【翻訳】 ANNE OF GREEN GABLES 『赤毛のアン』 #5
…
「うちは皆変わらずさ」
レイチェル夫人は言った。
「でもあなたのところはそうでもないんじゃないかって、心配なんだよ。今日マシューが出かけていったのを見かけたもんでね。お医者様のところにでも行っているのかい?」
マリラの唇は、思った通りだというようにピクッと動いた。マシューがどこかに出かけていくだなんていう奇妙な光景を見たら、このせんさく好きのご近所さんが黙っているはずがないと、マリラは見越していたのだ。
「あら、私も全く変わりなく元気よ。昨日はひどい頭痛だったがねえ」
マリラは言った。
「マシューなら、ブライト・リバーへ行ったのよ。私たち二人は、ノヴァスコシアの孤児院から、男の子を迎え入れることにしたの。その子が今夜、汽車に乗ってくるんですよ」
もしマリラが、マシューはオーストラリアからきたカンガルーを見に、ブライト・リバーに行ったとでも言えば、レイチェル夫人がこれほどまでびっくり仰天することもなかっただろう。彼女は実際に5秒間ほど唖然として固まった。マリラがレイチェル夫人をからかうだなんてことはまずないのに、そうであってもおかしくないと思うほどだった。
「本気で言っているわけじゃないでしょう、マリラ?」
口が聞けるようになって、レイチェル夫人はマリラを問い詰めた。
「本気で言っていますとも」
マリラは言った。その様子は、ノヴァスコシアの孤児院から男の子を引き取ることなど、今まで聞いたこともないような新しいことでもなんでもなく、アヴォンリーの農家がしっかりと決めた畑仕事の計画のうち、春に行う仕事の一部である、と言っているかのようだった。
つづく
最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
ノヴァスコシア州はここら辺。
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