猫耳戦記 シーズン2 第十六話 強襲! 九尾暗殺部隊

「ようやくまともな奴を連れて来てくれるようになったな。ピーターパンよ。」
「よい狩り場が見つかりましたので・・・。」
「そうか。たくさん連れて来いよ!」
 阿修羅の国の人々を連れて来るようになり、彼らがなおかつ即戦力だったことにキャプテンフックは喜んでいた。
 ピーターパンはウェンディが息子のオルトロス王と共に無事に生きているということを九尾の伝令により知った。
 もう心配なんてする必要はない。遠慮なくキャプテンフックを倒すことができる。
 ただし、彼の部下たちは彼がいなくなっても彼の後釜になるだろうことは容易に予想ができる。だから倒さなければならないのはキャプテンフック以外にもいるのだ。
 特に、強力な魔力で生物を石化する強敵メデューサや、ほとんど人間に近い魔女マドンナなど恐ろしい敵が多い。
 人間に近いマドンナは、三代前の魔女の血の系譜だが、それ以外の先祖は人間であり強力な魔法を何種類も使える。ある意味で九尾やキャプテンフックを超える強さを持っている。しかし、どんな魔法が使えるのかは分からない。
 ジキル博士・・・彼は周囲をフランケンシュタインの大量生産で敵を警戒している。
 何を考えているか分からない男、狼男などが敵として待ち受けている。
 狼男はウェンディの思い人だ。悪い男ではないらしい。
 今のピーターパンはこの中で言えば弱い方なので、使い走りの一人に過ぎない。
 どうしたらキャプテンフックを殺せるだろうか・・・。しかし使い走りなので奴と会う機会も恵まれない。
 ピーターパンがそんなことを考えながらネバーランドの町中を歩いていると、後ろから突然話しかけられた。
「ピーターパン。君は何を考えているのかな?」
 マドンナが話しかけて来た。
「反乱を企んでいたでしょう。」
 どういう魔法を使ったのか、マドンナは心が読めるらしい。
 ピーターパンはそう予想した。
「どうしてそれを。」
「私はね。人の心が読めるんだよ。それに私は常に勝つ方につく。」
 なぜだろう。魔界には恐ろしい女が多い。
「恐ろしい女が多いのはね。世界がそういう仕組みだからだよ。それで、何を企んでいるの?」
 今は何も考えちゃいけない。考えちゃいけない。考えちゃいけない。
 ピーターパンは三回心の中で唱えた。
「考えなさいよ。馬鹿なのかな?」
「マドンナ・・・様は何を考えているんですか?」
「私の考えを先に知りたいのね。多分。キャプテンフックは九尾に勝てないと思う。君が阿修羅の国の民を連れてきているトロイの木馬作戦・・・あれは成功する。私は人の心も未来も読めるんだよ。ゆえに最強の魔法使いなんだよ。」
 マドンナはキャプテンフック陣営でも最強と言われている・・・。
「炎の魔法でも、氷の魔法でも、攻撃的な魔法も防御的な魔法も、精神的な魔法も使えるんだよ。ただし、色々使えるだけで私の力自体はそこまで強くない。要するに器用貧乏なんだ。そういう魔法使いだけれど、人の心を読む能力と未来を見通す能力だけは他の奴には負けないつもりなんだよ。」
「あなたは、何が目的なんだ・・・。」
「九尾になり替わることだよ・・・って言ったらどう思う?」
 マドンナは不気味な笑みを浮かべてそう言った。
 
「お前はネバーランド四天王のマドンナだな! 私と勝負しろ!」
 
 路地裏から鈴が現れた。
「ほら。私が勝てない相手が現れた。」
 鈴は刀を抜いてマドンナに切りかかった。
「グラビティ・アップ!」
 マドンナは左手に握っていた細く短い杖を鈴に向けてそう唱えた。
 すると、鈴は地面に張り付けられた。
「貴様・・・何をした・・・。」
 そう鈴が言ったと思った次の瞬間には喉元に刀を喉に突きつけている。
「時間を止めたね。鈴猫さん。その力がある限り、私に勝ち目はないわ。」
 マドンナは両手をあげた。
 
