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7日間ブックカバーチャレンジ

先日の昆布ブログ、水産庁「海の宝!水産女子の元気プロジェクト」のFacebookページでご紹介頂きました。ありがとうございます!

全国各地で活躍している水産女子の情報が、水産庁担当職員により随時発信されています。一口に水産と言ってもいろんな業種の方がいます。気になる方はぜひ覗いてみて、そして気に入ったらぜひいいねして頂けたらうれしいです。

また、生産者の方がTwitterでも紹介して下さいました。ありがとうございます!

https://twitter.com/tomimotsar/status/1260908990193520640

作曲や歌詞もそうだけど、こうやってアウトプットした自分の言葉にリアクションを頂けるのはとってもうれしいです!ライブができなかったり直接お会いできない状況でも、誰かに届けることができるっていう自信と希望になっています。自分が刺激を受けたものや感動したものを伝えられるよう、このような状況の中でもできる限り感性を磨いていたいと思います。

さて今日のタイトルですが、プライベートのFacebookアカウントで(下記ページは全員に公開しています↓)、

「7日間ブックカバーチャレンジ」というのをお世話になっている方から繋いで頂きました。ざっくり説明すると、

”読書文化の普及に貢献する為のチャレンジだそうで、好きな本を1日・1冊・7日間投稿し、
同時に誰かお友達を1人ずつつなげていくというチャレンジ・プロジェクト”

なんだそうです(コピペ)。

実は本がそこそこ好きな私は、はやりのタイムラインを見ながらちょっとやってみたかったんだよね。でもそこそこ好きだけど、音楽と水産を中心にしているSNSじゃ内容が散らかるしキャラがブレるし笑。読書だけをテーマに続けて行ける程の量も読んでいないし、とのことで趣味の範囲にしていました。なので、期間とコンセプトを限定的にしたこの企画はめっちゃいいなぁって思って、二つ返事で引き受けさせて頂きました。

本当に好きな本を厳選して紹介したので、Facebookやっていない方でも、やっているけど会ったことや仕事でつながりのない方は基本的にお断りしているので見れていない方にも、せっかくだから紹介したいと思います!

以下、実際にFacebookで紹介したものに少し加筆・修正を加えて掲載します。

1日目・伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」

以前ラジオがきっかけで出会い、その後も色々とご一緒させて頂いているディレクターさんから、7日間ブックカバーチャレンジというものがやってきました。ありがとうございます!

紹介したい本がありすぎて7つに絞るのに苦労しましたが決めました!そんな中で迷わず真っ先に思い浮かんだ本がこちら、伊坂幸太郎デビュー作「オーデュボンの祈り」。好きな本は多々あるのですが、今この状況の中で一番おすすめしたい本なので1日目にします。

ちょっとした事件を起こした主人公が見知らぬ島にやってきて、未来を予言し喋るカカシと出会います。タイトルのオーデュボンはフランス生まれでアメリカに渡った19世紀の動物学者です。小さな閉鎖的な島で展開する事件と、グローバルでスケールの大きい伏線が素晴らしいです。

テンポ感もよくユーモラスな描写や会話が多々あり決して重い作品ではないですが、人間の思考、生き方、自然との関わり方、色々と考えさせられます。カカシという絶対的な存在がいることで安心している島民、自分ルールで他人を処刑する桜という人物、桜の存在ゆえ機能していない警察など・・・さっきまで改めて読み返していて、特にこの時期色々と受け取るものがあります。

個人的に特にミュージシャンにおすすめ。宮城を舞台にしており、個人的に一昨年~昨年にかけて仙台や石巻にご縁があったので、以前読んだ時よりも地名や人名が具体的にイメージできるようになったのがうれしい。

