体幹安定性とバックスクワットの関係:効果とパフォーマンスへの影響
NSCSの研究論文をもとに、体幹の安定性がバックスクワットに与える影響について分かりやすく解説します。体幹の安定性は、スクワットでの重量挙上だけでなく、様々な運動パフォーマンスにも関わる重要な要素です。
ウェイトベルトの効果と個人差
ウェイトベルトの使用には個人差があることが研究から分かっています。この研究では、26名の被験者にバックスクワットを行ってもらい、ウェイトベルトを使用した場合と未使用の場合の1RM(最大挙上重量)を比較しました。結果として、ウェイトベルトを着用することで**腹腔内圧(IAP: 内部の空間に圧力をかけて体幹を支えるための圧力)**が上昇し、体幹が安定して高重量を挙げやすくなる傾向が見られました。しかし、この効果は全員に現れるわけではなく、以下のような結果となりました:
• ウェイトベルト着用で1RMが増加:12名
• 変化なし:9名
• 減少:5名
ウェイトベルトはサポートに役立つ一方で、全員に効果があるわけではありません。
体幹安定性とパフォーマンス指標
スクワットの挙上重量と体幹安定性が他の運動パフォーマンスにも影響を与えるかを調べるため、以下のような指標を使用して検証が行われました。
1. 垂直跳び:体幹が安定しているほど跳躍力が向上する傾向が見られ、**ウェイトベルト未使用時の1RMと垂直跳びの跳躍高には有意な正の相関関係(ある値が上がると他の値も上がる関係)**が認められました。しかし、ウェイトベルト使用時にはこの関係が見られませんでした。このことから、自力で体幹を安定させる力が重要であると考えられます。
2. 30m走:体幹安定性が高いほど、短距離走のタイムも向上する可能性が示されています。これは、体幹が安定することで、走行時のエネルギー効率が向上し、スムーズな動きが実現できるためです。
3. その他の指標:
• 505アジリティテスト(敏捷性の評価テスト):敏捷性を測るテストであり、体幹安定性の影響が検討されました。
• modified Double Leg Lowering Test (mDLLT: 両足を下ろすテストの一種) と Plank with Arm Lift Test (PALT: 腕を持ち上げたプランクのテスト):これらは体幹安定性を評価するテストであり、30m走などの指標と関連性が示されました。
体幹安定性と走行能力の関係
研究から、体幹の安定性は30m走のタイムにも関係があることがわかりましたが、これは相関関係に基づくもので、体幹安定性が直接的に走行フォームを向上させるかについては言及されていません。体幹が安定していると、走るときのエネルギー効率が高まりやすく、結果的にスピードアップに繋がる可能性があると考えられます。
結論:体幹の安定性とトレーニングの重要性
体幹の安定性は、バックスクワットでの挙上重量を高めるだけでなく、垂直跳びや短距離走など、他の運動パフォーマンスにも大きく影響します。ウェイトベルトは、体幹をサポートする効果がある一方で、競技パフォーマンスを向上させるためには、ウェイトベルトなしでも体幹を安定させる力を鍛えることが重要です。ウェイトベルトに頼りすぎず、体幹の筋力強化を重視することで、総合的な運動パフォーマンスの向上が期待できるでしょう。
この記事を書いたトレーナー
山岸慎(やまぎし まこと)
パーソナルジム STUDIO KOMPAS 渋谷店
東京都渋谷区南平台町13-11 南平台WEST 地下102