシエとして働いてきました。
それは、レストランという空間が大好きだから。
18歳で滋賀から上京し専門学校へ入学。
19歳でフランスへ一年半留学。
帰国し、都内のケーキ屋に勤めるも、
1年間働いた後、銀座のレストランに入社。
社会人になった一年後にはもう既にレストランへ方向を変えました。
そこで今日は自分がケーキ屋からレストランに移った経緯を書いておこうと思います。
最初はケーキ屋に入社したものの、あまりのキツさと
給料の安さに身体と心はボロボロになりました。
いくつか理由があります。
まず、異常な勤務形態です。
5時~21時。週1休み。
給料は手取り11万。
社保無し。ボーナス無し。手当て無し。
家賃は職場から徒歩5分の所で月5万でした。
いやぁ。アホですよこれ。w 異常です。
今では考えられないですよねぇ。w
まだこんな感じのお菓子屋さんあるのかな?w
その当時はこの業界ではこれが当たり前だったんです。。。
フランスから帰ってきたばかりでお金も全然無くて、
貯金はおろか、生活するのでやっとでした。
でも、何故そこに勤めたのか。
理由はただ1つ。
その店で食べたシュークリームが美味しかったから。
たった、それだけです。w
理由なんてそんなもんやと思います。
やっぱり自分で食べて美味しいって思った店で働きたいと思いますし、一番の志望動機ですよね。
ただ、ここから理想と現実を味わうわけですよね。
フランスから帰ってきたばかりでかなり調子に乗ってましたし、そらもうイケイケです。
が、イケイケなのはほんの数日。
当然入社した日から先輩やシェフから怒涛の攻撃が始まるわけです。
そらそうです。何も出来ないんですから。w
それでも、なんとか食らい付いて仕事をいただけるようにしてましたが、ある時ふと思ったのです。
これは本当に自分がやりたい事なのか?
いつの間にか自分は日々の仕込みに追われ、
機械の様に働き、感情も無くなって、
仕事が単なる作業になってしまっていました。
ただやってるだけ。ただこなしてるだけ。
ただ終わらせるだけ。ただ朝早く来てるだけ。
これは一体なんだ?意味あるのかな?
お客様の事や周りの事など一切考えられてない自分に気付いたのです。
これは最悪です。
なので、もう次の日に辞めました。w
シェフにいきなり、すみません。と言い残し辞めました。
かなり悪質ですこれは。w
非常識極まりない。
でも、そんな気持ちで働いてる方が失礼だし嫌だったのでスパッと辞めてしまいました。
お店のシェフや先輩には本当に迷惑かけてしまいました。
本当にすみませんでした。
でも、今思うと辞めておいて正解だったなと思います。
だって、異常ですもん。w
でも、それ以上に自分が多くの方々に失礼な事をしてしまっている事が、何より嫌だったからです。
仕事が作業になってはならない。
何故、こうするのか?
何故、この順番なのか?
何故、この切り方なのか?
そこには全てに理由がある。
作る人の思いがあるのです。
そこに気付けなかった。。。
そしてその時一旦、お菓子屋から離れてみようと思いました。
フランス留学中は頻繁にレストランの食べ歩きをしましたし、ミシュランへの憧れもありました。
その後、すぐに友人に連絡を取り
たまたま、銀座のレストランを紹介してもらいました。
史上最年少でミシュラン3つ星を獲得したシェフですね。
更に異なる国で3つ星を獲得した世界初のシェフでもあります。
それまでのレストランは、シェフがいる店でしか星は取れないと言われていました。
しかし、デュカスはそれを覆し、自分が店がいなくてもその店ごとにシェフを雇い、看板を背負わせて3つ星を獲得させたのです。
これを知っていたので、まさか自分がデュカスのお店で
働けるとは思ってもいなかったですし、こんなチャンスはないなと思いすぐに面接を受けにいきました。
そこから、自分のレストランパティシエ人生が始まりまし
た。
もちろん、ケーキ屋での経験がなければ今の自分はないと思っています。
なぜなら、一つ目の挫折を経験したから。
これは経験しなくていいことなのかもしれませんが、
自分にとっては本当に価値のある経験でした。
別にこれを経験したからと言って、何も凄いわけでもないですし、自慢する事でもないです。
ただ、自分にとって価値のある事に出来るか出来ないかだけの話だと思ってます。
ネガティブな捉え方で終わらせるのと、ポジティブに捉えて先に繋げて行くのか。
何が言いたたいかというと
嫌なら辞めたっていいし、転職していいと思います。
極論、逃げてもいいと思います。
ただ、そこに対してしっかりと反省し、自分を見つめ直し、その先にどれだけの価値を見いだせるかが大切であると思う。
後悔しない覚悟を決める事だと思います。
自分の人生は自分で決めます。
そして、感謝を忘れない。
それが今後の人生を明るくしてくれると思います。
楽しんだもの勝ちです。
その時は目の前の事でいっぱいいっぱいだと思いますが、一度自分の限界を感じるまで必死になると見えてくるものがあると思います。
全てがいいわけではないですが、少なくとも私にはとって価値のある経験でした。
この道を教えてくれた両親に感謝し、今日もただ1日を大事に生きていくだけだ。
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