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1981年 ロック一筋だった高校生をも虜にした 大瀧詠一『A LONG VACATION』

今日届いたレコードをターンテーブルに載せてスタートボタンを押す。

少しのノイズの後、ドラムスティックのカウントに続いて三連符のイントロが始まる。
「君は天然色」

あぁ、これだ、この音だよ。

当時のアルバムでは珍しいリバーブ深めの音像。
フィル・スペクターのウォール・オブ・サウンドをポップスに持ち込んだアルバム。
そのミックスのせいか、バンド・サウンドらしい感じはほとんどしない。

歪んだギターが鳴ってへんのなんて音楽やないで

そんなことを言っていたハードロックに夢中だった高校生達の耳にも、このアルバムは刺激的で、日本語の歌詞なのに洋楽を聴いているようなそのメロディ、サウンドにノックアウトされていた。

1981年の春休み、あと1週間ちょっとで高校3年生になろうという僕達バンドメンバーはベースのT君が買ってきたアルバムを小さな部屋で何度も聴いた。

そんな想い出に浸っていたら、あっという間にA面が終わった。
盤をひっくり返してB面を再生。
A面のアッパーな感じとは打って変わってしっとりとした曲ではじまる。
「雨のウェンズデイ」

壊れかけたワーゲンの ボンネットに腰かけて
何か少し喋りなよ 静かすぎるから

そうそう、この「何か少し喋りなよ」のところが、大滝さんの歌唱だと
「喋りなお」って聴こえるんだった。

そんなことも思い出したりした。

ベストトラックはって訊かれても、この1曲なんて選べない。
全ての曲が愛おしくて、全ての曲が大切だ。
強いてあげれば、A面1曲目の「君は天然色」とB面3曲目「恋するカレン」かなぁ。
でも、これも日によって変わってしまうだろうから、今日は、っていう注釈付きだけど。

今回買ったのは2021年に発売された40th Anniversary Edition。
昔持っていたレコードは何度かの引っ越しでどこかにいってしまっていたので本当に30数年ぶりにレコードで聴く。

『A LONG VACATION』からは何曲もシングル・カットされたり、CMソングになったり、しばらくはラジオでもずっとかかっていたものだから、大学受験に失敗して浪人生になってからもよく聴いていた。
この頃は近所の中学時代の同級生が運転する車でよく神戸方面にドライブへ行ったが、その時のヘビーローテーションがこのアルバムと翌年に発売されていた門あさ美の『Hot Lips』の2枚だった。
カセットテープにダビングしてカーステレオでずっと聴いていた。

その音を聴いただけで、一瞬で40年も時を遡ることができる音楽ってマジック以外の何者でないよなぁ。

さて、もう1回最初から聴くか。

<了>

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