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自社サービスが求める事業共感と、採用の壁 #プロヒス2024

去る11/30、YOUTRUST主催のプロダクトヒストリーカンファレンス2024に参加してきました。

このカンファレンスはYOUTRUSTによるとテックカンファレンスの位置づけです。実際に会場を訪問とした印象としては、技術的なハウツーよりもプロダクトのグロースを軸とした内容に重きが置かれていた印象です。

私はマネジメントに関するセッションを中心に参加しましたが、プロダクト成長に伴う開発組織の課題やその解決策、メンバーへの訴求の仕方などが議論されていました。

一方で参加企業を見ても自社でプロダクトを持たないクライアントワーク企業にとっては縁遠い内容でしたし、参加者も少ない印象でした。

「プロダクトヒストリーカンファレンス2024」は、プロダクトやサービス開発の軌跡から学びを深める、テックカンファレンスです。

今回は、ITエンジニアに求められるプロダクト志向について整理していきます。

高まる採用企業のプロダクト志向熱

このnoteでも度々話題にしているプロダクト志向ですが、2024年冬現在、プロダクトエンジニアの求人も多く見かけるようになり、採用企業の注目度が非常に高まっていることを感じます。

前回、スペシャリストに求められるものの変化について述べた際に「それはスタッフエンジニアではないか」というコメントを頂きました。スタッフエンジニアは上位役職者ですが、現在はメンバー層にもプロダクト志向が求められている点に注意が必要です。

そもそもプロダクト志向とは何かを整理すると、以下のような段階が挙げられます。それぞれについて具体的に見ていきます。

プロダクト志向と採用の壁

第一段階:利他性

まずは利他性です。

2024年現在、条件の良い企業への転職を実現するためには、自社サービス、クライアントワーク問わず利他性を意識することが重要になっています。

自身の待遇や働き方を優先する姿勢は、プロダクト志向とは相反します。

クライアントワーク(コンサル・SIer・SES)においても利他性は重要視されており、待遇を第一に考える候補者は、良い企業では採用されにくく、場合によっては待遇の悪い企業にしか入れないことがあります。

第二段階:当該業界への興味関心

自社サービス特有の要素として、求人を開いているサービスが展開する事業ドメインへの興味が挙げられます。

建築、医療、人材、電力、金融、不動産、環境保全、地域活性化など、業界は多岐にわたります。

エンジニアバブル期にはこうした業界への興味は選考で重視されることが少なかったですが、現在は加点要素として再評価されています。

第三段階:当該領域への興味関心

業界の中でも自社が展開する特定の領域に対する興味が求められます。

例えば、医療業界であっても遠隔医療や電子カルテ、患者体験、人材といった多岐にわたる分野があります。選考が進むにつれて、こうした領域に対する興味を持つ候補者が評価される傾向にあります。

第四段階:自社の当該事業への興味関心

IT革命から24年、スタートアップ元年やDXブームもあり、類似サービスが乱立しています。その中で「なぜこの事業なのか?」という志望理由を問う企業が増加しています。

エンジニアバブル期には志望理由を聞かない企業が多かったものの、現在の厳選採用では再び重視されています。

第五段階:当該事業への参加(入社)

事業への興味だけでは合格できません。スキルマッチやカルチャーマッチ、適性検査、リファレンスチェックなど、多くの要素が採用の鍵となります。

第六段階:当該事業への貢献(入社後活躍)

入社後、オンボーディングを経てようやく貢献できるようになります。ただし、育成や配置に失敗する場合もあり、必ずしも活躍できるわけではありません。

採用企業で高まるプロダクト志向熱と「そんな人、転職市場に居ませんよ?」の壁

プロダクト志向を求めること自体はあるべき姿ではありますが、そこには前述したような深い階層とハードルが存在します。

ある程度の割切りと、それを戦略として設けないと『誰も候補者が居ない』と嘆く企業もあります。正直なところ、求め過ぎで理解しにくいところもあるほどです。

割り切りとその後の戦略として、具体的には下記のようなものが考えられます。

新卒採用

昔からある観点です。真っ白な状態から自社の求める人物像を育てるというスタンスです。

ただベースが優秀な層を採用しようとすると熾烈な採用合戦に巻き込まれますので予算、工数、戦略のいずれもが高度な水準で求められます。

入社後にプロダクト志向を育成する

中途採用では、「転職市場にこのような人材が存在するのか?」という課題がしばしば見られます。図内Cのように利他性からスタートし、育成計画を立てることが現実的な対応です。利他性だけでも十分高いハードルです。

現実的なリスキリング

ある有力な地方銀行のマネージャーさんとお話をしたときのことです。その銀行さんではリスキリングに力を入れており、かつ成果が出そうな雰囲気があるというお話でした。その方によると、下記の要素が芽が出るポイントのようだということです。

  • 自社に対する強い思い入れ(帰属意識)

  • 長年業務に携わったことによる高度な業務理解

  • 地方の有力企業であるが故の優秀層であること(地頭が良く、キャッチアップが早い)

私自身はリスキリングには肯定的であるものの、ブームのようなところはありファッションのようなリスキリングや、人材業界による体の良いお金稼ぎな側面が気になっていましたが、いくつかの要素が揃うと確からしい着地ができそうだと感じました。

元々プロダクト志向という点において現場担当者は極まっていることが期待されるため、他の観点がクリアできれば有効な選択肢ではないかと考えています。該当する人材が居ないか、社内のタレントを一度洗ってみましょう。

外注利用による割り切り

有名メガベンチャーでは、外注利用の兆しも見られます。待遇やリモートワーク環境による競争が激化し、正社員のコストが増加しているためです。

また、高還元SESの台頭により、無理に自社サービスへの転職を選ばず、待遇を維持する流れが見られます。このような背景から、SESやSIerを活用する動きは広がりを見せると予想されます。


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久松剛
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