買い物狂騒曲
初売りの季節がやってきた。「SALE」の文字に心が躍らされて売り場にいく。
しかし、あれこれ目移りして、結局何も買わずに帰ってくる。こんなパターンが多い。
あとに残るのは、ぐったりとした疲労感だ。
ヘアドライヤーが選べない
少し前、ヘアドライヤーを使っていたら、おかしな音がし始めた。
それで数年ぶりに新調しようと思ったのだが、家電店の売り場に行ったら、「こんなにたくさん種類があるのか」と驚いた。機能やデザインを比較しだしたら、ドツボにはまった。
サイズいろいろ、重さもさまざま、コードレス、海外で使える、ナノだかイオンだか髪がさらさらになる、風圧切り替え、ホタテ貝のかたちがピカピカ光るような楽しそうなデザイン・・・。
「日本は技術が洗練された国で、とても尊敬している」と、海外で何人に言われたことだろう。しかし、きめ細やかな技術の進歩についていけない消費者もここにいる。
ウィーン。かすかな悲鳴をあげながら、風力も弱まりつつあったヘアドライヤーをおそるおそる使いながら、結局新しくできない日々が続いた。
コスパを考えると
ならば価格で決めればよい。そう思ったら、頭上からライフハックやコスパに詳しい勝間和代さんの声がした。「毎日使うものには、むしろお金をかけていいものを買いましょう。1日で割り算したらわずかな金額になります」と。
ここで私は、さらに混乱する。ドライヤーの価格帯は広いのだ。3,000円くらいのものから、ナノだとかイオンだとか「髪がよくなる系」は数万円もする。そのとき使っていたドライヤーは3,000円ぐらいで数年もった。しょっちゅう変えなくてもいいのだから、今回は少々値が張るものにしようか。
何度かヨドバシカメラでドライヤー売り場に寄り道しては、買えずにいたある日、たまたま宿泊したホテルで、ひとめぼれならぬ、「使いぼれ」したドライヤーがあった。とにかくターボの風圧がよい。あっという間に髪が乾いた。速乾!これだ!
まさかの場所に
黒のドライヤーに白字で書かれた「SALONIA」の名をメモっておいた。その翌日、家から近いドラッグストアで私は「あっ」と声をあげた。同じドライヤーが一種類だけ、5,000円足らずで売っていたのだ。
灯台下暗し。しょっちゅう来ている店なのに、ドライヤーを売っていることさえ知らなかった。迷わず買い求めたのは言うまでもない。
そのドラッグストアで、私は相変わらず歯ブラシの前でうろうろ、ボディ用保湿クリームの前でぐるぐるしながら、またもや決められないのであった。