 〇〇〇
 
「九尾様。敵の四天王、マドンナを捕らえました。」
 鈴は九尾のいる居城、第二修羅城で九尾の前にマドンナを連れて来た。
 鈴はマドンナにより知らず知らずの内に精神系魔法がかけられて操られていた。
「お前が捕まっているじゃないか。鈴。」
 九尾はそう言って魔法を解いた。
「あ、殺せたのにできなかった! 何だこいつ。」
 鈴はそう言った。
「目的は何だ?」
「私の目的は九尾となり替わること。」
 九尾も精神魔法をかけながらそう聞いた。
「わしとなり替わるだと? 頭は大丈夫なのか? 何で?」
「私は昔から九尾のファンなんですよ。」
 九尾は頭を抱えた。
「こいつ・・・頭がおかしくなっている。薬でもやっているのか?」
「いえ、私もそういう薬は嫌いです。やっていないです。」
「はぁ・・・四天王が自ら来るとは・・・。」
「まあそう言わず話を聞いてください。」
 マドンナは魔界に来た経緯を話すことにした。
 
 〇〇〇
 
 マドンナもまた、ピーターパンに異世界から連れてこられた者の一人だという。
 この世界の神聖ハデス帝国、ネバーランドに連れてこられたが祖母が魔女だったということで、すぐにこの世界のやばさに気づいて逃げ出したという。
 祖母もまた、この世界から逃げ出したのだ。
 祖母は時々、魔界からかまぼこを輸入しに行き家族に振舞っていた。もし魔界に連れ去られても大丈夫なようにするためである。
 マドンナは祖母が大好きだった。色々な魔法が使えるとこっそり祖母から見せられて、自分もそうなりたいと思い魔界に連れ去られたら、魔法の才能に目覚めた。
 それ以前に、世界全体で戦争が起きていた時代の産まれ、人の心を読む能力と未来を読む能力を持っていたので、この世界にいたら自分は爆弾の爆発で死ぬと知っていた。だからピーターパンの誘いにすぐに乗った。自分の絶望的な未来を変えるためには魔界へ行かなければならなかった。
 ネバーランドに連れてこられたが、このままでは自分は繫殖用の奴隷に振り分けられる。
 そういう先読みができたのでそこからさっさと逃げた。
 マドンナの持っている先読みの能力は、目先のことしか予想ができない。
 人の心を読む能力があっても空気は読めないから人の心を掴むことはできない。
 しかし、そんな目先のことしか予想ができないマドンナではあったが、自分の予想を超える人物が現れた。
 それが九尾だった。
 自分と同じような境遇の産まれではあるが、九尾は次々と中つ国を手中に収めていく。
 強い九尾に憧れ、会ってみたいと思ったのだ。
 しかし、なかなか神聖ハデス帝国のスラム街から脱出できなかったマドンナではあったが、魔法の力を認められて暴君ケルベロスに仕えることになった。
 ドラゴンライダーの龍姫に魔法をかけて、鈴に見せかけるなどでも暗躍していた。
 あの時、九尾はケルベロスに殺されるだろうという未来を見ていた。
 しかし、九尾はケルベロスを一人の異世界人と共に戦い、打ち破った。
 歴史が変わる瞬間にマドンナは驚いた。
 自分の未来予知はかなりの確率で当てられた。それを超えた九尾・・・カッコいいと思った。そして九尾と共に戦いたいと、できるならなり替わりたいとその時思ったのだと、マドンナは語った。
 
 〇〇〇
 
「そんな理由か・・・。」
 九尾はマドンナに可能性を感じた。
「やれやれ・・・じゃあ。お主は戦力の一人にしてやろう。」
「いや。後継者にしてください。」
 マドンナはまっすぐに目をみて九尾にそう言った。その言葉に魔力はこもっていなかった。魔力で支配しようとしても九尾には通じない。
 嘘を言っているかどうか、九尾は分かった。
「駄目じゃ。わしになり替わるつもりなら、この軍では一兵卒からやれ。まずは鈴の下につけ。決して裏切るな。」
 九尾は決して裏切るなという言葉に魔力を込めた。まるまる相手を信じてはいないが、マドンナを配下に入れる決断をした。
「承知いたしました。『決して裏切るな。』その言葉の魔法は絶対に自分では解かないのでご安心ください。」
「おぬし・・・怖いぞ。だが、おぬしの事情は承知した。わしとなり替わる素養はあるだろう。ネバーランドを叩き潰す。協力をしてくれ。」
 マドンナは頷いた。
「あんなクソ国家。微力ながら私も潰すことに協力いたします。」
「ところで聞きたいことがある。おぬしと同じく四天王の狼男。奴はどんな男だ?」
「私の知る限りお話いたします。」
 
