アフターサン/ aftersun (と、 How To Have Sex も少し)

2022年 監督:シャーロット・ウェルズ
しんどい映画だった。見ている途中は不思議にそうでもないのだけれど、見終わった後にドっとくる。すべてが他の可能性を閉じていて、読み違いをさせないよう入念に作られた作品。人の顔の判別能力がとても低いせいと、創作を生業としている者のサガか、全く違うお話を脳内で作り上げてしまうこともままある私でも、最後の扉がどこに繋がっているのかがちょっと俄かにはわからなかった以外(ガトウィック空港の離陸ロビーってあんなだったっけ…?と余計な方向に考えてしまったのが間違いのもと)、答えのないものは何もなかった。(ただしわかりやすく描かれているわけでもないので一つずつ気配を拾い上げ、繋げていく感じ。)

若い父を演ずるポール・メスカル、彼がブレイクしたドラマ『ノーマルピープル』もそういえば途中でかなりしんどくなった。しんどい役専門俳優として今後も歩むのだろうか。 All of Us Strangers (2023年 邦題「異人たち」山田太一の原作を現代のロンドンを舞台に翻案。アンドリュー・スコット、ポール・メスカル主演) も大層評判がいいが、やはりしんどそうでまだ観ていない。

親子の泊まっているホテルがイギリス人観光客ばかりで、90年代イギリスの家庭はトルコにホリデーに行くのが定番だったの?(若者のイビサみたいな?)というのが気になって誰かに聞こうと思ってそのまま忘れて今に至る。あまりトルコっぽい風景はなかったけど(絨毯屋に行って小さなグラスに入ったチャイを出されているところを見るまでトルコだと気づかなかった)、イギリス人観光客がパッケージホリデーのホテルに滞在しているとああいう感じなのだろう、とナショナルステレオタイプで括ってしまうのもなんだけど、それがまた郷愁を誘う。同じくBAFTAで賞を分け合った How To Have Sex (2023年 監督:モーリー・マニング・ウォーカー) も物悲しかった。イギリス映画の中のホリデーは大体物悲しい。
周りの10代後半〜20代前半くらいの若い大人たちが11歳の主人公に優しくてほっとした。★★★★☆

『落下の解剖学』を星4つにしたので、その基準から考えるとこれも4つかな、としましたが、5段階で表すのって結構難しいですね。 8/10のような表記の方がいいのかも。ということで 8/10。『落下の解剖学』も 8/10。(じゃあ同じじゃん。というところですが、今後 9/10 が出た時のために)
女性の監督を選んで観ているわけじゃないのに、この2作も前回取り上げた『落下の解剖学』も期せずして女性監督でした。


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