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「サービスの4特性」はもう古い?ーサービスマーケティング研究紹介ー

サービスには、4つの特性(無形性、異質性、同時性、消滅性)があると言われています。しかし、近年では、こうした4つの特性を持たないビジネスも存在しており、サービスマーケティングに関する研究成果も様々なものが発表されています。

そこで今回は、研究成果を踏まえつつ、最近のサービスマーケティング事情を紹介していきます。

サービスの4特性とは?

はじめに、サービスの4特性とは、どういったものか簡単に紹介します。

・無形性:「形がない」という特徴を、無形性と言います。パソコンなど製品を買う際は、触ったり色を確認するといったことが可能です。しかし、ヘアカットやマッサージなどは形がないため、購買前に触ることが不可能です。

・異質性:サービスの品質は、サービスの提供者によって大きく異なります。例えば、ヘアカットの技術は、美容師さんごとに大きく異なります。この特徴を「サービスの異質性」と言います。

・不可分性:生産と同時に消費が行われるため、サービスの提供者と顧客が同じ場所にいる必要がある特徴を、「サービスの不可分性」と言います。例えば、ヘアカットをする際には、美容師さんとお客さんが同じ場所にいなければ、サービスを提出できません。

・消滅性:サービスは在庫を抱えることがありません。この特徴を「サービスの消滅性」と言います。

最近の研究

サービスの4特性は、古くからある理論です。しかし、近年の研究では、サービスの4特性が必ずしも当てはまらないサービスも存在することが指摘されています(※1)。

今回の記事では、そうした例外の中でも、「不可分性」と「異質性」に着目していきましょう。

まず、不可分性について取り上げていきます。
不可分性とは、生産と同時に消費がおこなわれるという特徴のことでした。

しかし、サービスの中には、不可分性が成り立たないものもあります。
例えば、自動車の修理において、消費者は作業現場にいることなく、サービスがおこなわれます。また、クリーニングというサービスも、衣類を洗浄している間、消費者が工場にいるわけではありません。

KehとPangたちの研究では、この点に注目し、不可分性を満たすサービスと満たさないサービスを比較しました。この研究では、後者の方が利便性を感じやすい一方、心理的なリスクも抱きやすいことが明らかになりました(※2)。

また、異質性においても、様々な研究成果が発表されています。
異質性は、サービス提供者ごとの品質の違いという文脈で語られることが多くありました。例えば、「美容師Aさんと美容師Bさんでは、品質が異なるため、消費者は注意が必要」といった感じです。

しかし、同じ人でも、調子がいい日もあれば、悪い日もあるのではないでしょうか。言い換えると、美容師Aさんという同じサービス提供者であっても、何かしらの要因によって、パフォーマンスにバラつきが生じるのではないでしょうか。

実際に、従業員のパフォーマンスは、従業員の気分によって異なることが、過去の研究によってわかっています(※3)。

まとめ

今回は、サービスマーケティングに注目して、いくつかの研究を紹介してきました。サービス業は日本のGDPの中でも大きな割合を占めているといわれ、非常に重要な産業だと思います。

学術の分野でも長年注目されているテーマであり、サービス業を専門とする学術雑誌も存在します(例えば、Journal of Service Research誌など)。

今回取り上げた以外にも、色々なテーマが存在するため、今後いくつか紹介いていきたいと考えています。

※1:詳しくは、Lovelock, C., & Gummesson, E. (2004). Whither services marketing? In search of a new paradigm and fresh perspectives. Journal of service research, 7(1), 20-41.などを参照してください。
※2:Keh, H. T., & Pang, J. (2010). Customer reactions to service separation. Journal of Marketing, 74(2), 55-70.
※3:Tsai, W. C., Chen, C. C., & Liu, H. L. (2007). Test of a model linking employee positive moods and task performance. Journal of Applied Psychology, 92(6), 1570.


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