ペペめしのこと
昼食にペペロンチーノばかり作る時期があった。
下の子が弁当を持って幼稚園に通い始めた頃のことだ。
それまでは、常に子どもと食事を共にしていた。
からいものは食卓に載せなかった。
その反動だろう。
ようやくやってきたひとりのランチタイムに、私はパスタをゆで、塩と唐辛子とニンニクを存分に使ったソースを絡めて食した。
しかしある時、はたと気付く。
冷蔵庫には残りご飯がある。
私は節約しなくてはならない主婦だ。
今は残りご飯を食べるべきではないのか。
…となれば、話は早い。
フライパンに引いたオリーブオイルに、刻んだ唐辛子とニンニクの香りをじっくりと移し、塩を加える。
どの材料も、ケチってはいけない。
ペペロンチーノなら、ここにパスタのゆで汁を足し、パスタを絡めるところだが。
フライパンには温めた残りご飯と、ゆで汁代わりの水を加える。
手早くご飯に味をなじませたら、できあがり。
今でいう「インスタ映え」にはほど遠い、地味な色合い。
何の変哲もない、ペペロンチーノ味の炒飯である。
かなり、からい。
かなり、くる。
驚くほど、旨い。
「ペペロンチーノ味炒飯」「ペペ炒飯」「ペペごはん」適当に呼んでいたが、「ペペめし」に落ち着いた。
子どもが成長してからも、思い出したようにペペめしを作ることがある。
この炒飯は男性にウケがいい。
息子から「あのからい炒飯作って」とリクエストされた折、普段好評のキムチ炒飯を作ったら、「これじゃなくて」と言われた。
どうも「ペペめし」という語、口にするには気恥ずかしさが伴うらしい。