製造業以外の社長も必見! 5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の本当の意味とは?②
前回は5Sとは何か、5S活動の本質的な意味、5Sが進まない理由などについて書きました。
今回は5Sの浸透させ、定着させる方法について記載します。
1.5S定着に向けた取り組み
(1)全員参加
5S活動は全員参加で進めます。
全員というのは、役職関係なく全社員です。
もちろん、社長にも参加していただきます。
5S活動は組織的に進めていく必要がありますので、「5S活動推進委員会」のような組織を立ち上げて進めます。
社長は5S活動を取り仕切る「5S活動推進隊長」とか「5S活動推進委員長」などの立場で、活動方向性を決めたり、意思決定機関として活動していただくのが良いでしょう。
上記は推進体制案と推進委員会案です。
メンバーを推進委員長、5Sリーダー、活動支援チームとし、毎月1回、1回につき約1時間程度委員会を開催します。
活動支援チームは5S推進チームの活動状況やサポートした内容について、5Sリーダーと共に推進委員会で報告します
推進委員長は推進委員会や5S推進活動の方向性の承認や、意思決定機関として活動します。
5S推進チームを中心に各職場において「こうするともっと良くなる」「こうやって表示するともっとモノを取りやすく」できるなど、コミュニケーションや議論できるような環境の整備も推進委員会内で検討してください。
(2)目的の周知徹底
5S活動を何故進める必要があるのかをご検討いただき、目標設定をします。
例えば、「モノを探す手間を削減し、業務を効率化して残業を減らす」「5Sを基礎として新規の受注につなげる」など目的を明確にします。
ただし、この目的には本質的な目的があることもあわせてご理解いただくことも必要です。
5Sの本質的な目的とは「自律した社員の育成」にあります。社員一人一人が自律して仕事をするようになることに5S活動の本質的な目的があり、これにより5Sの効果が現れてきます。
5S活動に期待することを全社員に周知徹底します。
スタート時には集合教育を実施し、5S教育のバラツキをなくす均質化を実施します。教育内容としては5S用語の定義など共通して活用するものについても理解させます。
5S活動が進んでくると、チェックリストや各種基準など統一しなければならない事項が発生します。
これらの運用を開始するタイミングで集合教育を実施します。
集合教育が難しいようでしたら、各職場、各担当ごとに教育を実施します。
(3)担当者の明確化
整理、整頓を効率よく進めるためには、職場ごと、担当ごと、メンバーごとなどに担当を定めると良いです。
実施に当たってはメンバーに清掃担当エリアを割り振ります。割り振られたメンバーは責任を持って整理、整頓、清掃までを担当します。
エリアマップを作成(顔写真などを貼付)し、誰が担当かを明確にします。
2.5S定着のしかけ
5S定着に向けて、まずはじっくり3S(整理、整頓、清掃)に取り組み、成果が出てきましたら清潔に取り組みます。
4つめのSである清潔の真の目的は、現場の力を常に発揮できるようにすることです。3Sが維持できていると、従業員は必要なときに必要なものをすぐに取り出せるようになっており、モノを探すという無駄な時間を削減して効率的に業務に取り組むことができるようになります。
「一人くらいいいだろう」と考えた瞬間に今まで実践してきたことが無駄になりますので継続した教育が重要です。
(1)5Sパトロール
管理者クラス、職場のリーダーなどいろいろな階層で「5Sパトロール」を実施しましょう。下記のようなチェックリストを使って作業場を採点し評価します。
チェックリストは各作業場などによりアレンジして活用します。
(2)5S月間
1年に2回ほど5S月間を設け、垂れ幕や掲示をします。
5S月間中は、5Sコンテストや5Sセミナーなど各種イベントを企画します。
5Sコンテストでは優れた工場や担当には表彰を実施します。Quoカードなどをプレゼントすることで、5Sコンテストを成功させている事例もあります。
(3)社内・社外5S見学会
作業場や担当ごとに見学会を実施し、評価シートなどを用いて良い点、悪い点を確認し合います。
製造業などでは、新規お取引先様をお招きして見学していただければ新規の受注も期待できます。
清潔まで5S活動が進んでくると各担当者は、自分の担当場所が他の場所と比べて良いのか、悪いのか、あるいは進んでいるのか、いないのかなど、不安になることがあります。
イベントを使って、全社的な進捗を把握することもできますし、各担当者へのフィードバックにも活用いただけます。
また、5Sコンテストなど報奨制度を組み込んで活用することで、担当者の自律性を高める効果もあります。
金額の多寡ではなく、頑張った人(今までの方法を変えて会社に貢献できた人)をしっかり褒める仕組みの導入が望ましいです。
報奨されなかった人にもなぜ報奨できなかったのか、どうすれば報奨できるようになるのかなど、5Sリーダー、活動支援チームがサポートします。
3. 5Sの最後「躾」について
躾とは、決められたことをきちんと守ることです。
この躾で大切になるのが、5Sの基準です。守るべきルールがなければ各々が勝手な判断で5Sを進めてしまいます。
5Sで定める基準の例として、
整理:捨てる基準、書類保管基準
整頓:線引き基準、表示基準、掲示物基準
清掃:清掃基準
清潔:イベント運営基準
躾:5S教育、5S時間
これらを文書化して正式に社内で認められた形にします。
5S活動の中で少しずつ整備していき、守るべきルールを定めます。これらルールを自然に守ることができれば4S(整理、整頓、清掃、清潔)をさらに進化させることにもなります。
文書化された基準を半年から1年に1回は勉強会を実施します。これは新たに学びなおせるだけではなく、現場で5S を進めていたなかで気づいた実際とは違うルールの見直しにも有効です。
(1)活動報告会の開催
5S活動は3年継続しないと定着しないともいわれております。
5S活動の1年目の終了日には活動のまとめとし、3年は続けるという想いを込めて第1期報告会を開催します。
報告会の内容としては、
・これまでの活動状況や成果などの5S活動の総括
・課題や反省点
・今後の活動について
などを報告します。
(2)チェック機能の強化
自主パトロールを実施し、問題個所の写真を撮影するなどして、観測を続けます。
職場ごと、担当ごとに相互パトロールを実施します。良い点の取り組みや改善の指摘も行います。
5S推進チームのリーダークラスが職場をパトロールします。
管理者パトロールを実施し、5Sの進捗などを確認し、管理者は進捗していない職場や困っている担当にアドバイスします。
(3)次年度以降の5Sの進め方
上記、スケジュール案を参考にしていただき、2年目以降も基本的には1年目と同じ進め方で進めてください。
できれば2年目開始時に年間計画をたてていただき、月1回の集合研修かフォローを実施していただけると良いと思います。
いかがでしょうか。
単に「職場を清潔に保ちましょう」だけでは5Sの定着が難しいという事がおわかりいただけましたでしょうか。
5Sの真の本当の意味を理解して進めることで、自律型社員の育成に取り組むことができます。
上司からの指示待ち社員ではなく自ら問題を見つけ、課題を設定して、改善策を実践できる社員、これが自律型社員です。
5S活動を人材育成を目的として実践してみるのはいかがでしょうか?