〇〇〇
 
 四天王の一人、狼男。吸血鬼ドラキュラと並んで強い魔物だ。
「吸血鬼ドラキュラはクソ弱かったじゃない。そんな奴と同列なら弱いんじゃないの?」
 鈴がマドンナの話に割って入った。
「ドラキュラ自身は確かに弱い。雑魚の中の雑魚と言っても良いかもしれない。けれど従えている吸血鬼の数だけはものすごく多い。ドラキュラはその支配者だった男、この吸血鬼たちの飢えを賄っていたのはやはりピーターパンが連れて来た人間たち。薬物を注射されたりもしていたけれど血液も抜かれている。百万体の魔物を従えているの。だけれども、性質的にドラキュラは一人倒しても次のドラキュラが現れる。」
「でも一体一体は弱いということか・・・。」
「そう、鈴さんが国士無双でも一人じゃ倒しきれない。吸血鬼は人間から直接血を吸うとその人間も吸血鬼にしてしまう。だから血の供給は採血に頼ることになるけれど・・・」
「けれど、どうだというんじゃ?」
「薬物中毒者の血を飲んでるあいつらは薬物中毒にもなっている。血を飲むという行為が快楽に繋がっている。まぁ直接人から血を飲むという行為にも元々セックスのような快楽はあったらしいけれど・・・だから血が途切れると薬物中毒者の禁断症状でのたうちまわることになるの。」
「そうなのか・・・それは痛快な状況じゃな。要するに数だけの軍隊と言うわけか。話が逸れてしまった。狼男はどうなんじゃ?」
「彼は単独でその百万体の軍隊を撃破できるほどに強い。」
 そして狼男は複数人いるし狼女もいる。
 そしてその群れのリーダーが狼男だという。
「奴はケルベロスの父親。今回はそのケルベロスの復讐に燃えている。だからやばい。」
「そうなんだ・・・。オルトロスの父親も狼男だというが、そいつとは別人なのか?」
 九尾はそう聞いた。
「一度会ったことがあるし心を読んだけれど、あいつはオルトロスの親ではない。オルトロスの父親の狼男は奴の弟だ。そしてケルベロスが討たれた時に激高した奴は実の弟を殺していると聞いてる。」
「つまり、数で戦っても勝てない可能性のある男と言うことか・・・。」
「でも、弱点はある。私と鈴さんがいれば倒す手段はある。」
「私を押さえつけたあの魔法か・・・それで足止めして私が刺せばいいということか。」
「それと火に弱い。火炎魔法の使い手、オルトロス殿なら単独で彼を倒せる、あるいは銀の弾丸も効果的。」
 
 
 〇〇〇
 
「くそっ マドンナが離反しただと!」
 キャプテンフックはフックをつけている右手の義手を椅子に叩きつけた。
 その義手からは赤い血が流れだした。
 狼男の首がネバーランドの首都の城、シンデレラ城に届けられた。
 届けたのはピーターパンだ。
「何故、お前がこの四天王の首を持ってきたんだ。ピーターパン。」
「僕はさらに強い人間をさらってくるために、どこかに強い者がいないか、狼男様に相談していたところ、マドンナに誘われてマドンナの店に行って酒を飲んでおりました。付き合いきれないので家に帰ったら翌朝、僕の自宅の前でこのような姿になっていました。」
「鈴猫とマドンナ・・・狼男を討つとは・・・いったいどれほど強いんだ。奴らは。そしてなぜマドンナは裏切った・・・。狼男はどうやって死んだ。」
「ピーターパン。知っている限り話せ。」
 ピーターパンは答えることにした。
 
