勉強するときに音楽を聞くべきか否か。専門家がざっくり回答します。
最新の知見
BGM(バックグラウンドミュージック)の効果は、勉強の課題・曲・聞く人によって違います。
カンタンな課題のときには、BGMの効果は本当に人それぞれ。プラスにもマイナスにもなるようです。あなたの場合はどうなのか、課題タイプ・音楽があった方が良いかどうか・どの音楽を聴くと良いかの三つを意識して観察し、最適解をみつけてください。
ムズカシイ課題のときには、BGMは使わない方がよさそうです。
タスク前の音楽が頭脳スイッチをオンにする
気分があがる音楽を聴くと、勉強などの認知タスクのパフォーマンスが良くなります。音楽が頭脳スイッチをオンにしてくれるのです。ただ、音楽が効くと分かっているのはタスクをはじめる前です(下記参照)。では、タスク中は?
音楽を聴きながら勉強するとどうなるの?
BGMと認知タスクについては、70年以上も研究されています。そんなに長い歴史があるなら、さぞかし解明されているだろうと思うでしょう?それが違うんです。
条件を変えて実験するほどいろんな結果が出てきて、収束していないのです。たとえば、記憶。少し前までは「音楽を聴きながらだとあまり覚えられない」というのが定説だったのですが、最近では音楽が記憶をサポートするケースが続々と報告されています。記憶といってもいろんな実験タスクがあるし、どの曲を使うのか、誰が聞くのかによって効果がちがってくるようなのです。
数あるタスク・曲・聴き手のすべてのコンビネーションを実験で調べるのは不可能です。勉強も同じ。勉強には読み・書き・記憶・考えるなどいろいろなタスクがあるので一概に「勉強するときにこの音楽を聴け」もしくは「聴くな」とは現段階ではいえないのです。
効果的な音楽との付き合い方
音楽を聞きながら何かをするのは現代人の常識。人々は科学の答えを待つことなく、トライ&エラーを繰り返しながら、自分なりの音楽との付き合い方を発見して上手に活用しています。
そこで私たちは、勉強とBGMの質問研究をして、そんな人々のノウハウを聞き出しました。そしていくつかわかったことがあります。
簡単なタスクを行うときには、BGMを使う・使わないは人それぞれ。ジャンルもあまりクリティカルではない。
難しいタスクを行うときは、BGMが良い効果をもたらすと信じている人でも、BGMを使わないことが多い。音楽の種類も、インストゥルメンタル、クラシック、ジャズ、などジャンルが限られる。歌詞を含む曲も避けられる。
つまり、難しいタスクを行うときはBGMは使わない方が良いことを、人々は肌で感じているということ。
これは認知理論にもかなっています。簡単なタスクにはそれほど脳パワーはいりません。でも難しいタスクでは脳パワーを最大限に使います。この脳パワー、音楽情報を処理するにも必要なのです。難しいタスクに取り組んでいるときに音楽が脳パワーを使ってしまと、その分パフォーマンスが低下してしまう、といわれているのです。
皆さんは、勉強・仕事などでBGMを使いますか?どんな音楽を選んでいますか?もしよければ教えてくださいね。
より詳しい情報
Goltz, F., & Sadakata, M. (2021). Do you listen to music while studying? A portrait of how people use music to optimize their cognitive performance. Acta psychologica, 220, 103417.