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小声コラム#26 これが僕の城
駅徒歩1分家賃月8万1DK これが僕の城。
特急が駅を通過するとき、地震の初期微動と同じ揺れ方をする、これが僕の城。
引っ越して2年間は毎日会社に行って早朝から深夜まで働いていたので、ほぼ寝るだった城。
在宅になって初めてこの城には何もないことを知る。(最低限の家電はある。)
床に直置きしたマットレスのベッド、PS4の空き箱のテレビ台、段ボールで作られたサイドテーブル、段ボールで作られたダイニングテーブル、段ボールで作られた本棚。これが僕の城だった。
これはさすがにと思い、家具や棚やテーブルを買った。高価なモノにこだわりはない。安く済むならその方がいいと思うくらいには少しケチなところがある。最優先はしっくりくること。
天然木の檜の板をネジで留めただけの長方形の棚3つヒビあり、アラベスク模様のウソつきの絨毯、外に出ることのないアウトドア用のガーデンチェア。
どれもどこか粗雑で欠落のあるモノばかり。
備え付けの照明は暖色のLEDランプで、南の国でよくあるファンがついている。気に入ってるけど、一番暗くしても明るいので点灯することはなくなった。代わりにランタンみたいな充電式のランプと、ニトリにありそうな間接照明に使うであろうテーブルランプをちゃんと間接照明にして使っている。
おかげで落ち着く城になった。
誰にも干渉されずに組み立てた城。
どっかのインテリア紹介サイトに掲載されるんじゃないの?と思ったりする城。
Casa BRUTUSを読んで、そんなわけなかった。
東京で暮らすようになって4年が経つ
たった4年かな。親の手を借りることなく1人で暮らしてる。
知らないうちに社会の歯車やって、
稼いだと思える筈もないお金をもらって、
子孫になるつもりで生まれる自分のDNA記憶装置をトイレに流し続けて、
呑気にときどきもう終わりにしたいとか思いながら、
ひとり、生活してる。
取り繕った家具に囲まれて、好きなものを好きなフリして、数えるとキリがないほどの抜け毛が毎日落ちて、ため息で濁った空気は換気扇から出ていくことなく、迎えた朝にはなかったことになっている(とは限らない。)
これが僕の城。
たった4年の月日が流れて、意識の中から消え落ちた毎日すらも全部、実は刻み込まれている
#26 これが僕の城