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葬儀屋から学んだフリーランスのあり方

母はいつも大袈裟だ。いつもながらの調子で私に話しかけてきた。

「ねぇ、聞いてー!すごいことが起きた!」

おばあちゃんの葬儀を担当してくれたHさんが、家族葬や手軽な葬儀ができる会社を立ち上げたという。2年前から母は独り言のように「Hさんに葬儀屋を始めてほしい」と繰り返していたそうだ。それが現実化したことに、本人が驚いていた。

Hさんは、「葬儀業者」を超えたような存在だった。Hさんのあだ名は「お友達」。葬儀のとき、たまたま担当してもらったご縁だが、友達に思えるくらい気兼ねなく話せる存在だったからだ。なんとなく、波長があっている気がする。Hさんに会うと、叔父も、母も、いつも笑顔だった。

Hさんの対応はきめ細かい。たとえば、葬儀にはまとまった金額がかかるが、必要なものとそうでないものを、親身になって提案してくれたのだ。選んだ葬儀の品のブランデーケーキも、パティシエのことも細かく説明してくれた。何かあったら頻繁に家まで足を運んでくれて、安心感があった。

仕事で大事なのは、やっぱり人柄なのかもしれない

葬儀を頼む人に求められるのは、単なる専門性だけではないんだなと感じた。心からの思いやりと誠実さが重要だ。

「葬儀をできるだけ安く済ませたい」というコスパを考えて葬儀をする需要もあるかもしれないが、それ以上に重要なのは信頼できる人なのかどうか。手続きをただこなすのではなく、Hさんは安心と誠実さを感じる存在なんだと思った。

この経験はフリーランスである私にとって、大きな気づきになった。確かに、スキルは重要。でも、それ以上に人柄や人間的な魅力が、外せない条件なのかもしれない。

単に「仕事をする」だけでなく、相手を気遣い誠実に接すること。自分への戒めとして、忘れないようにしたい。

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