あるゲームについて話そうとしたら別のゲームの思い出話になった(前編)
こんにちは、Makaru.G(まかる・じー)です。
このたび、私が個人的に大好きなデジタルカードゲームのひとつである「マーベルスナップ」が、サービス開始からちょうど1周年を迎えました。「サービスが終了すると、以降は二度と遊べなくなる」作品も多数ある中、1周年という記念日を迎えられたのは、プレイヤーの立場から見ても喜ばしい事だと思います。おめでとうございます。
「マーベルスナップ」は1対1でオンライン対戦ができるゲームですが、その最大の特徴は基本ルールの根幹にあります。具体的には「両方のプレイヤーは、決められたタイミングで同時に、手札からカードを場に置く」というルールを採用していることです。既存のデジタルカードゲームの多くは「自分の手番と、相手の手番を、交互に繰り返す」伝統的なルールを採用しているものが多く、この一点だけでも「マーベルスナップ」はかなり異質な存在といえるでしょう。
そして私は、この異質な基本ルールを採用した別のデジタルカードゲームを、過去に2作品、プレイしたことがあります。今回は、そのうちのひとつ「ピリオドゼロ」について、少し昔話をしようかと思います。
「ピリオドゼロ」の始まり
【ピリオドゼロ】
メーカー:タイトー
サービス開始:2016年11月30日
サービス終了:2017年5月31日
「ピリオドゼロ」は、個人的にとても好きで、今でも鮮明に思い出すことのできる作品のひとつです。
実はこのゲーム、完全新作のスマートフォンアプリではなく、過去にガラケーで配信されていた同名作品をベースに作り直され、iPhone版/Android版として新規にサービスが開始されました。
特筆すべきは極限まで単純化されたルール。プレイヤーの用意するデッキは、1試合中に何回でも使える通常カード4枚と、1試合中に1回だけ使えるスペシャル(SP)カード1枚。わずか5枚のデッキで戦います。
通常カードには固有スキル以外に「ライフ」「攻撃力」「速度」などが設定されており、4枚の通常カードのライフ合計値がプレイヤーのライフとなります。このプレイヤーのライフを、相手より先に削り切った側の勝利です。
各ターン、両方のプレイヤーは4枚の通常カードの中から「前衛」「後衛」を1枚ずつ選択し、場に出します。
出されたカードが公開されるタイミングは同時ですが、公開後に「速度判定」があり、場に出た2枚の速度合計値が大きいほど、相手より先にスキルが発動しやすくなります。ただし、中には「後出しで発動したほうが有利なスキル」があったり、「前衛時のみ発動するスキル/後衛時のみ発動するスキル」があったりします。
また、各プレイヤーは1試合中に1回だけ、前述のSPカードを使用できます。ちなみに当時、圧倒的な使用率を誇っていたSPカードは、相手に与えるダメージに規格外の倍率をかける《絶倒の剣》と、自分が受けるダメージを最大で9割以上カットする《戦女神の盾》でした。相手が《剣》を使用するターンを読み、同じターンに自分の《盾》を合わせられれば自分の勝ち、合わせられなかったら相手の勝ち。そんな、原始的ゆえに奥の深い読み合いは、「ピリオドゼロ」を語る上では外せない要素です。
「ピリオドゼロ」の致命的欠陥
しかし残念ながら、前述した「原始的ゆえに奥の深い読み合い」を根本からスポイルする仕様が、ひとつだけ「ピリオドゼロ」には存在していました。それは、各ターンの最後、双方が相手への攻撃ルーレットを回し、そのルーレットの抽選結果によって「与えるダメージが2倍以上になる」というものです。
具体的には、「ルーレットの抽選回数を増やすスキル」が多数ある一方で、「ルーレットでアタリが出る確率を操作するスキル」が皆無であることが問題でした。抽選回数を最大(10回)まで貯めても、抽選結果がすべてハズレならダメージはわずかに増える程度。逆に抽選回数が2〜3回と少なくても、そのうち1回アタリが出るだけで、相手へ与えるダメージは2倍になってしまいます。
これはさすがに「運が良かった/運が悪かった」で済ませられる範囲を逸脱していました。せめて「抽選回数が最大まで貯まったらダメージ2倍確定」などの救済措置があれば、一喜一憂を通り越して理不尽さを感じる事態も減らせたのではないか、と考えると非常に残念です。
「ピリオドゼロ」の終わり
良く言えば、手軽に楽しめて逆転性も高いゲーム。悪く言えば、実力の近いプレイヤーどうしの対決ではルーレットの「運」で勝敗が決まってしまうゲーム。それが、iPhone版/Android版「ピリオドゼロ」の本質でした。サービス終了直前の環境では、相手プレイヤーが攻撃をおこなうたびに相手にスリップダメージを与える《スフィンクス》のスキル効果を蓄積させ、あとは防御に徹し、ルーレットの逆転性を無視して勝つデッキが流行したほどです。
それでも、ルーレット以外の要素であれば、デッキ構築やプレイングスキルによって対抗あるいは挽回できる事も多く、実際、サービス終了直前に開催された「ピリオドゼロ感謝杯」では、多種多様なデッキが参戦して大いに盛り上がりました。開発スタッフもプレイヤーの熱意に全力で応え、ディレクターみずから1日あたり100試合を軽く超える対人戦をおこなうなど、最後の最後までプレイヤーを楽しませてくれました。
世の中には、サービス終了すると、以降は二度と遊べなくなるゲームというものが存在します。「ピリオドゼロ」もそのうちのひとつで、個人的には、わずか半年でサービス終了するには非常にもったいない作品であると思っています。
しかし、このゲームの「両方のプレイヤーが、同時にカードを場に置く」という基本ルールに慣れていたおかげで、昨年10月にサービス開始した「マーベルスナップ」の基本ルールは、とても楽に理解する事ができました。その意味でも、「ピリオドゼロ」というゲームには非常に感謝しています。素晴らしい作品を世に送り出してくださって、本当にありがとうございました。