ただぼんやりと
小さな頃から、ただぼんやりと過ごす事が好きでありました。
身体の力を抜いて、ただ横になっている。
畳の微かに残る青い匂い。
お部屋から入ってくる、静かな風。
遠くから聞こえる、自動車の砂利を走る音。
カチャカチャと洗い物をして下さる母の音。
キーキーと甲高い、オナガドリの声。
無音とは程遠い世界の中で、ぼんやり過ごす時、
心はただ静かで、在るを感じる事が好きでありました。
しかし、ぼんやり過ごす時間があまりに長くなりますと、
いつしか、私の身体(心)はふわふわと揺らめいて
のぼっているのか、しずんでいるのか、わからなくなる事がありました。
次第に、呼吸も口の中から、ふわふわ透明の煙の様な物が出て、
最初は息を吸い込むと戻っていた透明な煙も、吸っても吐いても、口からふわふわ出て行く様に感じました。
ああ、これは夢のはざまかしらと思った物です。
こんな遊びをして過ごしていたわけでありますが、
月日を重ねる度に、大人になって行くと同時に
ただぼんやり過ごす事が減ってきたように思います。
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