盛岡台湾プロレスへの道~番外編その1『1秒先の彼』やら台湾映画の日本版リメイクについて

2023年7月7日、七夕。
この日から公開される映画『1秒先の彼』は人気台湾映画『1秒先の彼女』の日本版リメイクです。

盛岡台湾プロレス計画にも関係してくるであろう(と勝手に思っている)「盛岡台湾ハッピープロジェクト」では『盛岡台湾HappyFes』を行っています。
2023年1月に3回目を迎えましたが、この時に私の所属する「台湾カルチャー研究会」で台湾映画について話をさせていただくことになりました。

私が取り上げた題材が「台湾映画の日本版リメイク」で、その時この『1秒先の彼』についても触れておりましたので、この機会にその時の原稿を修正してこちらで公開しようと思います。

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台湾カルチャー研究会の佐々木です。

私が台湾に興味をもつきっかけは2001年の台湾ドラマ『流星花園』を観たことでした。そこから20年近く台湾ドラマを見続けて今に至ります。
『流星花園』は日本でも大人気の漫画『花より男子』の台湾版リメイクで、台湾や中国のみならずアジア圏で大変な人気となった作品です。

ここで突然ですが、今年のNHK大河ドラマ『どうする家康』主演は誰でしょうか?
マツジュンこと松本潤さんです。

松本潤さんの出世作はTBSドラマの『花より男子』です。
このドラマの企画されたきっかけというのも、TBSが『流星花園』を放映して日本でもヒットしたので、それなら日本でもという感じで作ったといわれています。
そういう意味では台湾ドラマの『流星花園』を『花より男子』としてリメイクしたとも言えますが、あくまでもベースは日本にありました。

しかし、近年では台湾発の原作で制作された映画やドラマが、日本でリメイクされるという動きが出てきてます。

一例は先ほどの話題に上げた、マツジュン大河ドラマで本多忠勝を演じている今や人気の若手俳優山田裕貴さんですが、2018年に台湾映画『あの頃、君を追いかけた』の日本版リメイクで主演をしてます。

ヒロインが元乃木坂46の齋藤飛鳥さんだったため、上映された当時は乃木坂ファンの若い男性の観客多かったんですよね。女性少なかった。
もし、今だったらあり得ないだろう。

日本版のストーリーはちょっとおバカで幼稚な男子と、ちょっと大人びた真面目な美少女との、甘酸っぱくて長い10年の片思い物語という感じで、割ときれいにおさめられている印象でした。やはりそこらへんは乃木坂が主演だからでしょうか。

オリジナル版はと言えば。
確かにおバカで幼稚な男子が主人公ですが、それだけでは終わらない。
下ネタは炸裂するし青春の悲喜こもごもあるあるも盛り込まれているし。
それに「台湾青春映画の得意芸の一つ」ではないかと思う、両片思いエピソードがこれでもかこれでもか、というくらいぶち込まれている。
(現在は知らないですが、90年代くらいまでの台湾の高校生はまず勉強しろ、男女交際は大学からみたいな感じもあるらしく、両片思いになりやすいということみたいです)
主人公の女の子はかわいいが、大人びていても、多少田舎くささも忘れていない。
甘酸っぱさと若いバカさが炸裂したこの作品は香港、中国などでも大人気となり、日本でもファンが多くいます。

舞台は90年代の台湾中部の彰化という田舎町。一応新幹線の駅もあるので盛岡みたいな規模と思ってよいかと。
当時の台湾は日本のカルチャーが浸透していることが、映画のシーンでもはっきりかんじられます。
「スラムダンク」の読んでバスケしたり、飯島愛のAV観たりしていて日本に憧れがあった時代だったんでしょうね。

この作品はリアル感がかなり高いのですがそれもそのはず、監督、脚本、原作をの九把刀(ギデンス・コー)の自伝的小説を映画化から。
この映画のエピソードでもでてきますが、ギデンズ・コーはいろんな分野の小説を書いてます。そのほかにもゲーム制作もしたり、映画監督をしているマルチクリエーターで、近年の台湾のカルチャーのことを語るには絶対に外せない存在の方です。

この作品については台湾の巨匠、侯 孝賢(ホウ・シャオシェン)監督も、「本気でふざけたものをつくることは実はすごく難しい」とギデンス・コーをほめたという話もあるそうで、人気も高いですが、作品についての評価も高いのです。

この作品は語ろうと思えば様々な側面で話題がでてきて、話が尽きない作品なので一旦ここで話はとめまして。

実は今年、台湾映画のリメイク作品の公開予定あります。
盛岡の方々にはおなじみの朝ドラ『あまちゃん』の宮藤官九郎さん脚本作品。

オリジナル版の邦題が『一秒先の彼女』なんだけど、『一秒先の彼』でクドカンさんが男女逆転してリメイクしちゃうという驚きの内容。
朝ドラヒロインの清原果耶さん、岡田将生さんが主演。

オリジナル版では変態ストーカーチックな主人公を清原果耶さんが演じるので一体どこまでできるんだろうか気になってしょうがない。

先ほど挙げた『あの頃、君を追いかけた』では、山田裕貴さん、普通イケメン俳優がこれやるかというようなおバカシーンも日本映画にしてはかなりのところまで再現していたので個人的には演技派の清原果耶さんの変態ストーカーは見てみたいものです。

また、台湾のネットでも話題になったようですが、オリジナル版にあわせていくと、清原果耶が岡田将生をかつぐというシーンがあるのではないかということ。どうなるんでしょうねここ?
いずれ動かない「彼」をどうにかして移動させないとこの物語が成立しないので、どのように動かすのか見もの。

そして季節感についてはどのように処理するのかということ。
この作品はもともと七夕情人節、台湾の夏のバレンタインにかかわる話なのだが、(原題を直訳すると「消えたバレンタイン」)日本ではバレンタインといえば冬。さてどうするのか。

『あの頃、君を追いかけた』はオリジナル版の絵を意識しすぎでいろいろおかしかった。
例えば、台湾は受験は春~夏にかけてだけど、日本では真逆の冬なのに。
受験失敗した女子を励ますシーンで同じ絵を撮りたいがために、真冬の夜の野外で山田裕貴さんにTシャツ脱がして裸にさせるのは「さすがにそれはなかろう…」と思ったので、季節感は意識していてほしい。
制作者のオリジナル版への愛は凄くわかったんですけど、さすがにそれは別の話かと。

なお、映画のオリジナル版のついて触れておくと『一秒先の彼女』の監督は陳玉勲(チェン・ユーシュン)。
以前、盛岡の「映画の力プロジェクト」で『祝宴!シェフ』というチェン・ユーシュン作品は上映してます。
あの寒かった日、盛岡のデパート、カワトクの屋上での上映会で。

観た方はなんとなくチェン・ユーシュンの世界観わかっていただけると思うのですが、不思議な人達がたくさん出てくる、シュールなコメディタッチの作品を作る監督っていうのが私のイメージです。

それゆえ、クドカンさんとは相性はよさそうに思いますけれども、原作のシュールさとクドカンアレンジとの調和が見ものになりそうです。

とりあえず、『一秒先の彼』は今年の夏公開なので、その前に機会があったらオリジナルで予習してもらえたらいいかなと。
有料ですが配信サイトでみられます。

最近は配信サイトで見られる台湾映画もだいぶ増えてきました。
今日のトークであげたもの、そのほかにもAmazonPrimeやU-NEXT、NetFlixなどですぐに観られる台湾映画のたくさんあるので時間があるときにちょっと覗いてみてください。

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今週末か来週初めに『1秒先の彼』は観るつもりなので、答え合わせしようかな。


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