【06 May 2019】チェンマイの話/2
カルサイネイザン体験の続き。
前回はこちら
その先生のクリニックは中心地から車で40分ほどの郊外にあって、最近建てたのであろうきれいな平家だった。話からすると結構ワイルドな場所を想像していたので少し意外だった。
若い女の子が中に案内してくれて、服を脱ぎタオルをかけてベッドに横になる。しんと静かで、やや薄暗いなかに光が優しく差し込む、リラックスする空間。期待やら緊張やらを胸にじっと待っていると、その静寂を破るかのように「ぐっどもーにーーん!」と元気なおばちゃんが入ってきた。この人がカルサイネイザンの重鎮・kunnee先生。見た目はまったく一般的なタイのおばちゃんで、頭に巻いたカラフルなスカーフがお似合い。結構気難しくてムーディだと聞いていたけど、第一印象はそうでもなさそう?
先生は英語を少し話せるけれど、タイ訛りなのでなかなか聞きとりが難しい。いつもはオプションで日本語の通訳をつけるらしいけど、私の期間は不在で、それでもいいからと予約を入れていた。お互いカタコトで、日本から来たのね? 調子どう? みたいな簡単な話をして、施術がはじまる。
まず最初は外側、チネイザンという胃と腸に働きかける施術から。先生、私のおなかに触れた途端「ぶろーくん」とひと言。壊れてるって・・自覚がないぶん驚いた。続けて、スーッと深い呼吸をしながら各ポイントを指で押していく。そして時折、ゲフッとゲップする。お腹いっぱいだからではなくて、こうしたかたちで悪いものを排出しているんだとか。東洋医療系ではオナラやゲップは毒出しとされていることを後に知った。
カルサイネイザンのなかでも先生の施術はスピリチュアル度の高いもので、本人も、神さまの力を借りてやっている、と言っているそう。オカルト的なものではなく、つまりは東洋的な「気」とか自然の力、そして本人の直感に基づいているという感じかな。(もちろん、技術が磨かれている上での話。)野球でいうと長嶋茂雄みたいな感覚派のプレーヤーなんだと思う。
胃から腸にかけてひと通り触られ、いくつかの場所にはズンと心地よい痛みを感じ、身体がホワンとしてきた。胃腸にフォーカスした施術ははじめてだったので、こんなふうに感じるんだなぁと受け止めながら。で、そろそろカルサイネイザンかな・・と思ったところで、「今日は中(子宮)まではできなそうだから、ここまで!」とまさかのストップ。言葉の壁があるためよく分からないけど、身体の準備ができていないとかなんとか。
正直、え! これだけ! とちょっと拍子抜けした。たしかに心地よいけど、期待が大きいぶんあまりにさらっと終わってしまったから。明日もこんな感じだったらどうしよう・・と若干の不安を抱きつつホテルに戻った。
が、そんな心配は2日目に見事打ち破られる。
お腹を触って「OK, ベター」と先生。昨日と同じように圧をかけてはたまにゲップを繰り返す。今日は少し饒舌で、年齢からはじまりいろんな質問もされた。
「結婚してる?」「してない」
「ボーイフレンドは?」「今はいない」
「お父さんお母さんは?」「離婚してるの」
「お母さんとは仲いい?」「まあまあかなー」
と、世間話的なノリで答える私。
その後はしばらく静かな時間が流れ、最後に馬乗りになって腹部に圧をかけようとするときだった。先生が私に向かって言葉を発した。
それは、なぜか「I LOVE YOU」と聞こえたんだけど
いやいやまさか!と、「なんて言ったの?」と先生に目をやり聞き返す。すると、今度は少しゆっくり「あい らぶ ゆー!(自分を指さし)Kunnee、あいらぶゆー!」とたしかに言ったのだ。
予想だにしてなかった言葉をかけられたことで、一瞬、固まった。かすかな間を置いて、ありがとうー私もだよ!ととりあえず返したものの、なんで???と、軽くパニックに。カルサイネイザンに入るときには落ち着いたものの、なぜかそのひと言がものすごい衝撃だった。
待ち望んだカルサイネイザンは膣内を点検されるように、いろんなポイントに触れ、ここ痛い? どんな感覚? と聞かれながら進んでいった。浅いところから徐々に深部まで進み、最後には子宮からお腹、胸くらいにかけてふわんと何かが湧き上がるような感覚があったのを覚えている。人によっては悶絶するほどの痛みが伴うらしいけど、私はほとんどなかった。
が、施術後はすごかった。ホテルに戻ったあと、身体がズシンと重くなり、ベッドに沈みこむよう。アイラブユーの衝撃もあって、ぼうっとしているのに頭の中はぐるぐる回っていて、とにかく横になり部屋に篭っていたい気分。ただ、具合が悪いのとは違って、決して不快ではない。外の賑やかな世界を避けて、ひとり静かにこの感覚を味わっていたかった。オーガナイズしてくれたりえさんにこの状況を伝えたかったけど、その気持ちとは裏腹にラインを送ることすらできず、1日静かに過ごす。
そうして今日の体験を振り返っていると、あのアイラブユーは、カルサイネイザンに入るための準備だったのかなと思った。記憶やストレスは胃腸や子宮に溜まる。先生は私との会話、そして身体を触った感覚から、この子にはアイラブユーが必要だと感じたのではないか。幼少期に親が不仲だったことの記憶か、それとも少し前にある男性に失望したことなのか、何を先生が感じ取ったのかは分からないけれど、愛されてないという思いが私の心のどこかにあって、先生はアイラブユーでそれを解きほぐすことで、心と身体のこわばりを取り除いたのかもしれないな。あくまで、推測だけど。
実際、私は自分の中にそんな気持ちがあることを自覚していない。だけど、アイラブユーにこんなにも引っかかるというのは、何かがあるんだろうな。ひとは自分にとって当たり前の言葉にはこんなに反応しないから。
でも、だからといって原因を追求しようとは思わなくて、そんな自分もどこかにいるのかな、と感じていればいいだけの気がした。
ちなみに、私の身体の状態について、1日目にされた説明がよくわからなかったもので、この日はタイ語訳した質問を持参したんだけど、なんだかそれはどうでもよくなった。詳しい説明を求めるものではないんだな、と思ったし、むしろあの場に通訳の人がいなくてよかったとも。言葉は時としてじゃまになる。
先生のところには結局4日間通ったけど、もともと内科婦人科系にはトラブルがなかったので、目に見えてどう改善したとかいう話はできない。あ、若干遅れがちだった生理がきっかり28日周期で来るようにはなった。メンタル的にもドラマチックな変化は起きていない。自分の反応にただ驚き、そうなのかなぁ?と思っただけ。でもこの体験はたぶんずっと忘れないし、何かの節目のようにも感じる。
わからないけど、それくらいでいい気がする。
先生がお土産に山ほどくれたロンガン。
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