満天の星空_B

「星空の世界遺産」への想い

昔から「満天の星空」に強く惹かれてきた。ただの「美しい星空」ではなく、あくまでも「満天の星空」に。

若い頃から登山や国内外への旅行をしてきたので、「美しい星空」であれば空気の澄み切った場所で何度も見てきた。しかし、「満点の星空」といえるよう出会いは、これまでに数回しかない。

その数少ない体験の中で、オーストラリアで見た「満点の星空」は、本当に凄かった。

小高い山の上に立ち、空を見上げた瞬間、視界いっぱいにきらめく星々が無数に広がっていて、そのあまりにも美しく神秘的な光景に息をのんだ。しばらくの間、感動で声も出なかった。

星々が狂ったように輝き、しばらく魅入っていると視覚と胸の鼓動を残して、身体のすべてが消え去っていくような、不思議な感覚に包まれた。

ガイドさんが懐中電灯の光で、南十字星などの星座を指し示しながら、解説してくれた。

懐中電灯の光は、本当に星まで届いているのではないかと思ってしまう程、一直線に星空を貫いていた。

だから、その光の軌跡にぶら下がれば、星まであっという間に連れて行ってもらえるような気さえした。

3年ほど前、ニュージーランドのテカポ湖が世界初の「星空の世界遺産」を目指していると聞いた。テカポ湖は「世界一星空が美しいスターゲイジングスポット(星空観察)」と呼ばれているという。

ニュージーランドに旅行したときには、テカポ湖にかなりの距離を歩いて行ったが、なんとも神秘的で素晴らしい場所だった。

まるで大気圏外にでもいるような、完璧に澄み切った空気と広大な風景に圧倒された。

残念ながら、その旅行でテカポ湖の夜空を眺める機会は無かったものの、「星空の世界遺産」のことを耳にしたときは、「なるほど!」と思った。

最近、その後の登録状況がどうなっているのか知りたくて、ニュージーランド政府観光局のサイトを調べた。

日本の世界遺産が23、オーストラリアが20、スイスでも12あるのに比べて、この国には3つしか無いことにまず驚いた。

そして、残念ながらその中に「星空の世界遺産」は見当たらなかった。関連情報も一切無かったので、立ち消えになってしまったようだ。

とても残念だ。

     (写真は「itta」掲載のもの)

この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?