今日も流れ星が降り注ぐ 1,019 文字
20☓☓年、今日も夜空に無数の流れ星が降り注いでいる。
息を飲むような美しさだ。ただただ美しい。
5年前、アメリカ航空宇宙局(NASA)が巨大隕石の地球接近を公表した。発見された巨大隕石は、32億6000年前に地球に激突した直径50kmの巨大隕石をしのぐ大きさだった。地球にぶつかればほとんどの生物が死滅する壊滅的破壊をもたらすレベルの大きさだ。
その時点で地球との衝突確率は80%だった。
各国の科学者によって、核爆弾を打ち込むことでの巨大隕石の破壊、あわよくば軌道をずらす試みが検討されたが、現状の技術では、それは映画だけの絵空事だということが証明されただけだった。
全人類はなすすべもなく、固唾を飲んで巨大隕石の接近を約4年間静かに見守った。
人々は己が信ずる神に祈り、科学者達はより正確な軌道計算に明け暮れた。
各国当局が恐れた治安の乱れはほぼ起こらなかった。
世界の人々はありふれた日常を慈しみながら静かに過ごすことを選択した。
世界は平穏に最期の時を迎える準備を整えた。
そして、衝突予測日の38日前になり、巨大隕石の軌道が地球との衝突コースをわずかに40万キロほど外れていることが判明した。宇宙的に見れば誤差のようなものだ。
全人類は安堵し、それぞれの神に感謝し、誰もが喜びに涙した。
人類は生き延びた。
生きる喜びを知った。
生きていること自体が奇跡で、素晴らしいことなのだと。
もうお互いに争うことはやめよう。
誰もが心からそう思った。
・・・のは束の間だった。
巨大隕石はこともあろうに月に激突した。
最大直径80kmの巨大隕石は、直径3500kmの月の1/8を見事に粉砕し、自らも粉々散り散りになった。
夜空に浮かぶ満月が巨大隕石の激突で粉砕される様は圧巻だった。
その翌々日から無数の流れ星が地球に降り注ぐようになった。
夜空は息を飲む美しさだ。ただただ美しい。
だが・・・それは地獄だ。
地表には真っ赤に焼けた無数の隕石が時速300kmを超える速度で絶え間なく降り注ぎ、まるで絨毯爆撃を受けているようなあり様となった。
隕石は自動車ぐらいの大きさならまだ小さい方で、時には学校の校舎ぐらいの大きさのものまで落ちて来る。
街という街は破壊され尽くし、全てのインフラは消滅した。
地表はクレーターだらけだ。
富士山は削られ形を変えた。もはや美しい富士は存在しない。
果たして人類は生き延びることができるのだろうか。
未来はあるのだろうか。
もはや誰も神に祈ることをしなくなった。
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