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新米記者が見た検察~はじめに

はじめまして。まこりんと申します。わたしは3年前まで日本経済新聞の記者をしていました。いまは縁あってベンチャー企業に属しています。東京在住の35歳の一市民です。

知られていない検察官の人間性

ここで記事を書こうと思い立ったのは、検察庁法改正案の議論が世間をにぎわしているからです。この問題に対する世間の反応をみると「検察に対する知識」が足りていないようにおもえます。どのようなひとたちが組織を支え、どんな気持ちで働いているのか。イメージが漠としているゆえ、議論が一面的で単純化された印象があります。政治家ほどその肉声がメディアに登場しないからかもしれません。

わたしが見た検察官

わたしは新卒で入社した日経新聞の1年生のとき、「東京地検特捜部」を取材する部署に配属されました。特捜部というのは、世間を揺るがす政財界の事件を独自に捜査する検察の特殊部隊で、これまで田中角栄、ホリエモン、カルロス・ゴーンなど著名人に切り込んできました。大きな獲物をねらう特捜部の捜査を追え、というのがわたしに課せられたミッションでした。

当時(今もですが)、この特捜部を取材する担当は各メディアの花形でした。それはそうでしょう。脱税、贈収賄、横領ーー。とかく著名人の犯罪が取材対象なのですから。NHK、読売、朝日など各メディアは地方などで事件取材の経験豊富な精鋭たちをそろえていました。一方、経済紙である日経新聞は記者の多くが東京配属であるため、大学を出たばかりのお子ちゃまを戦場の最前線に放り込むかわった人事戦略をとっていました。

わたしの検察取材は2008年から2009年の1年間だけです。「たった1年でなにがわかるのか」というお叱りの声が聞こえてきそうです。ですが、職業記者としてのスタイルが確立される前の、一市民の感覚で得られた取材の記憶は、検察庁法改正問題を考える一般の方々のお役に立つのではないかとおもい、noteを立ち上げました。

できるだけ教科書的にならず、わたしが見聞きした範囲のおもしろいエピソードをちりばめながら、検察官の実相に迫ってみたいと思います。連載は4回を予定しています。

第1回「腫れ物」 

第2回 「深夜の牛丼」

第3回「居酒屋での誘惑」

第4回 「黒川さんのこと」






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