事業立上げ期は、CPAより先にLTVの改善に注力するべき理由
前回の記事で、WEBマーケティングの3つの領域の中のプレアクセス部分(≒WEB集客)について書きました。
今回は少し引いた視点で、
そもそもWEBマーケティングの3つの領域のなかで、どこから手を付けていけばいいのか?
(もう少し具体的に言えば、CPAとCVRとLTVのどのKPIから改善していけばよいか?)
という点について自分なりの考えをまとめてみたいと思います。
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私の知る限り、多くの事業者・WEBマーケターは新規顧客の集客効率、つまりはCPAばかりに気を取られてしまっていることが多いように見受けられます。
しかし、個人的な考えとしては、特に事業の立ち上げ期に関していうと以下のようにLTV⇒CVR⇒CPAの順番で改善していくべきだと考えています。
つまりは、CPAは一番後最後ということになります。
なぜかというと、最初にCPAを最適化してしまうとその後縮小均衡に陥るだけで、事業のグロースにはほとんど貢献しないからです。
(私も過去のこのような状況に陥ったことがありますし、多くのWEBマーケターは同様の状況を経験したことがあるかと思います。)
もちろんCPAが改善するということは限られた予算の中で新規顧客の獲得数が増加することにはなりますが、よく用いられる例で例えると、穴のたくさん空いたバケツに注ぎ込む水の量が増やしているのと同じこと。事業全体の収益にはなかなかインパクトが与えられません。
(このあたりはオイシックスのCMOで、過去にドクターシーラボのEC売り上げを6年で5倍にした実績で有名な西井さんの本に詳しいです。)
また、そもそもLTVが一定だとすると、その事業がかけられるCPA上限が計算上決まってくるので、より高いCPAをかけられる事業者(=LTVが高い事業者もしくは業態)には逆立ちしても勝てないということになり、WEB広告などにおけるユーザーリーチがどうしても狭まってくる⇒縮小均衡に陥る、ということになってきます。
(世の中のWEB広告で、利益率とリピート率の高い化粧品や健康食品、単価が高い人材系サービスなどの広告が非常に多いのは、LTVが業態として非常に高い⇒より多くのCPAをかけれるので積極的な広告投資が可能、という構造によるものだとわかります。)
このLTV⇔CPAの関係については、知ってる人にとっては常識かもしれませんが、特にWEB周りに不慣れな人にとっては意外に認識されておらず、「今はまだ事業立ち上げ期なので、とにかく事業を伸ばすためにWEBでの"集客"を頑張ってCPAを下げる努力をしている」と話す事業者は多いです。
Adwords広告、SEO、Facebook広告、リターゲティング広告と色んなメニューに手を広げてその成果に一喜一憂しても、10年以上前からこの領域で最適化をし続けてきている事業者はいくらでもいるので、なかなかその環境の中で事業立ち上げたばかりの中小・ベンチャーが勝ち抜くことは難しいと思います。
なので、繰り返しにはなりますが、
特に事業の立ち上げ期に関していうと、LTV⇒CVR⇒CPAの順番で改善していくべきだと思います。
CPA(WEB集客方法)もCVR(WEBサイト自体)も最適化されていない事業立ち上げ期に、まずLTVに注力することで得られるメリットとしては、
数は少ないけれど、使いにくいWEBサイトのハードルを越えてまで自社の商品/サービス買ってくれた「共感度合いの高い」ユーザーと親身に向き合いながら、購入後の体験も含めたUXを磨き込むことで、高効率でサービス/商品の磨き込みが出来ることがあげられると考えています。
その磨きこみによって他事業者より高いLTVが担保できさえすれば、そもそも計算上、他事業者より高いCPAをかけれる状況になっているので、余裕をもちながら幅広い選択肢を考慮に入れてWEB集客施策を考えていけるということになり、結果として事業のグロースに貢献することが出来きます。
ただもちろん、LTVをあげるというのは「言うは易し、行うは難し」の典型で、自社の顧客の購入以降の行動までも含めしっかりカスタマージャーニーを想像した上で、自社の商品/サービスやマーケティング施策をブラッシュアップしていくという根気強い取り組みが必要になります。(CPA改善のように、WEB広告の配信設定をぱっと変えれば直ぐに結果が変わるように短期の話ではありません。)
と、このように考えてくると、もはやWEBマーケティングの話というよりは、商品/サービスや事業自体の本質的な話につながってきます。
この点はすごく重要なことだと考えていて、私個人の経験としても、WEBマーケティングの相談を受けてその改善策を突き詰めていくと結局はその事業の商品/サービス自体や事業戦略に行きつく、ということが多々あります。
その意味で、WEBマーケティングと事業戦略は遠いようで実は近い話なのだと、常日頃感じています。
私自身も、今自社で立ち上げを進めている日用品のD2Cブランドについて、立上げ初期は安易にCPAばかりに気を取られずに、顧客・ファンにしっかり向き合って顧客体験を磨き込みLTVをあげることに注力しよう、とこの記事を書いて改めて気を引き締めました。