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【翻訳】 ANNE OF GREEN GABLES 『赤毛のアン』 #9

 レイチェル夫人は、マシューが孤児院の子を連れて帰ってくるまで居座りたかった。しかし、マシューが到着するまでは、2時間を優に超えそうだったので、ロバート・ベルの家へ寄って、このニュースを知らせることにした。こりゃあ、今までにないくらいの大騒ぎになるだろうね、とレイチェル夫人は思った。そして、夫人はその大騒ぎを煽り立てることをこよなく愛していた。
 レイチェル夫人が帰ると、マリラは少しだけほっとした。レイチェル夫人のネガティブな話を長々と聞いているうちに、疑いや恐れが蘇ってきていたからだ。
「こんな前代未聞なこと、今後も二度と起きやしないだろうね!」
 リンド夫人は家を離れて小道に入ると、思わずそう声に出して言った。
「夢を見ているんじゃないだろうね、本当に。それに、家に来る子もかわいそうったらありゃしないね。マシューとマリラのやつは子供のことを何一つわかっちゃいないんだから。あの二人は、子供がおじいさんよりも賢くてしっかりしているとでも踏んでいるんだろうね。まあ、その子におじいさんがいるんならだけども、それもどうかわからないからね。それにしても、グリーンゲイブルズに子供がいるだなんて、どうも変だねえ。今まであそこには子供なんて一人もいなかったからね。今の家を建てた時には、マシューもマリラも大人になっていたし。まあ、あの二人が子供だった時があればの話だがね、今の見た目からは想像もできないから。私なら、何がなんでも決してその子供にはなりたくないね。その子には同情するよ、まったく」
 レイチェル夫人は、野バラの茂みに向かって、心の内を吐き出した。しかし、まさにその時ブライト・リバー駅でじっと待っているその子を夫人が見たら、彼女の哀れみは、さらにどこまでも深くなることだろう。

第一章 おわり
第二章へつづく


最後まで読んでいただいてありがとうございました。
野バラ

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