読了メモ『小さな黒い箱』
アマゾンの紹介文
謎の組織によって供給されるその金属の黒い箱は、別の場所の別人の思考へとつながっていた……。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』原型短篇である表題作、タイムトラベルをテーマにした後期の傑作「時間飛行士へのささやかな贈物」、近未来アメリカを描く政治風刺連作「待機員」「ラグランド・パークをどうする?」、書籍初収録作「ラウタヴァーラ事件」をはじめ、政治/未来社会/宗教をテーマにした全11篇を収録。
「小さな黒い箱」
『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』のマーサー教の部分だけの短編。宗教が人間の中に浸透していく描写がリアルに感じた。
「輪廻の車」
仏教的輪廻転生と自然回帰を教義の中心に据えた宗教が力を持った世界。導師が旅に出て……。途中は安定の追いかけられSF展開。
「ラウタヴァ―ラ事件」
キリスト教と生命倫理と異文化との邂逅……正直あまりよく分からなかった。
「待機員」
ポピュリズムと権力欲。平凡で冴えない人間が、一度権力を手にすると、どんどんヤバイことになっていく過程が面白かった。
「ラグランド・パークをどうする?」
前作を引き継いだ設定で、新たな登場人物が状況を大きく変える!サイ能力の設定が面白い。
「聖なる争い」
コンピューターとの戦いかと思っていたら、意外なオチに行きつく。これに似た話、ドラえもんであったなぁ。
「運のないゲーム」
超能力者同士の騙し合い。
「傍観者」
清潔党と自然党が争う世界。汗腺とか体臭が政治論争の対象になっているのが笑えるが、どっちつかずの主人公の最期の行動がぐっとくる。この中で一番好きな作品。
「ジェイムズ・P・クロウ」
ロボットがアッパークラスとして人間と共存している世界。思いもよらない方法でその階級をひっくり返したクロウだが……ラストの曖昧さがなんとも言えない。クロウだけに苦労するのだろう。なんちゃって。
「水蜘蛛計画」
SFメタものっていうのかな。たぶん、SFの歴史に詳しくなくても、タイムパラドックスものとしてオチを楽しめたけど、詳しい人ならもっと楽しめたのだろう。
「時間飛行士へのささやかな贈物」
タイムループもの。ああ、そういうオチね、っていうのはわかるけど、今一つ盛り上がりにかけた感じ。
終わり
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