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『グスタホ』


南米のどこだっけな

どこかの出身だって言ってた


どっちにしろすごい貧しくて

兄弟も多いから

一発逆転で稼げる仕事がしたいって


だから男子は

ボクシングや野球でのし上がるか

それが出来ないなら

ギャングになるか

そんなところの出身らしい




でどういうわけか今

うちの会社に居て

独身寮で

俺の隣の部屋に住んでる


野球部に所属してるけど

うちの野球部って別に

都市対抗野球とかに出るわけじゃないし

プロ野球なんかほど遠い世界


それからグスタホ本人も

もう25超えてて

(正確な歳、自分でも知らないんだってよ)


まぁでもたまに

暇なときにキャッチボールすると

ズドンと重いのが飛んでくるし

たぶんうちの野球部じゃ

だいぶ戦力なんだろうな


ま俺は野球もやれないし

そもそも休日や勤務前に

クラブ活動なんて

怠くてとてもとても




正月休みに有給を加えて

長く実家に帰っていたグスタホが

また寮に戻ってきた


お土産だっつって

チョコレートとか原色のグミとか

みんなに配ってる


で部屋に帰ったあと


俺は隣室だし親しいから

特別だぞっつって

でもみんなには内緒だぞって


茶色い袋に入った

大玉のスイカくらいある

重みのあるものを手渡されたわけ


へぇなんだろうなって

ガサガサって開けてみたら


いやまずいよこれは

俺はかかわりたくないよ


白い粉の入った

ビニールの小袋が大量に


グスタホは戸惑う俺を見て

笑いを堪えてニヤニヤしてる

いや笑えないんだよ


とりあえずこのことは黙ってる

イイからどこかに捨ててこいって

俺がそう言ったわけ


グスタホはいよいよ

吹き出していて


何を笑ってるんだと

腹立たしい気分になってたら


これは怪しいクスリでもなんでもなく

ロージンバッグだと


野球の投手が

手のスベリを抑えるために

パンパンやってるあの袋

マツヤニの粉だと


いいかげんにしろよ


って一瞬思ったけど


たしかにこれがほんとに全部

怪しいクスリだったら

とんでもない価値だろうし

そもそもさすがに

空港で止められてるよなって


俺もバカだなって

爆笑してしまったわけ


で寝て




で翌朝


早くから隣が騒がしいなって

思ってたら


寮に警察が来て

グスタホ連れてかれてんの




あのとき俺

突き返しといて正解



















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