〇〇〇
 
 狼男、名前はケルベロス一世、彼はキャプテンフックの中では主力部隊の一つになる人狼部隊の部隊長という位置づけであった。彼でなくてはその部隊や部族をまとめて動かせるとは思えない重要人物だ。そう考えて敵は狙いをつけた。
 そんな人物を暗殺したのは、鈴猫とマドンナだ。
 ネバーランドの首都、シンデレラ城の城下町を数人の人狼と共に酒を飲んで歩いている時に鈴猫の刀で切られて殺されたと思われる。
 裏切り者のマドンナが仕切っている魔界のキャバクラで楽しんだケルベロスには、なるべく濃いめの酒を提供されたからだ。仲間だからと無料で飲み放題として酒を提供した。 
 マドンナはこっそり酔いを強くし、もっと飲みたくなるような魔法もかけた。
 ケルベロス一世の周囲の仲間もそのうまい酒を飲まされた。
普段なら抑えて飲むタイプのケルベロスではあった。
「お前も飲め。ピーターパン。」
「僕は永遠の未成年です。飲めないです。」
 ピーターパンはそう断って飲まなかった。
「ティンカーベルもこんなところで働いておるのか。ピーターパンの彼女と聞いたが太っちょじゃなー。ブスじゃなぁ・・・ははは。」
 ティンカーベルの逆鱗に触れそうなことを言いながらケルベロス一世はティンカーベルに酒を注がせた。
「いや~そんなこと言ってるとティンカーベルに殺されますよ。」
 マドンナもそう言って直接お酌しにきた。
「でもおっぱいはいいな。すごく柔らかい。気持ちいいさわり心地だなあ。ははは。おっぱいで選んだなピーターパン。あはは。」
「今はせいぜい楽しんでいるがいい・・・。」
「ん? ティンカーベル? 何か言ったか?」
「いえ、何でもないですよ。どんどん飲んでください。そうだ。飲み比べしましょう!」
「おお。いいのう・・・やろう!」
「私はそんなに飲めないのでこの店で一番飲めるリンさんと勝負してはどうですか?」
「リン? お前より美人なんであろうな? それなら代わって良いぞ。」
「リンさん。ご指名ですよ!」
 ティンカーベルは源氏名がリンと名乗る女を呼んだ。
「おお・・・異国のものか? 可憐な娘じゃのう・・・ピーターパンと同じ永遠の未成年っぽいが大丈夫なのか?」
「ええ。大丈夫ですよ。」
 マドンナがそう答えた。
「飲み比べはこのコークハイはいかがですか? 人間界から取り寄せたコーラという飲み物と魔界の高級ウィスキーを混ぜたカクテルで、この店で一番美味しいですよ。普段なら目が飛び出るほど高い代物です。他の方も一杯いかがですか。」
「おお・・・もらうか。」
 そう言って人狼の部下の一人が飲んだ。
「うぁ上手ぁい! この世のものとは思えん。」
「そうでしょう。何せ異世界から取り寄せたコーラと上物の魔界の高級ウィスキーの組み合わせです。うまいに決まっているのです。」
マドンナはそう酒を紹介した。
「さぁケルベロス一世様。私といっぱい飲んで勝負するにゃん。」
「私にしか作れないので一旦席を外しますね。」
 マドンナは席から外れた。
 このコークハイが罠だとは知らずにケルベロスらは飲み始めた。
「おお。良い飲みっぷりにゃ。どんどん飲むにゃ。」
 恐らくリンはただのコーラを飲んでいた。そしてそうやってはやし立てる。
「うぐぬぬ・・・もう飲めぬ・・・。気持ち悪い・・・。」
 ケルベロス一世はそう言い出した。
「女に負けていいのですか? ケル殿。」
 マドンナはケルベロス一世にそう言った。
「もっともっともーっと飲むにゃ。我を忘れるほど飲むにゃ。」
 マドンナは吐き気止めの魔法をコークハイにかけて、ケルベロス一世に飲ませ続けた。
「日頃の憂さをはらすといいにゃ」
「日頃の憂さかぁ・・・キャプテンフックみたいな俗物の下になんで誇り高き人狼族が使えなきゃならん。息子は元皇帝だぞ。馬鹿野郎。」
「そうにゃ。そうやってどんどん愚痴を言って良いにゃ。聞いてやるにゃ。でも、ケルベロス皇帝はキャプテンフックの傀儡だったんではないのかにゃ?」
「傀儡って何だ? よく分からんことを言うな。要は一番偉かったってことだ。」
「人狼族って頭が悪いのかにゃ?」
「そうだ。俺たちは頭が悪い。自覚している。でもキャプテンフックに従っていれば魔界で良い思いができる。こんな風に。」
 愚痴を吐きながらケルベロス一世は酒を飲み干していく。
 同じペースでリンも飲む。
「おぬ・・・お主どんだけ飲め・・・飲めるんだ・・・ざ・・ざるか?」
「そうにゃ。お前が死ぬまで飲むのを辞めぬっ!」
「ど・・・こかで聞いたこと・・・があるセリフ・・・だな・・・。」
 そうは言いつつもコークハイをケルベロス一世は飲み続けた。
 コーラの在庫が無くなったのでただのウィスキーのストレートになっても飲んでいる。
 付き合わされている部下は既に眠り始めている。
色が似ているのでリンはウーロン茶を飲み始めている。
「ちょっとおトイレに行ってくるにゃ。今日はとことん飲むが良いにゃ。」
 リンは席を外した。
 ピーターパンも眠くなったので家に帰った。
 翌朝、起きたら家の玄関の前に、ケルベロス一世の首が置いてあり、「マドンナと九尾暗殺隊鈴猫がこいつを殺した。使いっ走りのお前がこれをキャプテンフックに届けるように。」
 そう殴り書きされた手紙がケルベロスの口に咥えさせられていた。
 恐怖を前に震えたが、言われた通りにキャプテンフックのところへ持ってきたということだ。
 ピーターパンはキャプテンフックにそう説明した。
 