2日目・加藤秀弘「クジラ博士のフィールド戦記」

ブックカバーチャレンジ2日目、私の活動とご縁がある加藤秀弘先生の「クジラ博士のフィールド戦記」をご紹介します。

捕鯨応援ソング制作の関係で参加した網走くじらフォーラムで知り合って以来、先生が東京海洋大学在籍時には学内ミュージアムを案内して頂いたり、質問がある時は研究室にお伺いしたり、私もゼミの方たちと一緒にお酒を飲んだり、大変フレンドリーでユーモラスな方です。

昨年の5月くらいに書店で偶然この本を発見して、「先生、本を出されたんだぁすごいなぁ」と即座に購入しました。その数日後、商業捕鯨解禁(2019年7月1日)に先立ち、クジラに関するラジオ出演のオファーがあり後日打ち合わせに行きました。担当の方に「今ちょうどクジラの本読んでるんですよ」って見せたら「ええっ!?」て驚かれて。なんと加藤先生も一緒に番組に出演することに既に決まっていたんです。おかげでとてもスムーズに話が進みました。てゆうか私のアンテナすごくない??収録日にお会いした際、先生がサイン入りの本をプレゼントして下さいました。そんなわけで2冊所持しています。

ギャグを連発して、もうお一方出演されていた芸人くじらさんと編集を困らせていた加藤先生ですが(「先生、ギャグは1回の収録につき5回まででお願いします!話が進みません!」と言われていた笑)、ラジオでは話しきれなかった商業捕鯨解禁に至るまでの経緯が、科学的視点に基づき詳しく解説されています。また、若かりし頃はオホーツク(この辺も縁を感じる)でアザラシを研究していたことや、人間社会に置き換えたマッコウクジラの生態、シロナガスクジラ標本制作の奮闘の様子など、とても読み応えがあります。

加藤先生の尽力によりノルウェーからシロナガスクジラの骨格が日本に貸与され、貸与されたものは下関の海響館内(でかいので室内での展示はかなりレア)で展示されています。ロケで下関を訪れた時に直接近くで見ることができました!先生のお名前も横にしっかり記されておりました。またその際に制作されたレプリカは、千葉の南房総市「和田コミュニティセンター」と和歌山の太地町「太地町立くじら博物館」に展示されています。
和歌山の太地町はまだ行ったことがなく、訪れたい場所のひとつ。コロナ収まったら行きたい。

クジラつながりで、明日は村上龍「歌うクジラ」をご紹介する予定です!

3日目・村上龍「歌うクジラ」

7日間ブックカバーチャレンジ3日目は村上龍「歌うクジラ」。

舞台は2100年代。グレゴリオ聖歌を歌うザトウクジラから不老不死遺伝子が発見されたことによって、人間は政府の管理下に置かれ階層化されています。効率化政策によって方言や敬語が失われ、不老不死遺伝子の効果を逆に使用することで老化を意図的に引き起こす医学的処罰が行われていました。
ざっくり言うと、冤罪により処刑された父親からクジラの不老不死遺伝子についての情報を預かった15才の主人公が、父の意思を叶えようと危険な旅に出る話です。

「旅」というとどうしてものほほんとした印象になって、どうもこの過酷な物語がうまく説明できませんが、とにかく行動せよ、というメッセージに尽きると思います。村上作品は他にも「愛と幻想のファシズム」「五分後の世界」など、社会や政治に関して他人事な私たちに警鐘を鳴らしているんじゃないかと思っています。理不尽に支配されたくなければ自ら考え、行動するしかない、と。

今回本当はどちらかと言えば「愛と幻想のファシズム」を紹介したかったけれど、昔親しくしていた男性に渡したままだったのでカバー写真を撮れなかった。短編集「ワイン一杯だけの真実」もめちゃめちゃ好きで、彼が見た世界を私も見たくてワインを少し掘り下げたことがあった。CDを初めてリリースした時に、この本で知ったバローロというワインを開けた。この本はソムリエの友達が海外に旅立つ時に渡した。

