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「里見町」と加賀友禅とアートと

今回は、里見町を歩きます。
里見町は、金沢城から近い場所だったので、江戸時代には武士の住むエリアでした。

現在では、金沢といえば、の金沢21世紀美術館の近くにあたります。

金沢市立玉川図書館蔵
金沢城下大絵図(加筆)
金沢21世紀美術館からの景色 4月撮影

美術館の中から見ると、まっすぐ奥のあたりです。

進んでいくと、2020年にできた新しい金沢市役所第二庁舎があります。

金沢市役所第二庁舎

この右手の細い道をいくと、奥に瓦屋根の家が並んでいるのが見えてきます。その辺りが里見町です。

道を抜けると、鞍月(くらつき)用水が流れています。

蔵の残る不思議な駐車場

この用水沿いも、油を製造するための水車があった油車という地名があったり、


おもしろいですが今回は橋を渡り、里見町へ直行です。

右手に、赤いのれんの町家があります。

暖簾を見ると、「茜や」とあります。
里見町の名前の由来は、住んでいた武士の里見七左衛門から来ています。

金沢市立玉川図書館蔵
金沢城下大絵図(加筆)

そして、里見氏の居宅の所付には、「竪町茜屋小路」と書いていたとあり、ご縁を感じて訪問です。

茜やアーカイブギャラリー

中に入ると、加賀友禅の工程がわかりやすく展示されています。
加賀友禅を見て、聞いて、体験できるお店です。

実際に作業されていたことの分かる
長細いギャラリー

創業は明治時代の半ばで、記録が残っているのが明治38年という老舗です。この建物も、明治時代のものです。
奥まで掛かっている反物は、長いけどこれで着物一着分です。

展示を見ていきます。
友禅は、下絵を描いて、はみ出さないよう糊を置いてから色を塗ります。
そして、地色を塗る前には色を塗った部分に糊を置いて木の粉をまぶします。

右の茶色い部分が糊が置かれたところ

糊を流すと、糊の部分には色が残らないので、白い線が模様のラインになります。

展示されていたのれんの一部

加賀友禅の特徴は、華やかな京友禅と比べて、自然を写実した落ち着いた柄と色合いです。
この柄でも、葉っぱに虫喰いまで描かれていて、写実的なのがわかります。

これだという色を作るには、鍛錬が必要で、自分の思うような色を出すのに丸一日かける作家さんもいるそうです。

色合い調整見本

道具も工芸品のようできれいです。

色を塗るハケや糊を置く筒

ふと見ると、展示台がタンスです。

上に蝶つがいタイプ

聞いてみると、着物用の桐箪笥を利用しているといいます。
箪笥は、3段を重ねて使えるようになっていて、これは上に蝶つがいがついていますが、他のものを見ると下にあるものもあります。

下に蝶つがいタイプ

1番上にのせる部分です。
加賀友禅の展示で、着物に関わる箪笥が使われているのはなんだかいいなぁと思いました。

先に見た色見本のような巾着のサンプルがあり、わたしもそれに挑戦です。

友禅五彩(藍、臙脂、黄土、草、古代紫)を基本として、色を調整します。

サンプルはグレーがかったいい色があり、それを目指しました。でも、なかなかうまくいかずカラフルに。

ぼかしも、もっとぼかしたいと後で水を追加したら、滲んでしまい、色だけでも職人さんの技を感じる結果となりました。
本格的に手描き友禅体験もあるので、いつかそちらでやり直しましょう。

また展示に戻り、最後の糊をおとす工程の友禅流しに川で流している写真がありました。

今でも、川で友禅流しをすることはあるんですかと聞くと、残念ながら着物ではまずないそうです。

昭和の中頃まですぐそこの鞍月用水で友禅の糊を流していて、まわりにも染め物屋さんがたくさんありました。
鞍月用水は、さっき通ってきたところです。

鞍月用水

そう思うと、用水が貴重なものに感じられてきます。

明治から昭和までの染め物屋さんというのは、特別なものではなく、着物が普段着なので、普通の洋服屋さんの感覚でした。
友禅というよりは、藍染のように布全体を染めるものが主流で、色の褪せてきた着物の染め直しなども多かったと言います。

江戸時代に友禅の技法が確立されるまでは、加賀ではお国染という梅染や茜染めが作られていました。
梅染は、その後もこの辺りでされていて、兼六園の梅で染めていたと聞くと、今もあれば希少貴重な価値が!と俗に思ってしましました。

そして、茜染めの名残で、少し離れたところには、「あかねや橋」があります。 
ここには江戸時代から、橋がかかっていました。

いよいよ里見町の街並みを歩きましょう。

里見町歩き

あかねや橋と反対側には、おかち橋があります。

ここから、里見町へ向かうと壁が続いて情緒ある景色が見られます。

江戸時代の武家屋敷を思わせるいい町家が並びます。

少し行くと右手に、立派な町家とその前に里見町の石柱があります。ちょうどこの辺りが、町名の由来となった里見七左衛門の屋敷があったところです。

このあたり、雪の時期にも風情ありです。

茜やへと続く小さな道を挟んで、この隣には伝統的建造物があります。

里見町は、江戸時代の雰囲気が残っているものの江戸時代の建物はあまりないのですが、この建物は本当に江戸時代からのものです。

武家屋敷の長屋門です。
下の石は、地元の戸室石(とむろいし)で、亀甲の形になっています。

手前の部分が長屋門

赤い加賀友禅ののれんがかかっています。ここは奥田染色さんで、茜やアーカイブギャラリーの大元の染色屋さんです。

ここで振り返ると、いい景色には違いありませんが、現代なのでローソンも看板も。

ローソンの看板のビル

入っていいのか躊躇う入口

突き抜けて行くと、江戸時代からの商業エリア竪町ストリートへ出ます。里見町とは打って変わって、現代的空間です。

奥には、街中の現代アート美術館、KAMUも見えます。

里見町に戻り、進んでいきます。
突き当たりに、レトロなビルがあります。

里見町アパートメントとアート

昨年秋に金沢21世紀工芸祭があり、その時には展示会場の一つにもなっていました。

中も、扉の装飾や石の使い方がおもしろい建物です。

改装途中で、壁がむき出しのところに映像作品が流れていて、かっこいいアートでした。

窓からは、里見町の屋根瓦が見え、虹まで見られてこれもアートのようでした。

1階には、galleria PONTEがあります。
もとは犀川の近くにあり、今年の1月にこちらへ移転してきました。

galleria PONTE

今回は、「空に映る 舟と僕」という能登出身の作家さんの絵画展です。

シンプルな展示空間

日本海の海は、濃紺で暗いイメージを持っていたので、明るい色に驚きました。
油絵なのに、色が重ねられていても透明感ある心落ち着く作品でした。
この展示は、5月29日までです。

ギャラリーでふと上を見ると、以前の構造材がそのままです。

きれいに白く塗ってしまうこともできるけれど、あえて残されています。
新しく作ったコンクリートをデザインとして見せるのでなく、本当にそこにあるものが見えているのは場所の個性があって素敵だなぁと思いました。

里見町アパートメントを出ると、隣には現代から江戸へ一気に引き戻されるような町家です。

改装中の町家

ゲストハウスになり、さらにその奥も新しく飲食店になると言っていたので、予定金沢へ来て、里見町の町家で過ごすというのも楽しそうです。

ここをさらに進むと、先の竪町通りに突き当たり、左に曲がると加賀友禅のお店「ゑり華」さんがあります。

2階には、「加賀お国染ミュージアム」が。
今度、加賀友禅とお国染についても見てみましょう。

参考
「石川県の地名」

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