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世界の音楽に共通するものはなんでしょう?

いろんな音楽のカタチ

日本世界の音楽のカタチは実にさまざま。BBCのアーカイブでは西洋、アジア、アフリカなど、世界中の音楽が聴けます。さて、一見バラバラな世界中の音楽、共通点はあるのでしょうか。

音楽を解剖してみよう

音楽はいろんな要素に解剖できます。慶應技術大学のサベジ先生は、リズムや音階、演奏方法、メロディ構造などの音楽要素を32個リストアップしました。そして、世界中の音楽でどの要素が使われているか調べました。そして分かったトップ3の共通要素はこちら。

第1位:ビートの2分割・3分割
テイクファイブを知っていますか?これは五拍子の曲、つまり音楽のビートの5つが一つのグループとして繰り返しています。さらに、その5つのビートは1・2・3と1・2の二つに分割されます。

このように、音楽のビートは2つ、もしくは3つにまとまることが多く、それは世界中の音楽に存在するのです。

第2位:不均等ステップの音階
なんのこっちゃ、と思われるでしょうか。じつはドレミファソラシドもこの「不均等ステップ音階」です。ピアノの鍵盤を思い浮かべてください。ドから白い鍵盤を一つずつ上に押していくと「ドレミファソラシド」が弾けますよね。

よく見ると、ドとレの間には黒い鍵盤が挟まっているのに、ミとファの間にはありません。つまり、ミとファのステップはドとレのステップより狭いのです。ドレミファソラシドに慣れてしまった私たちの耳には、音を聞いてステップの広い・狭いを判断するのは難しいのですが、音の高さを物理的に測定すると確かに不均等です。

https://unisession.com/初心者でもわかる楽譜の読み方-2-臨時記号/  より  

世界には、ドレミではない音階を使う音楽がたくさんありますが、どれをとっても、ステップの幅が全く同じ音階はほぼ存在しないのです。

第3位:7音以下の音階
ドレミファソラシドの例では、ドからドまで(1オクターブ)を7つの音に区切っています。世界の音楽の音階は、オクターブを7音かそれより少ない音で区切る傾向にあります。日本でポピュラーなヨナ抜き音階(ドレミソラ)などは5音音階ですね。

思ったより地味?

音楽は言葉の壁を越える、みたいな正解を期待していた方には、思ったより地味な共通項目に感じられるかもしれませんね。そもそも、どうして音楽の共通要素を知りたいの?そんな声も聞こえてきそうです。

音楽を聴いたり作ったりするのはヒトです。一見バラバラな世界中の音楽に、もし共通点が見つかったとしたら?それはきっと、ヒトの脳がそのような情報を扱うのに長けているからです。

例えば、時計の針がチクタクと聞こえるのは、私たちの脳が自動的に音情報をグループ化するから。でなければ、時計はチクチクと聞こえるはずです。チクタクと聴くことで、効果的に情報をまとめているのです。世界の音楽がビートを2分割・3分割するのもこれに関連していると考えられます。

音階のステップの幅が違うのは、そうすることでメロディのピッチ構造がよりユニークになって覚えやすいから。1オクターブを7音以下の音階に区切るのも、7音以上に細かく分けてしまうと音を覚えて区別するのが難しくなるから。

世界の音楽の共通点から、ヒトの脳が音楽を楽しむカラクリが見えてくる。そんな素敵な認知科学研究のご紹介でした。

よりくわしい情報

Savage, P. E., Brown, S., Sakai, E., & Currie, T. E. (2015). Statistical universals reveal the structures and functions of human music. Proceedings of the National Academy of Sciences, 112(29), 8987-8992.


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