『教会史』第1巻 第13章 エデッサの君主に関する伝承について(エウセビオス)

http://www.newadvent.org/fathers/250101.htm

13章 エデッサの君主に関する伝承について

1節
我らの主で救助者であるイエス・キリストの神性は、彼の不思議な業をなす力のために国外の全ての人々の間で騒がれたので、彼はユダヤから遠く離れたところに在る諸外国からの数えきれない者たちを引きつけた。彼らは自分たちの諸々の病気と全ての種の諸々の苦しみが治されることを希望していた。

2節
例えば、アブガル王は、偉大な栄光と共にユーフラテスを越えた国々を支配していたが、人間の治療の技術の力を越えた酷い病気に悩まされていた。それで彼は、イエスの名と、全ての者たちによって一致して証言される彼の諸々の奇跡について聞いた際、特使によって[イエス]に伝言を送り、自分の病気を癒やしてくれるよう[イエス]に懇願した。

3節
しかし[イエス]はその時代に彼の要求に沿うことはしなかった。それでも[イエス]は彼が個人的な手紙[を送る]に値すると見なして、そこで[イエス]は彼の病気を治すために自分の弟子たちのうちの一人を遣わすだろうと言い、そして同じ時に彼自身と彼の全家に救済があるということを約束した。

4節
その後それほど経たないうちに、彼の約束は成就した。というのも彼の死からの復活と昇天の後、十二使徒の一人であるトマスが、神の誘発のもとで、キリストの七十人の弟子たちに数えられたタッダイを、キリストの教えの宣教者、また福音伝道者として、エデッサへ遣わしたのである。

5節
そして我らの救助者が約束したこと全ては彼を通してその成就を受けた。[読者]にはこれらのことについて、その時代に王都であったエデッサの諸々の文書保管所から取られた、記された証拠がある。というのもそこの諸々の公的記録は古代の諸時代についての報告とアブガルの諸々の言行を含むが、そのうちでこれらのことが現代に至るまで保全されていることが知られてきたのである。しかしその諸々の文書保管所から取って、シリア語から文字通り翻訳した、その諸々の書簡それ自体に聞くより良い方法はないだろう。以下のようなものである。

統治者アブガルによってイエスへと書かれ、急使アナニヤによってエルサレムにいた彼へ送られた書簡の写し

6節
エデッサの統治者アブガルから、エルサレムの国に出現した、傑出した救助者であるイエスへ、挨拶を送る。私はあなたについてと、諸々の薬剤や諸々の薬草なしであなたによって行われるようなあなたの諸々の治療についての報告を聞いた。というのも、あなたは盲人を見えるようにし、足萎えを歩くように、重い皮膚病の者たちを清め、不浄な霊たちと霊鬼たちを追い出していると、そしてあなたは慢性的な病気を癒やし、死者を復活させる、と言われているのである。

7節
あなたに関するこれら全てのことを聞いたので、私は二つのことのうちの一つが真実に違いないと結論付けた。すなわちあなたは神であって、天から降り来てこれらのことを為しているか、もしくはこれらのことを為すあなたは、神の息子であるか、そのどちらかである、と。

8節
それゆえ私は、手間を取らせてしまうがあなたに私のところへ来て私の持っている病気を癒やしてくれないか尋ねるべくあなたに書き送った。私はユダヤ人たちがあなたに対して不平を言ってあなたを傷つけるよう企てていると聞いたが、私は大変小さいがそれでも立派な都市を持っている。[この都市]は我ら両者にとって十分すばらしいものである。

特使アナニヤによる、統治者アブガルへのイエスの返答

9節
私を見ずして私を信じたあなたに、祝福があるように。というのも私に関して、私を見た者たちが私を信じず、私を見なかった者たちが信じて救われるだろう、と書かれているからである。しかしあなたが私に書き送ったこと、つまり私があなたのところに行くということに関しては、私が遣わされた目的である全てのことを成就させることが私に必要であり、それらを成就させた後は再び私を遣わした彼のところへ引き上げられることも[必要である]。しかし私が引き上げられた後、私は私の弟子たちのうちの一人をあなたに遣わそう。彼があなたの病気を癒やし、あなたとあなたに属する者たちに生命を与えよう。

更なる報告

10節
これらの書簡にシリア語で以下の報告が加えられた。…イエスの昇天の後、トマスとも呼ばれるユダは、彼に七十人の一人、使徒タッダイを遣わした。彼が来た際、彼はトビヤの息子トビヤのもとに宿泊した。彼についての報告が知れ渡った際、アブガルに、イエスの使徒が、[イエス]が彼に書き送ったごとく来たということが告げられた。

11節
それからタッダイは神の力においてあらゆる病気と虚弱とを癒やし始め、それに全ての者が驚かされた。そして彼が為した偉大で驚くべき諸々のことと、彼の実行した諸々の治療についてアブガルが聞いた際、[アブガル]はイエスが自分に「私が引き上げられた後に私は私の弟子たちの一人を送ろう。彼があなたを癒やすだろう。」と言って書き送ったのは彼についてのことではないかと考え始めた。

