骨盤帯の安定性と動きの仕組み:肢位が与える影響とは?



骨盤帯は、日常生活や運動において私たちの体の安定性と柔軟性を支える重要な部分です。立位や歩行などの姿勢において、骨盤帯の関節がどのように安定し、可動性を持つかを理解することは、体全体のバランスや動作において不可欠です。今回は、骨盤帯の安定性と可動性、そして股関節の位置がどのように骨盤に影響を与えるかについて詳しく解説していきます。

1. 立位姿勢における骨盤の安定性


立位姿勢では、体重が骨盤帯の中心にある仙腸関節に負荷をかけ、仙骨が「うなずき運動」と呼ばれる動きをしようとします。この動きは、仙棘靭帯や仙結節靭帯などの靭帯によって制限され、骨盤が過度に動かないように保たれています。

• 仙骨のうなずき運動:仙棘靭帯や仙結節靭帯によって制御され、過剰な動きが抑制されます。
• 骨盤の後傾:地面からの反力が股関節を通して仙骨に作用し、腸骨が後傾します。この動きは、仙骨のうなずき運動を強める傾向にありますが、靭帯システムが適切に制限をかけています。

立位姿勢では、体の重心が仙骨と恥骨を結ぶ線上にあり、これが体全体のバランスを保つために重要です。

2. 片脚立位や歩行時の骨盤の動的安定性


片脚立位や歩行時には、片側の脚に体重がかかり、骨盤が動的に安定している必要があります。このとき、支持脚側の股関節が上がり、反対側の股関節が遊脚の重みによって下がります。これによって、恥骨結合には剪断応力が発生します。

• 恥骨結合の強固さ:この強固な結合が、片脚立位や歩行時の骨盤の動きを安定させます。脱臼などがあれば、歩行時に恥骨の高低差が現れる可能性があります。
• 仙腸関節の動き:仙腸関節も同様に、片脚立位や歩行時に作用する力に対抗して動きが抑制されています。脱臼がある場合、過剰な動きが現れることがあります。

3. 股関節の位置と骨盤への影響


股関節の位置(屈曲や伸展)も骨盤の動きに大きな影響を与えます。股関節の動きが骨盤の角度を変えることで、全体の姿勢や動作に影響を与えるのです。

• 股関節が伸展位の場合:腸腰筋の牽引で骨盤が前傾し、仙骨が前方に押し出されます。この動きにより、仙腸関節は「反うなずき運動」を行い、骨盤が前に傾く動きが発生します。
• 股関節が屈曲位の場合:ハムストリングスが骨盤を後傾させ、仙骨は「うなずき運動」を行います。この動きにより、骨盤全体の角度が変わり、身体の動きに影響を与えます。

4. 靭帯と筋肉の役割


骨盤帯の安定性において、靭帯と筋肉の働きは非常に重要です。仙棘靭帯や仙結節靭帯などの靭帯は、仙骨の動きを制限し、骨盤全体の安定性を保っています。また、腸腰筋やハムストリングスなどの筋肉が骨盤の動きを制御し、姿勢や動作を支えます。

• 骨盤の前傾に関与する筋肉:腸腰筋、大腿直筋、縫工筋など
• 骨盤の後傾に関与する筋肉:ハムストリングス、大殿筋、腹筋群など

これらの筋肉が協力して働くことで、骨盤は柔軟性を持ちながらも安定した動作が可能になります。

5. 仙腸関節の機能


仙腸関節はわずかな動きを許容する関節であり、骨盤の安定性と可動性のバランスを保つ役割を果たします。仙腸関節の機能不全は、腰痛や股関節痛などの原因となることがあり、適切な評価やエクササイズが重要です。

• 仙腸関節の評価方法:可動性テスト、疼痛誘発テストなど
• 仙腸関節の機能改善のためのエクササイズ:ストレッチ、筋力トレーニング、関節モビライゼーションなど

6. 歩行時の骨盤の動き


歩行時、骨盤は左右に回旋し、股関節の動きをスムーズにしています。骨盤のこの回旋運動は、体幹の安定性や歩行効率に大きな影響を与えます。

• 歩行分析における骨盤の観察ポイント:回旋の角度、左右差、動きの滑らかさなど
• 歩行改善のためのエクササイズ:体幹の安定性向上、股関節の可動域改善など

7. 個別のニーズへの対応


クライアントの年齢、性別、活動レベル、抱えている問題によって、骨盤帯に対するアプローチは変わります。個々のニーズに応じた評価を行い、それに基づいてトレーニングプログラムを作成することが重要です。

• 姿勢評価:立位や座位の姿勢を観察し、骨盤の傾きや左右差を確認する
• 可動域評価:股関節や腰椎の可動域を評価し、制限因子を特定する
• 筋力評価:骨盤周囲の筋肉の筋力を測定し、筋力低下や筋力バランスの崩れを把握する

これらの評価を基に、個別のニーズに応じたプログラムを設計することで、より効果的な結果が期待できます。

この記事を書いたトレーナー
山岸慎(やまぎし まこと)
STUDIO KOMPAS渋谷店
〒150-0036 東京都渋谷区南平台町13-11 南平台WEST 地下102

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