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無限ループ

いつもと同じ時間に出勤しパソコンを立ち上げ
メールをチェックして、ミーティングが終わると
一本の電話が鳴った。
受話器をとるとものすごい勢いで

『うちの庭に毎日猫のフンがすごいの!
 なんとかして!』

とAさん。よく話を聞くと、
その方は自宅で工場を経営しているそうなのだが
毎日野良猫がやってきて庭で日向ぼっこをして
そしてフンをしていくのだとか。

『野良猫ではこちらも注意のしようが…』

と言ったあたりで

『何言ってるの!うちの孫がフンを食べちゃった ら困るじゃない!とにかく見に来て、ちゃんと注 意して!ガチャ、プープー』

住所を聞いたいたのでその方のお宅にお邪魔すると

Aさん宅には幼稚園児がいて、砂場もある。
またAさんの車庫には高級車が。

『あの砂場にフンをたくさんされるの!
 それからうちの車のボンネットの上に
 猫が日向ぼっこをしていることもあるの
 大切な車が猫の爪痕でキズついてしまったら…
 だから市役所に言ったの!なんとかして!』

Aさんが一方的に説明することを要約すると

隣の家に暮らすBさんが野良猫に餌をあげていて
その猫がフンをするのだとか
なお、Bさんを注意するときにはAさんが通報したとは言わないでくれとのこと。

ということでBさんに事情を聞きに伺うと

Bさんは一人暮らしで85歳。
娘さんは大学進学を気に都内へ出て
都内で働き、結婚し、子供もでき
都内で暮らしていて、
年に一度くらいしか帰ってこない。
Bさんの旦那さんは数年前に亡くなって
からご近所付き合いもない。
そんなBさん宅の庭に
ある日一匹の野良猫が舞い込んできた。
Bさんはその猫がかわいくて
買い置きの菓子パンをあげた。
猫はまた次の日も来るようになり、
Bさんは来るたび来るたび何かしら
餌をあげていたら、
野良猫は日に日に増え
いつのまにか10数匹がBさん宅に来るようになった。

ご近所の方がフン害で困っているとお話しすると
Bさんは
『うちに来る猫はみんないい子だから人のうちにフンはしませんよ』

『いやいや、市役所の方には苦情が来ていまして…』

『え?誰からですか?いいがかりですよ。』

Aさん宅に戻ってくると
庭に猫のフンが転がっていた。

Aさんに
Bさんに野良猫に餌付けはしないように注意はしてきたことを伝えると

『で、Bさんは餌付けをやめてくれるって?』

『Bさんは餌付けをやめる気はないようでした』

『それじゃ困るのよ!うちには幼稚園児がいて
 砂場もあるのに遊べないじゃない!
 車だってキズだからになっちゃうじゃない!』

と、また怒られ職場に戻ってきた。

それから1月が経過した頃、今度はBさんから電話が。

『昨日いきなりAさんが押しかけてきて
 野良猫に餌づけをするな!』

と言ってきたとのこと。

Bさんは野良猫が可愛くて餌を与えているだけだと
主張したが理解してくれず…
とにかく怒鳴られて怖くて家から出られない。
なんとかしてほしい。

こちらは住民トラブルの仲裁には入れない
無料の弁護士相談など利用してみては?と促すが
Bさんは市役所でなんとか対応してほしい!と。

改めてAさんに連絡し、Bさんも困っていること
野良猫のフン害に困っているのであれば
ご自身で忌避剤などを用いて自己防衛をしてもらうしかないと伝えたが

Aさんはこちらが正しいので改める気はない
という。
逆になぜ市役所はBさんの味方をするんだ!

と30分以上電話で市役所の対応が悪いと
怒鳴り続けた。

これはあくまでみなさんに紹介できるように
事実を元に匿名性を持たせたフィクションです。

そして、この話には続きがあります。

日暮れが早くなった冬。
Aさんの旦那さんから連絡が入りました。

Bさんはあのあとすぐ体調を崩し
施設に入所することになったとのこと。
そして
猫たちは自然とどこかにいなくなったそうです。
猫は餌をくれる人の元、
もしくは餌となるものを見つけて
旅に出たのかもしれませんが、
行方は猫しかわかりません。

しかし新たな問題が。
空き家となった家の中にハクビシンのような
野生の動物がいて、なんか変な匂いがする。

『市役所に調査にきて欲しい…』

こちらではそういった調査はしてい、、、
と言いかけたところで

『ガチャ、プープープー』

つづく

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