コーヒーメーカー
毎日相当量のコーヒーを飲む。
30年前に結婚祝いとして贈られたコーヒーメーカーで淹れる。
贈ってくれたのは友人カップルだった。
恋人同士だったふたりはやがて結婚したが、半年後、夫氏が亡くなった。
私が童話を書きはじめる前のことだ。
私がどんなふうに童話を書き始めたか、それからどんなことがあったか。
もしも彼が生きていたら、私は日々こまごまとそれを書き綴っただろう。
きっと彼はそれを無邪気なまでにまっすぐ応援してくれただろう。
彼は私が童話作家デビューしたことを知らない。
その後の苦戦も知らない。
しかし、ほんの数十分前、私は気付いた。
私は毎日コーヒーを淹れる。
殊にパソコンに文章を打ち込む時などは、絶対である。
彼はいつも傍らにいたのだ。
応援、してくれていた。