どちらも古本だった気がするけど、私は好きな本を教えるというのは自分の思考や性癖を教えているのと一緒なので、よっぽど心を開いた人にしか渡さないことにしている。

4日目・いしいしんじ「トリツカレ男」

いしいしんじの、動物や生き物とナチュラルに会話し共存したり、現実じゃありえないことが普通に起きる、宮沢賢治をどこか彷彿とさせる世界観が大好きです。この「トリツカレ男」もハツカネズミと何事もなかったかのように話しているし、スポーツにおいては何のトレーニングも積んでいない一般ピーポーの主人公がいきなり三段跳びで世界選手を超えるレベルの技術を習得しています。

この二人は、生活を通して我々じゃ見えない何かが見えてるんだろうなぁって思う作家です。感受性が強すぎるゆえ傷つきやすさや孤独な要素も持ち合わせているんじゃないかなぁ、と勝手に想像し、羨ましく思っています。なぜ羨ましいかというとあくまで私の考えですが、アーティストとして傷や孤独というのは同情の対象ではなく才能の1つだど思っていて、傷や孤独を「作品」という別の形で外に出し人の心を動かした時、それらの要素を持ち合わせていない作品よりも深く爪痕を残すんじゃないかと思うのです。

傷や孤独は多かれ少なかれみんな(もちろん私も)持っていて、それらをSNSで愚痴ったりしたらすっきりするかもしれないけれど、普段の生活で解消してしまうのではなく作品で昇華したいと私は思っています。

少し逸れましたが作品に戻ると、この話は登場人物みんな優しい。優しすぎて泣けてくる。辛いことに向き合うのは覚悟がいることだけど、ありえないくらいの優しさを受け止めるのも同じくらい覚悟が必要で時には苦しいことなんじゃないかな。また誰かに心底優しくするのも勇気が必要で、決して見返りを求めているわけではなかったとしても、時に裏切られたり思うように受け取ってもらえなかったりする。

だから私たちはこの現実では時々優しさのアンテナをあえてオフにして、目を背けているのかもしれないと思いました。それは悪いことだと言いたいのではなく、日々膨大な人と接し(リアルに限らず)、好意にせよ悪意にせよ自分と関連のあるたくさんの情報に対しての防衛本能なんじゃないかと考えています。

アンテナをオンにしてほしいと相手に望むじゃなくて、気づいたら知らないうちに相手をオンにさせていた、っていうアーティストになりたいね

※以下本日追記
久しぶりに読み返した後で気になる箇所があったので、いろんな人のレビューをネットで探していたところ偶然、「トリツカレ男」という名前のバルが高円寺にあるということを知りました。このお話からお店の名前を付けたそう。

これは行きたい…!安心して外出できるようになったら行きたいけれど、コロナウィルスの影響で飲食店はどうなんだろうと思い調べてみました。すると、高円寺のクラウドファンディングの協力店舗として参加されていました。ちょうど今日始まったみたい。気になる方はチェックしてみてください!

5日目・宮沢賢治「銀河鉄道の夜」

7日間ブックカバーチャレンジ5日目、昨日前振りした宮沢賢治の、短編集「銀河鉄道の夜」をご紹介します。

不器用さや純粋さゆえ今考えると些細なことで傷ついた子供の頃や世間知らずな頃をなぜか思い出し、物語の外側で胸が痛くなる、そんな宮沢賢治作品がとても好きです。宮沢賢治は作品の朗読に合わせて演奏を行ったり(朗誦伴奏)、彼自身も曲を残したり、音楽的側面からも興味深いです。

この短編集の中で特に「シグナルとシグナレス」という線路沿いのシグナル達の情緒不安定でぶっ飛んだ恋物語が好きです。シグナレスとは彼の造語で、アクターに対するアクトレス的なニュアンスです。元気な歌を歌いながらやってくる始発電車がかわいいけど1ページ目登場して以降二度と出てこないところとか、めんどくさい電信柱が替え歌のつもりなのか訳の分からない歌を歌っているのが腹立つけど憎めないし、天気や季節はころころ変わってカオスな世界観です。

