「良さが分からない名盤」を語ってみる〜10位-1位
@zippu21さんという方X(旧Twitter)でやられていた「良さが分からない名盤」を決めるという投票企画の結果の名盤たちについて、30位から11位まで個人的感想を書いてきました。
そしていよいよ上位ベスト10。
どんな「分からない名盤」が集まっているのか見ていきましょう!
過去のnoteはこちらです。
30位〜21位
20位〜11位
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10位: Screamadelica (Primal Scream)
発売年: 1991年 ジャンル: オルタナティヴロック
デビューアルバムと2枚目出した後、アンドリューウェザーオールがやってきて全く違うバンドかよというくらい音楽性が変わって3枚目。
1曲目、2曲目の歌メロだけ聴いたら実はそんなに変わっていないのだけど、アレンジとサウンドプロデュースがダンスミュージックになってしまったので、ついていけない人が多かったんでしょうか。
このアルバムは1991年発売でリアルタイムで音楽をほとんど聴いていない時代だったので、プライマルス・クリームをちゃんと聴いたのは"ミーツ サザンロック"かのような
『Give Out But Don't Give Up』からなんですよね。
なので、あぁこんなバンドなんだと思ってたら、『XTRMNTR』『Evil Heat』でインダストリアルエレクトロみたいな路線へ行ってたのに、
『Riot City Blues』でまたそっちへ戻る?というとこから『Screamadelica』に遡ったので、まぁそんなもんだろう。と思ってました。
2−3枚目ごとに作風がガラリと変わるのもボビー・ギレスピーのその時点での趣味嗜好が影響しているんだろうな、と思います。
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10位: Trout Mask Replica (Captain Beefheart)
発売年: 1969年 ジャンル: アバンギャルド
同列10位がもう1枚。
魚男のジャケットが有名な1枚ですが、変なアルバムですよね確かに。
どうしてこのアルバムが名盤なのかよく分からないです。
Captain Beefheartって人は他にも沢山アルバム出しているんですが、他は普通にカッコ良いブルースロックなんですよ。
なのにこのアルバムだけボタン掛け違えてしまったというか奇妙奇天烈なアンサンブル。
ブルースロック Meets フリージャズ にパンクをトッピングした感じって言うんでしょうか。
それが上手くいってんだかいってないんだか。
個人的にはいってないと思うんですが、この外れっぷりがむしろアバンギャルド風味を醸し出していて名盤認定しちゃった著名批評家がいたんじゃないんでしょうか。
天才フランクザッパの幼友達というのも神話伝説に色を添えるのに影響しているんじゃないか、とかいったら熱烈なファンに怒られそうです。
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8位: The Velvet Underground & Nico (The Velvet Underground & Nico)
発売年: 1967年 ジャンル: アートロック
こちらも名盤の評判先行で知ったアルバムです。
アンディ・ウォーホールのバナナのジャケットがあまりにも有名で、
ニューヨークパンクの起源はこれだ、みたいなイメージが先行してしまってから聴いたので、肩透かしをくらった感じでした。
「あ、こんな感じなのね。想像してたより大人しいし、地味だし」みたいな。
彼らはアンディ・ウォーホールが戦略的に仕掛けたバンドだったこともあるので、当時の最先端ファッション・アート・シーンという背景込みで理解しないと意味ないんでしょうね。
きっと音楽性だけという話ではないんでしょう。
あと、日本人にはぱっと聴いただけでは歌詞がストレートに入って来ないので、その辺りもルー・リードをちゃんと評価出来ないところかもしれません。
1970年後半から1980年代にかけての東京の音楽アートシーン、PLASTICSとかなんかのムーブメントと同じなんじゃないかなと思っています。
当時大阪の中学・高校生だったので、テレビで彼らを見てもなんとなく小洒落た感じは分かるけど、バンド演奏も下手くそだし何がいいのかさっぱり分からないって思ったいたのと同じ感じ?
だけど、東京の最前線の現場にいる人たちにとっては世界のシーンで明らかに接続していた彼らは新しくて尖っていたんでしょう。
このアルバムもきっとそんな文脈ではないかと勝手に想像しています。
なので、このアルバムへの一般人の正しい付き合い方としては、60年代のファッションアイコンとしてバナナジャケットデザインのグッズを楽しんでいればいいんじゃないかな、とかなんとか。
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7位: Bitches Brew (Miles Davis)
発売年: 1970年 ジャンル: ジャズ
いや、これはもうまごうことなき名盤です。
ですが、いわゆる"ジャズ"でイメージするおそらくモダンジャズとはかけ離れたものなので、なんじゃこりゃ?となるのも然るべき。
まぁかろうじて音楽の体を成しているフリージャズですからね、このアルバム。
ただただ感じろ、と。
1回聴いて放り出さないで10回、20回、他のことを何もしないで1日これをずっと聴き続けろ。
それでもだめなら、そっとレコードを棚にそっとしまって、10年経ったらもう1度ターンテーンブルに乗せてみるべし。
そんな風にしかアドバイスできないです。
いや、別にアドバイスいらんって?