 〇〇〇
 
「それ以上のことは僕には分かりかねます。」
「分かった。お前は強い奴を異世界から攫ってくるだけで良い。何も考えるな。」
「承知いたしました。」
 
 この間にも徐々にネバーランドへの侵攻は静かに、確実に行われている。
 ピーターパンが連れてきている人間はトロイの木馬。
 彼らは全て敵国の人間なのだから。
 
 〇〇〇
 
 ピーターパンの報告には続きがある。
 これをキャプテンフックは知らない。
 鈴は水分を取り過ぎたので本当に手洗いに行っていた。
 その間に、マドンナは狼男のケルベロス一世に調略を仕掛けていた。
「あんたが酔っているから教えてあげるけれど、もうネバーランドは詰んでいるんだよ。」
「つ・・・詰んでいるとはどういうことだ。」
「東から中つ国、北からあなたの甥にあたるオルトロスの軍、ピーターパンが国内に連れ込んでいる人々は中つ国でも最強の阿修羅の民がトロイの木馬として送り込まれている。彼らにキャプテンフックの命令魔法はほとんど効かない。」
「そう・・・なのか?」
「そう。キャプテンフックの魔法が効かないように九尾は魔法をかけたから。あんたもキャプテンフックが嫌いなんでしょ。あんたの息子は馬鹿だから死んだけれど、甥は立派に王をしている。平和な治世をしている。どう思ってる。返事次第じゃ動けない今、あんたを殺すけれど・・・。」
 ケルベロス一世は、答えようとしているが酔っているせいで答えを返すのが遅い。
「俺は・・・キャプテンフックが憎い・・・憎い・・・。俺・・・俺の息子と甥を国の代表にしてくれた・・・が、息子が九尾に殺された時・・・反乱分子と見られて・・・弟を自分の手にかけさせて・・・忠誠を誓わせられた・・・。俺は・・・甥のことはこの人狼族の誇りだと・・・誇りだと思っている・・・。バカ息子がキャプテンフックに心酔したせいで・・・九尾に殺されたことは・・・確かに許せねぇ・・・だがキャプテンフックはもっと許せねぇ・・・。」
「じゃあ。私と一緒に離反するってことでいい? 息子の仇敵である九尾につくということだけれど・・・。」
「いや、俺は九尾につくんじゃねぇ。離反するなら・・・いや離反する。俺はオルトロスにつく。」
 実際のところ、ケルベロス一世は飲んでいただけでセクハラはしていないがそこは話を盛ることで、マドンナや鈴たち女の敵と思わせることにした。
 そして、マドンナは近くの墓地から頭の骨を適当に掘り出して、魔法を使ってケルベロス一世の首を作ってピーターパンはそれをキャプテンフックに見せることとなった。



次回予告 知らぬ間に追い詰められていくキャプテンフックが誇る四天王たちは暗躍する九尾暗殺部隊に次々と殺害、調略されていることに恐怖していた。追い詰められたキャプテンフックはどう出るのであろうか?

次回 九尾の宣戦布告! 乞うご期待!

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