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膝の痛みと外反
予防の鍵は股関節と骨盤にあり?
近年、若い女性の間で膝の痛みに悩む人が増えています。特に、片脚スクワットのように膝へ高い負荷がかかる動作で痛みを感じるケースが多く報告されています。いったい何が原因で、どう対策すればいいのでしょうか。ここでは、肥田直人氏(国際医療福祉大学大学院)の研究をもとに、膝の痛みを引き起こす“膝関節外反”という状態と、その予防策について分かりやすく解説します。
1.膝関節外反(がいはん)とは?
膝関節外反とは、膝が内側へ入り込むように見える状態のことを指します。立ったときやスクワット動作中、膝が正面を向かずに内側へ寄ってしまう状態です。この膝関節外反が続くと、膝関節に過度な負担がかかり、痛みにつながる可能性が高まります。
2.従来のアプローチ:足部アーチに注目
これまでは、足部のアーチ、特に**内側縦アーチ(土踏まず)**の低下が膝関節外反の原因として注目されてきました。土踏まずが崩れると足首が内側に傾きやすくなり、その影響で膝も内側へ寄ってしまうという考え方です。そのため、土踏まずをサポートするインソール(靴の中敷き)や足部の筋力強化を行うことで、膝への負担を減らそうとするアプローチが一般的でした。
3.新しい視点:股関節と骨盤の重要性
肥田直人氏(国際医療福祉大学大学院 保健医療学研究科 福祉支援工学分野)の研究(論文タイトル: 「片脚スクワット動作における膝関節外反と姿勢の関係」)では、片脚スクワット時の膝関節外反は、足部のアーチよりもむしろ股関節や骨盤の動きと深く関わっていることが明らかになりました。
3-1.股関節伸展筋力の影響
片脚スクワットで膝が内側に入ってしまう人は、股関節を伸ばす筋肉(お尻まわりや太もも後面の筋肉)が十分に使えていない傾向が見られました。
• スクワットで体を支える際、股関節の伸展筋力が弱いと、どうしても膝が前や内側に押し出されてしまいがちになります。
3-2.骨盤の角度の影響
さらに、**骨盤が後傾(こうけい:後ろに倒れている)**していると、膝関節外反を助長することが分かりました。骨盤が後ろに倒れると、重心バランスを保ちにくくなり、膝まわりに余計なストレスがかかりやすくなります。
4.具体的な対策とエクササイズ
膝関節外反を予防し、膝の痛みを軽減するには、足部アーチだけでなく、股関節と骨盤の動きにも注目する必要があります。以下は、取り入れやすい具体的な対策例です。
1. 股関節伸展筋力トレーニング
• スクワットやランジなど、股関節を大きく動かしながらお尻や太もも後面の筋肉を強化するエクササイズを行いましょう。
• 例:ヒップリフト(仰向けで膝を曲げて寝て、お尻を持ち上げる運動)など。
5.まとめ
これまで膝関節外反のアプローチは足部のアーチに注目されがちでしたが、肥田直人氏の研究により、股関節の筋力や骨盤の角度も大きな影響を与えていることが示されました。若い女性に多い膝痛の予防・改善には、足部だけでなく、股関節や骨盤周辺の筋肉をうまく使うことが重要です。
最後に
膝の痛みは、運動のパフォーマンスだけでなく、日常生活の質にも直結する問題です。若い世代だけでなく、あらゆる年代の方が、股関節や骨盤に関するエクササイズを取り入れることで、痛みの軽減や姿勢改善に役立つ可能性があります。ぜひ一度、膝だけでなく股関節や骨盤のコンディションにも目を向けてみてください。
論文情報
• 論文タイトル: 片脚スクワット動作における膝関節外反と姿勢の関係
• 著者: 肥田 直人
• 所属: 国際医療福祉大学大学院 保健医療学研究科 福祉支援工学分野 福祉支援工学領域
(本記事は上記の論文内容をもとに編集・加筆し、多くの人にとって分かりやすい形にまとめたものです。)
著作者情報
山岸慎(やまぎし まこと)
パーソナルジム STUDIO KOMPAS渋谷店
東京都渋谷区南平台町13-11 南平台WEST地下102
ストレッチリラクゼーションサロン
ESL 都立大学 監修