ビジネスDD(事業計画分析の実務tips)


「対象会社の事業計画は本当に計画通り推移するのか?」という点は、巨額減損を避けたいバイサイドにとって気になる論点です。

事業計画によって定量化された将来収益はDCF法によって現在価値に割り引かれ、バリュエーションに反映されます。収益計画が実態以上であれば買収金額、のれん減損が大きくなります。そのようなリスクを回避する為に、今回は事業計画の分析、精緻化の実施のポイントをお伝えします。

①事業計画の前提・ロジックの確認

対象会社が事業計画策定に使っていた各種計算資料、販売計画、設備投資計画、人員計画を確認し、事業計画の数字がどのような構造とロジックで成り立ってるか把握します。本来は計算資料にExcelの関数が入力されていて計算ロジックが分かれば良いのですが、実際には数字のベタ張り、直接入力等も多々あるので、QAやインタビューで理解していきます。

②財務モデルの構築

事業計画の財務三表をExcelの財務モデルとして繋げ、計画上重要な項目をパラメーターに分解します。財務モデルをパラメーターと絡めて構築することで、パラメーターの変動に応じた事業計画のシミュレーションが可能になります。

例)売上の代表的な分解軸
・大口顧客別売上
・店舗数×店舗当たり売上
・顧客数×顧客当たり単価
・販売数量×販売単価

③シナリオの構築

マネジメントケース、ベースケース、リスクケースの3つのシナリオの世界観とパラメーター数値を決めていきます。ビジネスDDの結果を踏まえ、販売、原材料費、人件費など、EBITDAに影響が大きい数値が今後どのように変動するのか、「こういう世界ではパラメーターはこういう風に変動するはず」というシナリオを描きます。

④シナリオ別修正事業計画の構築

財務モデルが構築できていれば、シナリオ別のパラメーターを当てはめることで、シナリオ別の事業計画が即座に作成できます。これは、財務モデルが input、process、outputを関数で繋げていて、パラメーターのインプット情報が決まれば、アウトプットが自動的に作成できる仕組みになっているからです。

⑤アウトプットの作成

事業計画分析の結果をDD依頼者に伝えるために、マネジメントケースとベースケースとリスクケースをそれぞれ表形式、グラフ形式でどのように変わったか表現していきます。「マネジメントケースのEBITDAは●●だが、ビジネスDDの結果、主要パラメーターが●●という風に変動する見通しであるため、修正事業計画ではマネジメントケースと比較してEBITDAが●●減少する」という風に事業計画の変動結果と変動要因を伝えます。

●終わりに

ビジネスDDの目的を「事業計画の精緻化」とした場合、まさに事業計画分析のアウトプットこそバイサイドが求める価値に直結するものかと思います。各種分析から得られた結果を統合的に財務モデルに反映することが大切なことです。逆にパラメーターがうまく設定できないようであれば、各種分析の内容が事業計画修正に不十分なものとなるので、論点とタスクを見直す必要があります。

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