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キララ


マンガ、アニメ化希望


純粋な脚本形態ではなく
これで作業してます。


頭の中の絵を、絵として描き出す才能が有りません。

作品の舞台はスエーデンのストックホルムを下敷きにしています。
かつて、短い夏の季節に訪れた事が有ります。


作品を書くにあたり

ジェイムス・ジョイス「フィネガンズ・ウエイク」
アンドレ・ブルトン「ナジャ」
カズオ・イシグロ「充されざる者」
T.S.エリオット「荒地」
ジル・ドゥルーズ「マゾッホとサド」
バロウズ 

音楽
hide「ピンクスパイダー」
hide「BEAUTY&STUPID」
cocco 「樹海の糸」

石ノ森章太郎「ジュン」

ヒロインは
アイン・ランド「水源」のドミニク
機動戦士ガンダムー閃光のハサウェイー ギギ・アンダルシア

良子(妻)
サイボーグ009 フランソワーズ


をリスペクトしています。


まぁ、作品のバックグランドです。
すっ飛ばして頂いて大丈夫です。


主な登場人物

キララ    ヒロイン
カルロス   そのフィアンセ,   クライド(二役)
スザンヌ   カルロスの愛人, ボニー (二役)
小説家    私
その妻    良子
娘      エミ


ーガラスビンの中、宙吊りにされた全てのシビュラに捧ぐー


本編

作家の私は妻の良子を亡くし
一人で郊外の古い洋館に暮らしている。
一頃は名前の売れた小説家であったが
一人娘が嫁いでから先
一人身の気楽さで日々を過ごしていた。
最近ペンが走らず創作に意欲が出ない。

家の外ー
午後の日差しが海辺に眩しく
キラキラと反射し初夏の訪れを告げている。
心地よい日和に
私は久々に遠くの街へ小品を買いに出かけた。
街で路面電車に乗ったが
身に染みた作家の性で
自ずと車内を観察している。
あいにくと座席は埋まっていたが
さほど混んでもおらず
吊り革越しのガラス窓に映り込む
白い服の女、バッグを膝に置き
本を読んでいる。
あの娘を主人公に小説を書いてみるか?
職業、生い立ち、趣味とアレコレと想像する。
電車は緩いカーブを過ぎて
ゴトンと揺れ私は目を覚ました。
いつの間に座席に座り眠ったのか
辺りを見回すと
白い服の女はもう居ない。
欠伸を一つ、次の駅で降りた。
家に戻り書斎にむかう。
電車の中で思いついたアイデアを
原稿用紙のマスに書き出す。
コツコツと柱時計の音。
暫しの創作の後、食事はとらず
熱いシャワーを浴びて
その日はベッドに入った。

寝室 
深夜
「先生、私、女弁護士がいいな」
いやにはっきりと響いたその声に
思わず目が覚めた。
ああ、女弁護士か
それもありかと思いまた眠った。

台所(アイランドキッチン)
日差しが窓のカーテン越しに揺れ
私は目を覚ます。
遅い朝食を取ろうと
台所のドアを開けると
スリングチェアに
昨日の白い服の女が座っていた。
「誰だね、君は?」
「おはようございます、先生」
「何故、私の家にいる?」
「先生に呼ばれましたのよ」
「私は呼んだ覚えはないが」
「コーヒーが冷めますよ、お座りになったら」
「砂糖の代わりに柚子マーマレードでしたわね」
「どうして知ってる?一体、君は誰だ」
「フフフ」
「何がおかしい、君の名は?」
「だって、ここは先生の夢の中ですもの」
夢?
「私は先生の小説の主人公ですの」
「電車の中、お忘れです?」
「だから名前はまだ有りません、つけてください」
「・・・」
椅子に座った
「はい、どうぞ」
「ああ、ありがとう」
彼女から手渡された柚子マーマレードコーヒーを手に
「まだ、決めてない」
「もう、人を呼び出しておいてそれはないでしょう」
「すまん、名前の前に性格やら境遇など決めるものだから」
「そう適当につければイイってものでもない」
「話の内容に合わせて名前は考えたいんだ」
「しばらくは白い服の女のまま通そうと思ってる」
「私、白い服の女のままじゃ、嫌」
「良子」とっさに妻の名が出てしまった
「それ、先生の奥様の名前じゃ有りません?」
「あまり気がのらないわ」
私の夢なのに我儘だ
「どんな名前ならいい?」
「そうねