【図解】パブコメ出そう!「令和の日本型学校教育」の構築を目指して (答申素案)-④
下記noteの続きです。
5.「令和の日本型学校教育」の構築に向けた ICT の活用に関する基本的な考え方
これまで繰り返し述べてきたように,「令和の日本型学校教育」を構築し,全ての子供たちの可能性を引き出す,個別最適な学びと,協働的な学びを実現するためには,学校教育の基盤的なツールとして,ICT は必要不可欠なものである。我が国の学校教育における ICT の活用が国際的に大きく後れをとってきた中で,GIGA スクール構想を実現し,4(3)で述べたようにこれまでの実践と ICT とを最適に組み合わせることで,これからの学校教育を大きく変化させ,様々な課題を解決し,教育の質の向上につなげていくことが必要である。
ICT が必要不可欠なツールであるということは,社会構造の変化に対応した教育の質の向上という文脈に位置付けられる。すなわち,子供たちの多様化が進む中で,個別最適な学びを実現する必要があること,情報化が加速度的に進む Society5.0 時代に向けて,情報活用能力など学習の基盤となる資質・能力を育む必要があること,少子高齢化,人口減少という我が国の人口構造の変化の中で,地理的要因や地域事情に関わらず学校教育の質を保障すること,災害や感染症等の発生などの緊急時にも教育活動の継続を可能とすること,教師の長時間勤務を解消し学校の働き方改革を実現することなど,これ
ら全ての課題に対し,ICT の活用は極めて大きな役割を果たし得るものである。
その一方で,ICT を活用すること自体が目的化してしまわないよう,十分に留意することが必要である。直面する課題を解決し,あるべき学校教育を実現するためのツールとして,いわゆる「二項対立」の陥穽に陥ることのないよう,ICT をこれまでの実践と最適に組み合わせて有効に活用する,という姿勢で臨むべきである。
同時に,ICT が我が国の学校教育に与える影響の全てを現時点で予測することはできない。子供たちが ICT を日常的に活用することにより,自らの学習を調整しながら学んでいくことができるようになるとともに,予想しなかったような形で子供たちの可能性が引き出される可能性があることにも着目する必要がある。また,子供の健康面への影響にも留意する必要がある。
さらに,学校における ICT 環境の整備とその全面的な活用は,長年培われてきた学校の組織文化にも大きな影響を与え得るものである。例えば,紙という媒体の利点や必要性は失われない一方で,デジタルを利用する割合は増えていくであろうし,校務の在り方,保護者や地域との連携の在り方,更には教師に求められる資質・能力も変わっていくものと考えられる。その中で,Society5.0 時代にふさわしい学校を実現していくことが求められる。
(1)学校教育の質の向上に向けた ICT の活用
ICT の活用により新学習指導要領を着実に実施し,学校教育の質の向上につなげるためには,カリキュラム・マネジメントを充実させつつ,各教科等において育成するべき資質・能力等を把握した上で,特に「主体的・対話的で深い学び」に向けた授業改善に生かしていくことが重要である。また,従来はなかなか伸ばせなかった資質・能力の育成や,他の学校・地域や海外との交流など今までできなかった学習活動の実施,家庭など学校外での学びの充実などにも ICT の活用は有効である。
その際,1人1台の端末環境を生かし,端末を日常的に活用することで,ICT の活用が特別なことではなく「当たり前」のこととなるようにするとともに,ICT により現実の社会で行われているような方法で子供たちも学ぶなど,学校教育を現代化することが必要である。子供たち自身が ICT を「文房具」として自由な発想で活用できるよう環境を整え,授業をデザインすることが重要である。
また,不登校,病気療養,障害,あるいは日本語指導を要するなどにより特別な支援が必要な子供たちに対するきめ細かな支援,更には個々の才能を伸ばすための高度な学びの機会の提供等に,ICT の持つ特性を最大限活用していくことが重要である。
(2)ICT の活用に向けた教師の資質・能力の向上
児童生徒が1人1台端末を使用し,いつでもクラウドにアクセスできる時代を迎える中で,上記(1)で述べたように,学校教育の質の向上に向けて ICT を活用するためには,養成・研修全体を通じ,教師が必要な資質・能力を身に付けられる環境を実現することが必要である。
このためには,大学における教員養成段階において,学生が1人1台端末を持っていることを前提とした教育を実現しつつ,子供たちにプログラミング的思考,情報モラル等に関する資質・能力も含む情報活用能力を身に付けさせるための ICT 活用指導力を養成することや,学習履歴(スタディ・ログ)の利活用などの教師のデータリテラシーの向上に向けた教育などの充実を図っていくことが求められる。このため,教員養成大学・学部や教職大学院は,学校教育における ICT を効果的に活用した指導のノウハウをいち早く収集・分析しつつ,新たな時代に対応した教員養成モデルを構築するなど,Society5.0 時代の教師の養成を先導する役割を果たすことが期待される。さらに現職の教師に対しては,国によるコンテンツ提供や都道府県等における研修の更なる充実等により,ICT 活用指導力の一層の向上を図ることが急務である。
また,新学習指導要領において示された資質・能力の3つの柱を一体的に育成し,主体的・対話的で深い学びの実現に資する,我が国ならではの ICT の活用モデルを確立していくために,教師は,授業研究の積み重ねにより,「子供はいかに学ぶか」「どう支援するか」を問い直していくとともに,教員養成大学・学部や教職大学院,国立大学附属学校は,このような不断の授業改善に取り組む教師のネットワークの中核としての役割を果たしていくことが求められる。
(3)ICT 環境整備の在り方
GIGA スクール構想により配備される1人1台の端末は,シンプルかつ安価なものであり,この端末からネットワークを通じてクラウドにアクセスし,クラウド上のデータ,各種サービスを活用することを前提としている。このため,学校内のみならず学校外とつなぐネットワークが高速大容量であること,自治体等の学校の設置者が整備する教育情報セキュリティポリシー等において,クラウドの活用を禁止せず,必要なセキュリティ対策を講じた上でその活用を進めることが必要である。
また,小学校,中学校段階のみならず,多様な実態を踏まえつつ高等学校段階においても1人1台端末環境を実現するとともに,各学校段階において,端末の家庭への持ち帰りを可能とすることが望まれる。さらに,数年後に迎える端末の更新については,出来るだけ早急に関係者間で丁寧な検討を行っていくことが必要である。
さらに,デジタル教科書・教材等の普及促進や,学習履歴(スタディ・ログ)や学校健康診断情報等の教育データを蓄積・分析・利活用できる環境の整備,ICT を活用した学びを充実するための ICT 人材の確保,ICT で校務を効率化することによる学校の働き方改革の実現などが重要である。
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