12節
それゆえタッダイがそこに宿泊していたトビヤを呼び出して、彼はこう言った。…私はとある力ある人が来てあなたの家に宿泊していると聞きました。彼を私のところへ連れて来てください。そしてトビヤはタッダイのところへ来て彼に言った。…統治者アブガルが私を呼び出してあなたを彼のところへ連れてくるように告げました。あなたが彼を癒やすためです。そしてタッダイは言った。…私は行きましょう。というのも私は力を帯びて、彼に遣わされたのです。

13節
それゆえトビヤは次の日に早く起きて、タッダイをアブガルのところへ連れて来た。そして彼が来た際、貴族たちはそこに居合わせてアブガルの周りに立っていた。そして[タッダイ]の入場にあって直ちに、偉大な幻が使徒タッダイの顔においてアブガルに出現した。アブガルがそれを見た際、彼はタッダイの前にひれ伏した。一方で周りに立っていた全ての者たちは非常に驚いた。というのも彼らは幻を見ておらず、それはアブガルにのみ出現したのである。

14節
そから彼はタッダイに、真に彼が、自分に「私は私の弟子たちのうちの一人をあなたに遣わそう。彼があなたを癒やし、あなたに生命を与えるであろう。」と言った、神の御子イエスの弟子であるかどうか尋ねた。そしてタッダイは言った。…あなたが勇敢にも彼が私を遣わすと信じたので、それゆえ私はあなたに遣わされました。そしてまださらに、彼を信じるならば、あなたの心の諸々の嘆願はあなたが信じるようにあなたに譲渡されるでしょう。

15節
そしてアブガルは彼に言った。…私は彼を大変信じていたので、そこをローマ人たちが支配しているという理由から思い留まらなければ、軍隊を連れて、彼を十字架に架けたこれらユダヤ人たちを壊滅させることを望んだくらいでした。そしてタッダイは言った。…我らの主は彼の御父の意志を成就させて、それを成就させたので彼の御父のところへと引き上げられました。アブガルは彼に言った。…私も彼と彼の御父を信じました。

16節
タッダイは彼に言った。…それゆえ私は彼の名においてあなたに手を置きます[按手します]。そして彼がそれを為した際、直ちにアブガルは彼が持っていた病気と苦しみを治された。

17節
そしてアブガルは驚嘆した。それで、彼はイエスに関して聞いていたので、[イエス]の弟子タッダイを通してのまさにその業において受け入れた。[タッダイ]は諸々の薬剤と諸々の薬草なしで彼を癒やした。そして彼だけでなく、痛風によって悩まされていたアブドス[Abdus]の息子アブドスをも[癒した]。というのも、彼も[タッダイ]のところへ来て、その足もとに伏し、彼の両手を置かれることによって祝祷を受けて、癒されたのである。同じタッダイはその都市の他の多くの住民たちをも治療し、諸々の驚くべきことと諸々の驚嘆すべき業をなし、神の言葉を宣べ伝えた。

18節
そしてその後でアブガルは言った。…タッダイよ、あなたはこれらのことを神の力を以って行い、我々は驚嘆させられました。しかしこれらのことに加えて、私にイエスの到来に関して、つまりどのように彼が生まれたのか、そして彼の力に関して、つまりどのような力によって彼は私の聞いたあれらの業を実行したのかを、知らせてくれるようあなたにお願いします。

19節
そしてタッダイは言った。…その言葉を公に宣言するために私は遣わされたので、今は確かに私は沈黙を保ちましょう。明日、私のために全てのあなたの市民たちを集めてください。それで私は彼らの面前で宣べ伝え、神の言葉を彼らのうちに播きましょう。つまり、どのように彼が生まれたかについて、彼の使命に関して、彼が御父によって遣わされた目的について、彼の諸々の業の力について、彼が世界に宣言した諸々の奥義に関して、どんな力によって彼がこれらのことを為したかについて、彼のへりくだりと謙遜について、どのように彼が自分を低くして、死に、神性を落として、十字架に架けられ、ハデスへと降下し、永遠[の昔]から壊されたことのなかった諸々のかんぬきを決壊させたかについてです。というのも、彼は唯一人で降下しましたが、多くの者たちと共に復活し、それで彼の御父のところへ昇ったのです。

20節
それゆえアブガルは市民たちに、タッダイの宣教を聞くために朝早く集まるよう命じた。そしてその後、彼は金と銀が彼に与えられるように指示した。しかし彼はそれを受け取ることを拒絶し、我々は我々自身のものを見捨てたのに、どうして他の者のものを取りましょうか?と言った。これらのことは[セレウコス暦]第三百四十年に為された。私はシリア語から文字通りに訳して、それらをこの適切なところに、的を射ていることを願って、挿入した。

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