密室のシネマティック・プログレ〜OPN『again』
OPN=ONEOHTRIX POINT NEVERの新作『again』がすこぶるカッコ良い。
ダニエル・ロパティンの別名。
それにしても、ワンオートリックス・ポイント・ネヴァーてどんな名前やねん。
覚えにくいったらありゃしない。
さて、それはともかく。
OPNの作品はこれまであまり聴いてこなかった。
多分、最初に聴いたのは2010年のRiturnalと翌年のReplica。
まぁ悪くなかったんだけど、どことなくジャケットアート含めてチープさがあったのと、
その頃のムードじゃなかったというのもある。
少し跳ねた2013年のR Plus Sevenは、やはりアルバムアートの影響もあり聴き込んではみたもののハマるほどではなかった。
その辺りから、OPNは合わないのかなと思っていた。
決定的だったのが、2017年のGood Timeのサントラ。
もう、アルバムジャケットで、無理!となって聴いてもいない。
なんだか暑苦しそうだし。うーむ。
次作のAge Ofなんて、
「なんやねんこのふざけたジャケットは!ABBAか!」
みたいな。
そういえば、ザ・ウィークエンドもアルバムジャケットであまり聴いていなかった。
After Hoursの顔面血流アップなんて、やっぱり無理(笑)
なんだか、アルバムアートだけで評価してるな。
今作を聴いてみようと思ったのは、今月出た雑誌eleking最新号の特集。
表紙もOPN=ダニエル・ロパティンその人だし(以前のアーティスト写真からイメチェンしてイケメンになってた。痩せたのか?)
巻頭特集のインタビューを読んで、彼の人となりを知って、「あ、聴いてみなきゃ」と思ったから。
1曲目のElsewareからいきなりの弦楽四重奏的なネオクラシックのような。
あぁ今作もやっぱりサントラ風なのか。
次のアルバムタイトルにもなっているAgainもボイスサンプルをコラージュしつつも、やはりどこかシネマ風。
いつの間にか3曲目のWorld Outsideへ。
ここでも混沌としたSEとオーケストレーションとストリングスの混ざり合い。
ところが、4曲目 Krumville あたりから様子が違ってくる。
ローファイなサンプルループの質感に、好きかも!と思った。
そこからも、基本的にはサウンドコラージュが色んなバリエーションで出てくる曲調(曲らしいフォルムは全くないのだけど)は同じなのだけど、
まさに「目眩く」とでもいうような世界観に引き込まれていった。
そして、ラストのA Barely Lit Pathまで辿り着い時には
「これってプログレじゃん!」と思った。
それから何度もリピートして、今も5周目を聴いてるのだけど、クセになる。
決して鼻歌じゃ歌えないし、曲名すらもきっと覚えられないけれど。
よく考えたら、これまでのOPN作品も基本的にはサントラ的というかシネマティックというかサウンドコラージュに近いごった煮音楽だったなぁと。
だけど、それはシネマティックという語感から想像する荘厳さとか開放感とかは全くなくて、非常に閉ざされた空間でなっているような感じ。
閉塞感というか密室で鳴らされているような。
そうしたところを聴く側がちゃんと理解していなかったので、勝手に「これは違う」というラベル貼っていただけだなと反省している。
とりあえずOPNは個人的にはシネマティック・プログレと命名しておこう。
いや、密室のシネマティック・プログレだ。
そうしたら少しはこちら側に引き寄せられるかもしれない。
プログレ好きだし。
あと1周聴いたら、OPNの旧作も改めて聞き直してみようかと考えている。
きっと好きになると思うから。
〈了〉
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