とにかく、今はサブスクで簡単にアクセスできるので、試してみるのはアリかもです。
それも1回で諦めないで、10回、20回。。。ま、いいや。
毎日聴くもんでもないですが、僕は今でもたまに聴きたくなるスルメアルバムです。
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6位: Loveless (My Bloody Valentine)
発売年: 1991年 ジャンル: シューゲイザー
「シューゲイザーの名盤といえばマイブラのLovelessだ」
とほとんど誰もが言うであろうアルバムですが、にも関わらず
「良さが分からない」
ていうのはどうしてかというと、今のクリーンでハイファイに慣れきった耳にはやっぱり
「音が悪い」
からなんじゃないかと思います。
ぱっと聴きは音の密度が濃すぎてなんだか団子状態にしか聴こえないし、篭ってるし、で激しい音像の割には抜け感というか解放感が皆無ですから。
あと、どれだけ爆音で聴ける環境にあるか、ていうのも大事なんだろうな、多分。
ライブハウスで全身に浴びると気持ちいいのかもしれない。
おっと、その場合も耳栓マストですからね。
僕は同時期のシューゲイザーだとRIDE『NOWHERE』を良く聴きました。
1990年頃はほとんど音楽聴いてなかったですが、このアルバムだけはふらっと入った輸入盤屋のPOPで激推しされてて買ってきてこればっかりしばらく聴いてたことがあります。
ま、そんな感じで、『Loveless』にはそんなに思い入れないんです。
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5位: Kid A (Radiohead)
発売年: 2000年 ジャンル: オルタナティブロック
このアルバムはどうかなぁ。
最初聴いた時はやっぱりよく分からなかったのかなぁ。
「なんじゃこりゃ?バンドと違うやん」
と思ったかもしれません。
このアルバムがリリースされた2000年はJAZZしか聴いていなかった頃なので、TechnoもIDMもElectronicaも知らなくて、なので当然「変な音楽」てラベル貼ってたかもしれません。
それから後に、Autechreからこのアルバムを知って(トムヨークがAutechreの大ファンでというエピソードだったかな)、レディオヘッドがロックバンドなのにTechno, Electronicaに最接近していて、ジャンルの橋渡し役もしていたと知ってから再発見した感じで、もう何十回、何百回聴いたか分からないフェイバリットアルバムになっています。
村上春樹の「海辺のカフカ」でカフカ少年がずっと聴いているのもこのアルバムでしたね。
もうこれは好きか嫌いか、エレクトロニックミュージックが好きか嫌いか、それだけかと思います。
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4位: Voodoo (D’Angelo)
発売年: 2000年 ジャンル: ネオソウル
このアルバムもかなり当時としては尖っていたんではないかと思うので、今聴いた方が受け入れられやすいんじゃないですかね。
僕も最初ぱっと聴いて、そもそもソウル、R&Bなどのブラックミュージックを聴いて来なかったので、
「分からん」って思ってしまいましたが、
今回聴き直してみたら、このミニマルでループ感のあるトラックがめちゃくちゃ心地よく感じます。
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3位: OK Computer (Radiohead)
発売年: 1997 ジャンル: オルタナティヴロック
5位が『KID A』で3位に『OK Computer』ですか。
いや、もう1曲目の「Air Bag」のギターのイントロとかカッコよすぎるでしょ!
エレクトロニカレディへのロマンチシズムをギターのアレンジで演っている曲もあるし、ちゃんとロックしている曲もあるし、
全曲OKな名盤だと思います。
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2位: The Dark Side of the Moon (Pink Floyd)
発売年: 1973 ジャンル: プログレッシブロック
これが2位か。
5000万枚以上売れたモンスターアルバムなので、アンチも多いってことなんでしょうね。
もう恐るべきコンセプト・アルバム。
これぞプログレッシブ・ロック。
プログレは演奏がテクニカルじゃなくてもプログレなんだっていう。
(褒めてます)
個人的には2作後の『Animals』の方が好きなんですけどね。
それはおそらくリアルタイムに体験したかどうかという違いだと思います。
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1位: Pet Sounds (The Beach Boys)
発売年: 1966 ジャンル: ポップ
映えある「良さが分からないアルバム」1位に輝いたのは
The Beach Boysの『Pet Sounds』でした。
パチパチ。
The Beach Boysといえばカリフォルニアの青い海と空と爽やかなコーラスという印象だったのに、なんだこの密室音楽は、というアルバムですよね。
だけど、1曲目の「Wouldn't It Be Nice」は彼らのパブリックイメージとはかけ離れていないと思うんですけどね。
それ以降はどんどん内省していってしまうんですけど。
このアルバムってそもそもThe Beach Boys名義にはなっていますけどブライアン・ウィルソンのソロワークみたいなもんじゃなかったでしたっけ?
このアルバムは「Wouldn't It Be Nice」と「God Only Knows」の2曲があるだけで、名盤だといことでいいと思います(ざっくりしてる。。)
※ ※ ※
ということで、3回に渡って30枚の「良さが分からない名盤」を見てきました。
面白いですね。
人によってこの音楽いいなぁ、という観点が全く違うんだなと思うと同時に、みんな割と同じことを考えているんだなというのも分かりました。
傾向としては、地味なアルバム、アーティスト本人の趣味性が全開したアルバムほど
「良く分からない」
という評価になっているような気がします。
それはそうですよね、マーケットではなく自身の心の声に従って作ったアルバムはそうなる必然があります。
あと、その音楽を「なるほどこれは名盤だ」と思うかどうかは、多分にそのジャンルや音楽に馴染んでいるかどうかというのが大きいですし、初めて聴く場合は純粋に感性が合うかどうかにですよね。
なので人がどう評価しようが
「良いものはよい、合わないものは合わない」
でいいんじゃないかなと思います。
昔は「なんだか、よく分からないな」と思っていた音楽もある日突然、
「何これ、めっちゃ沁みる・・・」
となることもありますし。
元の企画ブログ記事はこちらです。
<了>