見出し画像

【翻訳】 ANNE OF GREEN GABLES 『赤毛のアン』 #4

 レイチェル夫人は、ドアを閉めるより先に、テーブルの上に置いてある全てのものを、心の中でメモを取った。皿が3枚置いてある。それはつまり、マシューと一緒に家に来て、夕食を食べる誰かを、マリラが待ち構えているということだ。しかし、テーブルの上の料理はどれも毎日だすような料理で、何も特別ではなかった。それに、野リンゴの砂糖漬けと、ケーキが一つあるだけだ。つまり、マリラが待っている客は、何も特別なお客様というわけではなさそうだった。しかしそれじゃあ、マシューの白えりと栗毛の馬は何だったというのか?
 レイチェル夫人は、静かで、波風を立てなかったグリーンゲイブルズにはありえない、こんなに不可解な謎があるだなんて、目眩がする思いだった。

「こんばんは、レイチェル」
 マリラはきびきびと言った。
「本当に気持ちのいい晩ね。まあどうぞお座りになって。みなさん、お変わりはない?」

 マリラ・カスバートとレイチェル夫人は似ていないのにもかかわらず、いや、おそらく似ていないからこそ、二人の間には、友情としか呼びようのない何かが常に存在していた。

 マリラは背がひょろりと高く、骨張っているばかりでふっくらとしたところがなかった。髪の色は暗く、その中には白髪の線がいくつか伸びていた。いつも、マリラはその髪を、ぎゅっと1つにまとめ上げてお団子にして、針金のヘアピンを2本さして、がっちりと固定していた。
 彼女は、凝り固まった考え方をしていて、厳格に礼儀作法を守るような女性に見えたが、実際もその通りであった。しかし、めったに出ることはないけれど、どこかユーモアのセンスを漂わせる口元が、救いとなっていた。

つづく


最後まで読んでいただいて、ありがとうございました。
野リンゴの砂糖漬け。

画像1


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?