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#89 サンタクロースに会いに行く
※この文章は2013年〜2015年の770日間の旅の記憶を綴ったものです
フィンランドのロバニエミまで足を伸ばした最大の目的はオーロラを見ることだったけれど、そこまで行ったからにはサンタクロース村を外すわけにはいかない。
クリスマスも間近に迫った12月半ば。
三十路をとうに過ぎた一人旅の女がそんな所に行っていいものか…という迷いは一瞬で打ち消して、そう簡単には来られない北極圏のサンタクロースが住む村に、往復約10km歩いて訪ねて行った。
ちなみにツアーなどで行く場合は専用のバスが用意されるだろうし、個人旅行者でもロバニエミの街の中心から定期的に出ている村行きのバスに乗るのが普通。ところが街から約7km離れた所にあるコテージに宿をとったわたしは、オーナーから「サンタクロース村までだいたい5kmくらい」と聞くと、街まで出るほうが遠回りになってしまうので、当然のように歩く道をとった(残念ながらこのとっても素敵なコテージは、バスの通り道からもずいぶん離れていた)。
北極圏の冬の日照時間は本当に短くて、朝は10時くらいにようやく明るくなり始め、午後2時頃にはもう辺りは暗くなってくる。そんな中にいると、太陽に照らされた時間がとても貴重なものに思えてきて、陽の光を慈しみながら、雪がシンシンと降る道を、両脇にたたずむ針葉樹林を見上げつつ歩くのはなかなか清々しいものだった。
たどり着いた村は、まぁ予想通りツーリスティックな所で、レストランやらお土産屋が沢山立ち並ぶ。それを横目で見つつ、真っ先に行ったのがサンタクロース・オフィス。ここで待望のサンタさんと面会できるのだ。
またしても予想通り、並んでいるのは家族連れか、カップルか、女の子のグループ。ザッと見た限り、女一人はわたし以外見当たらなかい。でもここまで来たからには、そんなことで躊躇する訳にはいかない。
折しも、わたしの前には日本人の女の子二人組が並んでいた(この時期、北極圏ですら驚くほどアジア人の旅行者を多く見かけた)。列が進むにつれて、彼女達はお互いのスマホを鏡代わりに「もっとちゃんとメイクしてくれば良かった~」などと可愛らしく言いながら、髪型を整えたりし始めた。うん。そうそう。そういうノリだよね、ここに来るのに必要なのは。
サンタクロースの部屋の前まで来ると「サンタのアシスタント」と称する小人のような格好をした妖精? がいて「Where are you from?」と尋ね、それぞれの国の言葉で「こんにちは」を言いながら笑顔を振りまいていた。たまたま前の女の子二人組とわたしが続いて日本人だったものだから、わたしが「from Japan」と言うと、
「Are you together?」と前の子達を指し示す。
「No」と答えると、
「Are you alone?」
「Yes…」
「Are you alone??」
「Yes!!」(二回も答えさせないでよっ! と心の中でド突くわたし…)
そんなこんなで、ようやくサンタさんの部屋に入る順番がきた。
本物のサンタさんは「一人で来たの?」なんて不躾なことは聞いてこないのが素敵。握手をして、隣に座って、肩を抱かれて一緒に写真を撮った。
この時わたしが履いていたジーンズは、旅の前半からずっと愛用しているものだったのだけど、シベリア鉄道に乗る前に滞在していた北京の大通りですっ転んで以来、膝がパックリと裂けてしまっていた。
サンタさん:「それはファッションかい?」
わたし:「いいえ、転んで破けちゃいました…」
サンタさん:「いやいや、ファッションてことにしておきなさい! (ウインク)」
わたし:「さすがサンタさん! わかっていらっしゃる!!」(と英語では言えなかったので、これも心の中で)
わたし達の間では、こんな素敵な会話が繰り広げられたのだった。
ちなみに、この部屋に入ってからのサンタさんとの会話は全て録画されていて、部屋を出た後すぐに写真購入のカウンターが待っている。数枚写してくれた写真の中から好きな一枚を選んで現像してもらうか、動画と全ての写真をダウンロードできるURLを購入するか、もちろん何も買わなくてok という完成されたシステム。
記念に写真を一枚購入したわたしは、サンタクロース郵便局に向かい、日本の家族や友人達にクリスマスカードを書いた。ここから出すと、サンタクロース村の特別スタンプが消印として押されるのだ。みんな喜んでくれるかなぁ~と想像しながら出したのだけど、その消印が薄すぎて、誰も特別スタンプに気づいた人はいなかった、というオチ。まぁ、喜んでくれただけで十分だけど。
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