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極私的語句解説「イキる」

「イキり」という言葉があります。
関西の方言(だと思う)なのですが、
ええ格好して調子にのってるような、そんなニュアンスを持つ表現で、人のことをいいます。
「あいつ、イキりやから」みたいな。

それが動詞として使われると「イキる」になり、
これは現在では全国的に伝わる言葉のような気がします。
「おまえ、何イキってるねん」
「イキるなや、ハゲ」
みたいな使い方をします。

総じて、良い印象を持っていないことを蔑む時に使いますが、
関西では特にこの「イキッた奴」というのが嫌われます。
(僕の学生時代の話なので40年近く前になりますが、概ね現在も変わってないんじゃないかな、と思います)

つまり、関西では人を評価する時の軸の最上位に位置するのが
「オモロい」
かどうかなので、その対極にある「イキる」行為は軽蔑の的になるわけです。

今ほど関西弁が全国に広まり、逆に標準語さらに関東弁が関西でもよく耳にするようになる以前の頃は、関東から転校・転勤してきた人間があまり好意的に迎えられない理由の一つに
「オチをつけて話す」
ことをしないからというのがあります。

関西で吉本新喜劇や松竹新喜劇を日常的に浴びるようにして生まれ育った人間は、とにかく話にはなんでもオチをつけて、笑いと繋げます。
なんなら、自分自身のことはおろか、自分の家族も笑いのネタになるのであれば、巨大な尾鰭をつけて大袈裟に話をします。
「話を盛る」というやつです。

僕なんかは東京の会社に就職して、人前で話をする時には、こうした「お決まり事」が強迫観念のようになってかなり苦労をした覚えがあります。

ツカミをどうするか?
どうすれば笑ってもらえるか?
受ける話を考えなければ

関西圏以外の出身者がいかにもフラットに何の笑いもなくプレゼンテーションをしているのを見て、あぁ自分も特に笑わせなくていいんだ、普通に喋ればいいんだ、となったのは10年以上経ってからでした。

それくらい、他人を笑かすことは関西では重大事で、
格好つけ=イキり、は褒められた行為ではないのです。
「クソほどもおモンないやっちゃな」
「なんでもええから、笑わせてみろや」

そして、ここが難しいとこなのですが、「オモロいことをする」にしても、そこにチラリでも
「な、俺って面白いことしてんだぞ」
というのが見え隠れすると、それはもはや「イキり」と一緒なのです。

ぼくのこと苦手なタレント(元アイドルか)にSMAPの◯村拓◯という人がいますが、
あの人がまさに「イキり」の代名詞のような人です。
SMAP SMAPという彼らのバラエティ番組ではよくメンバーがコントをやっていましたが、
彼はコントの中でハゲカツラで面白おかしそうなことをしていても、そこには
「どう?俺って面白いことも出来るでしょ?」
そんな感じがプンプン匂ってくるわけです。

あれがいけない。
やはり「イキり」の対極は「自然体」なので、関東の人が面白いことをする時は、
ハゲカツラになりきる(ドリフの加藤茶さんのように)か、
真面目な顔をして周りとのズレで笑いになる、
そういう方が良いわけです。

て、ここまで「イキる」というお題で書いてきて、単なる悪口になってしまっていることに気づいたので、ここまでにしておきます。

尚、一切のクレームも受け付けられませんので悪しからず(笑)

〈了〉

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