![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/51175188/rectangle_large_type_2_e6c72ca4798bcf112210332cd2378876.png?width=1200)
【Kindle出版オーディション】『薄暗くて滑稽な作文を』
「近頃はいかがですか?」
「幸い、仕事は落ち着いています」
「そうですかそれは何より。リラックスできていますか?」
「波はいったん止んで、凪のような状態ですが、また次の嵐がいつ来るかと思うと、あまり緊張はほぐれませんね。漠然とした不安があります」
「お察しします。一難去ってまた一難、ということでしょうか?」
「その通りですね、次の波までゆっくりできればいいんですが…」
カウンセラーの先生とお話をするようになってから半年ほどが経つ
月に1回のペースで私と向き合ってもらう
主にストレスの根源は
立て続けに迫ってくる仕事
「甘枝さん、ではそういうお仕事は、RPGのようなものだと思ってみてはいかがでしょうか?」
「RPGって、ロールプレイングゲームのことですか?」
「はい、そうです。ああいうゲームって、旅の途中どうしてもモンスターと不意に出会いますよね。突発的な激務やトラブルはそんなものと考えてはどうですか?」
「なるほど、たしかにそう考えれば仕事中の心構えも変わってきますね」
「休日はお城に居る気分で、ゆっくりと宿屋でお休みになって、ということもできますし」
「おっしゃる通りですね、少し気持ちが楽になりました。ありがとうございます」
「ではまた、来月お話しましょうね」
働くこと、生きること、不意に襲い掛かる災難がある旅路を
RPGに例えることは理解できたし腑に落ちた
でももう少し考えてみると
なぜこのRPGをプレイしなければいけないのか
RPGをクリアした暁には何を手に入れられるのか
賃金?
そんなことはわかっている
しかし
-----
こんな私小説的な入り方であるいは叱られるか、無視されるかもしれない
でもこれが本音であり、無垢な感情
最終目標は
Wikipediaに自分の名前が載ること
”甘枝ゆとり”
ちょっとクサい言い方をするのであれば
自分の作品を読んで
心を動かしてくれる人がいて
それで
この人類の歴史の端の端のそのまた端のほうに
数ミリでいいから爪痕を残しておけたら
表現方法は数多ある
会話は得意なほう
口を開き
耳を傾ければ老若男女
だいたいの人を愉快にしてあげられる
イラストも苦手ではない
一筆書きでサラサラっといける
でも自分で言うことじゃないかもしれないけど
そんなところが器用貧乏で
けっきょくアラフォーにもなって
何も成し遂げていない
文学はどうだ
うん
悪くない
形に残るし
社畜時間の隙間を縫って
世間に広められる
まずは書いてみるか
長い文章は得意じゃないから
ショートショート?
散文?
よくわからないけど
つらつらっと書いて消えるような終わり方をするもの
引っ張って引っ張ってだらーんと緩和させて落とすもの
こねくり回してなんだかジャンルのわからないもの
こんなんを毎日書いてきて
そろそろ一年が経つ
幸い
ハートマークを押してくれる方
コメントをくれる方
投げ銭をくれる方
みなさんありがとうございます
そうなるとだんだん欲が出て
やっぱり本にしたい
『大日本末期文学全集』
書き溜めた300本程度のショートショート?散文?作文?コント台本?
これを抜粋して
作家先生になれたらな
そりゃ大金持ちになれたらいいけど
そんな贅沢はいいません
甘枝ゆとりの書く
人間の生々しい
あるいはそれを飛び越えて非現実の世界へ踏み込んでいくような
薄暗くて滑稽な作文を
短編集にできたら
どんなにか幸せなことか