競馬の話、そしていわゆる賭博の話
昔、同僚にお前は競馬はやらない方がいい、と言われたことがある。
理由を尋ねると、お前は凝り性だから、と言う。
きっと競馬にハマるだろうし、ハマるとヤバいからというのがその理由。
競馬は他の公営賭博と違って「馬」という一種コントロールの効かない動物がパラメータとして関与しているので、それを種馬などの血統まで遡って調べていくとハマれるんだそうだ。
なるほど、確かにハマれそうな感じはあるが、実のところ自分はさほどデータ重視ではなく、直感頼りの気質だと思うので案外そうでもなかったりするかも。
とか考えながらも、やるなと言われてもきっと、いや絶対やらないだろうと思う。
未だに一度も競馬場に行ったこともないし、もはや還暦なので、これからも行くことはないだろう。
大体が、僕はギャンブルはやらない。
いや、憎んでいるとも言える。
すでに他界している父親が大のギャンブル好きで、長年連れ添った母親もいつしかギャンブル好きになっていた。
父親の場合はボートレース、競艇というやつだ。
本人は若い頃、競艇レースの選手になりたかったらしく、数センチ背が低ければ試験を受けれたらしい。
そんな競技として好きだった競艇も、いつしか賭博としてのめり込んでいた。
競艇で当てた時は機嫌がよく、気前もいいが、外した時は家からカセットデッキやらなんやら家電がごっそり無くなったのも見たことがある。
質屋に出していたんだろう。
借金で首が回らなくなって借金とりの怖いお兄さんが土足で家に押しかけてきたこともある。
母親はパチンコだ。
なので、おそらく4大公営賭博(競輪、競馬、競艇、オートレース)とは種類もモチベーションも違うんではないかと睨んでいる。
幼少期は父母に連れられてよくパチンコ屋へ連れて行かれたことは薄らと記憶にある。
昔は全自動ではなく、右手で球を入れながら、左手で球を打つというのがスタイルだけど、面白がってやらしてもらったような記憶もある。
が、それも物心つくまで。
大学時代に友人がパチンコするというので、付いて行き、500円だけ打ったことがある。
その頃はもはや全自動の台なので500円なんて一瞬でなくなる。
なんだこの無駄なものは。
つまらん。
そう思ってから、一度も足を踏み入れたことがない。
母親が晩年、ほとんどパチプロのような暮らしをするにをたまに帰省した時に見ると、
終わってるな、と思った。
あれは、一種の中毒と一緒で依存症という病だと思った。
死んだ時はパチンコ玉とタバコを棺に入れてくれという遺言も言いつけ通り守ったかどうか。
(タバコは焼けるからいいが、パチンコ玉はダメだと言われたので止めたような気もする)
何だ、結局似たもの夫婦じゃないか。
まだ母親も若い頃、父親の賭博でこさえた借金に嘆いていたのも嘘のようで、
本人はミイラ取りがミイラになったとよく言っていた。
少し使い方ちがうんじゃないか?とも思ったが。
そんな家庭環境だったから、反面教師として賭博には一切近づかないでおこうと思った。
なので、パチンコ屋も賭博の一種だろうと思ってたし、目の前で金を掛けられるのも嫌だった。
だから、社会人になって麻雀はしたことが無い。
金を掛けないで楽しく麻雀してるのは学生くらいのものだし。
ゴルフも行かない。
いくら握る?
なんて、必ず金を掛けてやるからだ。
バカじゃ無いかと思う。
麻雀もゴルフも遊びとしては面白いので、年末年始に親戚と麻雀はするし、リゾート地へ海外旅行に行った時はリゾートゴルファーとしてプレイはたまにする。
打ちっぱなしもたまに行く。
まだ前の会社に勤めている時にこんなことがあった。
社員旅行の代わりの日帰りツアーが企画され、
昼に集合して新宿のホテルの高級ランチコースの後、リムジンをチャーターして競馬に行って、それから屋形船というツアーだった。
当日その旅程を聞かされて、ランチが終わったら、
ごめん、競馬は行かないから、
とそそくさと帰ってきたことがある。
こんな事もあった。
部門のマネージャーがキックオフの後集まって飲み会しようとなった時、誰かが
「男気ジャンケンやろう!」
と言い出した。
男気ジャンケンなんて聞いたことがなかったが、
なんでも負けたら全額払うというものらしい。
なんだ、そりゃ。博打やん。
それを聞いた瞬間に宴会が始まったばかりで、まだ飲み物しか出てきてなかったが、自分の会費をテーブルに叩きつけて帰ったこともある。
今から思うと大人気ないし、相当偏屈なやつに見えたかもしれないが、どうしても納得いかなかった。
そんな賭け事に加担したくなかった。
て言うくらい、賭け事、賭博が好きでは無い。
競馬くらいは賭博じゃないよ、
そんな声もわからなくはないが、線引きとして収拾つかなくなるよりは、一切拒否しておく方が筋が通っているのでは、とも思う。
<了>