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製品とサービスを組み合わせることは、競争優位に繋がる~Hybrid Offeringの紹介~
今回の記事では、「Hybrid Offering」というマーケティングの理論を紹介していきます。Hybrid Offeringは、最近提唱された概念であるため、まだ研究成果も多くありません。そういった意味では、大きな可能性を秘めたテーマと言えるかもしれません。
Hybrid Offeringとは?
Hybrid Offeringは、「製品とサービスを組み合わせることで、別々に提供するよりも、よりbenefitをえられること」と定義されます(※1)。
つまり、製品とサービスを両方一緒に提供することで、互いに補完しあい、収益を最大化しようという戦略です。
例えば、Venkateshたちの研究では、製品とサービスの補完的な例として、iPodとiTunesを紹介しています(※2)。これは、iPodという製品とiTunesというサービスの組み合わせといえ、実際に当時の市場で大きなインパクトを残しました。
Hybrid Offeringをおこなうことのメリットとして、既存の顧客とより多くのビジネスができることや、コモディティ化を防ぐことで顧客の確保ができやすいという点があります(※3)。そのため、うまく仕組みを作ることによって、独自のポジションをとれる可能性があります。
とはいえ、一企業内で製品とサービスを両方提供することは、難しい場合があるでしょう。そこで最新の研究では、製品を取り扱う企業がサードパーティにサービスを委託する「Partnered Hybrid Offering」という概念も分析されています(※4)。
Hybrid Offeringとサービス業
これまでのHybrid Offering研究は、「製品を扱っている企業が、サービスを上手くミックスさせること」が主な観点になっているように思います。
しかし、サービス業においても、製品を販売することで収益を増大させることができるのではないでしょうか。
例えば、美容院においてヘアワックスやシャンプーといった製品が販売されていますが、サービスに加えて製品も買ってもらえれば、ロイヤルティの向上に繋がる可能性があります。
サービス業において追加メニュー(これまで顧客が買ってこなかった製品・サービス)を販売するための手段として、店員からの声掛けがありますが、タイミングなどによっては顧客が嫌がる可能性もあります。場合によっては、「押し売りされた」と感じてしまい、顧客が離れてしまう恐れもあるでしょう。
当然のことながら、サービス業の接客は非常に難しく、特に新しい製品・サービスをオススメする際には気をつかわなくてはいけません。逆に言うと、こうしたテーマは実務的にも学術的にも重要なテーマなのではないかと考えています。
私の知る限り、こうした問題意識を実証的に取り組んだ研究はまだ多くありません。私自身、購買データなどを上手く活用することで、こうした問題について研究していきたいと考えています。
※1: Ulaga, W., & Reinartz, W. J. (2011). Hybrid offerings: how manufacturing firms combine goods and services successfully. Journal of marketing, 75(6), 5-23.
※2: Venkatesh, S., Berry, L. L., & Dotzel, T. (2009). A Practical Guide to Combining Products and Services. Harvard Business Review, 87(11), 94-99.
※3: Sawhney, M. (2006). Going beyond the product. The service-dominant logic of marketing: Dialogue, debate, and directions, 15, 365-380.
※4: Becerril-Arreola, R., Zhou, C., Srinivasan, R., & Seldin, D. (2017). Service satisfaction–market share relationships in partnered hybrid offerings. Journal of Marketing, 81(5), 86-103.