(54)服飾デザイナーFrederic Mangin(フレデリック・マンガン)さん との出会い
パリ8区、シャンゼリゼ大通りを南西に曲がったアヴェニュー・モンテーニュ。
いわゆる名だたるハイ・ブランド通りで、高級ブティックが軒を連ねています。
Dior隣の建屋上層階にアトリエを構えるFrederic(フレデリック)は以前にこのブログでも紹介した
ハーブ・マイスターのニコラを通じて知り合いました。
makipatricia.blog.fc2.com/blog-entry-39.html
「こだわりの面白いバッグを作っている人がいるから会ってみませんか?」
と繋いでくれたのです。
商材探しは、常に課題です。
手仕事の作品、
作家が思いを込めて作っているもの、
を探している私にとって、
信頼できる人からの紹介は、とても有難いチャンスです。
作品のみならず、服飾デザイナーと会話できるのは初めてでしたし、
出張前から楽しみでした。
彼の布製オリジナル・バッグは
型紙は同じものを使っても、
一つ一つ異なる生地とポイントになるボタンを使い、
地模様にあわせて刺繡を施したり、
リボンを足したり、
文字通りピエス・ユニーク(一点もの)です。
個性が強いので自分が扱えるか正直迷いましたが、
彼と仕事がしてみたい、と思い、
まずは数点から様子をみることにしました。
彼の専門は本来服飾で、バッグはどちらかというと、
作家活動の一環という位置づけです。
お得意様の一人、ベルギー王室のレア王女からのオファーで
ユニークな布製バッグを作ったのが始まりでした。
服飾の方の顧客は
他にハリウッド女優のミレーユ・ダルク他、有名どころも名を連ねています。
【写真は、フレッドも出席したベルサイユ宮殿で開催された癌撲滅のためのイベント】
その彼が
ファッションの世界に疎い私と仕事をしてくれているのは
考えてみると不思議な気もします。
なによりニコラの紹介だということが大きかったと思います。
フレッドにとって、「発する言葉」を意識すること、
起きたことの意味とそこにある学びと向き合うことが
大切なのだそうです。
もちろん、仕事上の関係ではあるのですが、
同世代であり、奇遇にも共通の知り合いがいることがわかったり、
ちょうどよい距離感で会話がができるラッキーな出会いでした。
彼のアトリエの壁に、
そのポジティブ思考の根幹ともうかがえる言葉やフレーズがアトランダムに書いてある面があります。
まさに「アーティストのアトリエ」という感じでした。
残念ながら、その面自体の写真はないのですが、
以下の写真はデスク脇のピンナップの貼ってある壁面です。
私が彼と初めて会った直前、
ビルの配管の損傷でアトリエの床が水浸しになってしまうというトラブルが起きました。
当然、仕事に少なからず影響し、
注文も納期を待ってもらうような事態になったのですが、
「とにもかくにも、大切な生地は救われた。
偶然にも、同時期、仕事も人間関係も変化が起きたけど、
水に流されて必要でないものは去り、
必要なものは残ったと考えようと思ったんだ」
と、話してくれました。
今のコロナ禍で、渡仏が叶わない私に代わって
タイミングが合えば、リア・スタンのリモート買付を
手伝ってくれることがあります。
公私ともに多忙な彼が力を貸してくれるのも
こうした人柄によるところが大きいと
感謝しています。
彼も服飾関係に従事する家族で育ちながらも
別の道を選び、27歳でこの世界に転身した経歴を持つ人物です。
またその話も遠からずできたら、と思っています。