電車や電信柱が喋ったりするので他の作品同様ファンタジー要素強めな印象ですが、山や夜や月など美しい景色の描写の中にも狂気が垣間見える気がするのです。無自覚で美しい狂気。狂気は日常や常識と無縁の場所にあるんじゃなくて、いつ誰がどのような時にスイッチが入っても不思議じゃないような気がするのです。

6日目・浅田次郎「薔薇盗人」

7日間ブックカバーチャレンジ、6日目は浅田次郎短編集「薔薇盗人」。好きな作家の1人で、一番多く所持しているのが浅田次郎の作品です。

とは言っても長編歴史物はあまり得意じゃないのでまだまだ全然なのですが、現代を舞台にした人情物や短編集だけでも相当な数です。涙のツボを完全に押さえていて、わざと泣かせにかかってくる作品が多いです。ずるい。有名どころだと「鉄道員」「地下鉄に乗って」など。

余談ですが「鉄道員」が映画化された際、作中の鉄道日誌に書かれている「本日異常なし」が、「All correct today」と英訳されていたのが、真面目に寡黙にルーティン業務をこなす主人公の男を的確に表現しているようでとてもとても好きです。

豪華客船の船長の父へ宛てる主人公の手紙から始まる表題作「薔薇盗人」は、三島由紀夫を意識して書かれたオマージュ作品(と言っていいものか)であることも魅力の一つです。

三島の自殺に衝撃を受け、その死を探求したいために自衛隊に入隊した作者。村上龍の世界を見たくて作品に出てくるものと同じワインを調べた私はその気持ちはわからなくはない。上述の「All correct today」は前のブログのタイトルにしていました。

「三島由紀夫への嫌がらせみたいな小説(笑)」と本人が別紙で語っているのは、三島の死が不可解のままであることに対する苛立ちや仕返しなのだろうか。浅田好きのみならず三島由紀夫が好きな方にも大変おすすめ。ちなみにオマージュされている三島作品は「午後の曳航」です。

三島の特にエッセイで現れる、もし三島の時代にTwitterがあったら炎上しそうな強い表現が好きなのでこちらも紹介したかったけど(既に一日一冊というルールをガン無視で他の作品をちょこちょこ紹介しつつあるけど)明日最終日は別の人にします。ではまた明日。

7日目・恒川光太郎「夜市」

7日間ブックカバーチャレンジ最終日は、恒川光太郎「夜市」。

ホラーというカテゴリーになるのかもしれませんが、描写がとにかく美しいです。初日の伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」同様デビュー作で高く評価された作品です。

ホラーは苦手なのだけど怖いもの見たさという矛盾で、たまに角川ホラー文庫のコーナーに立ち寄り気になるものを手に取ってぱらぱらめくっていたところ、最初の3行でつかまれました。それ以来この人に夢中です。

何でも買えるお祭りの夜市で、野球の才能と引き換えに弟を売った幼い主人公。ドラクエみたいなありえない世界の中で、もしも自分の願望が叶っちゃったら。自分の願いと引き換えに、取り返しのつかないことが起こっちゃったら。願いって、本当にそんなに欲しいものだったんでしょうか。それとも、何を引き換えにしても受け取る覚悟ができているものなのでしょうか。

今一度、自分が大切にしているつもりだったものを見直すいい機会なんじゃないかと思います。

※本日追記
実は一番好きな作家なのですが、Facebookにこの投稿をした日は酔っぱらっていて恒川愛を全然伝えきれていなかったのが悔やまれます。もう一遍収録されている「風の古道」も最高。

それにしても、悪役の描き方が伊坂幸太郎と似ていると思うのは私だけでしょうか(「オーデュボンの祈り」の城山と、「風の古道」コモリや、「雷の季節の終わりに」のトバ)。気になる方はぜひこちらも読んでみてほしい!

以上7作品と少しはみ出しましたが、今おすすめの本たちでした。またこういう機会があったらやってみたい!

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水産系シンガーソングライター牧野くみ
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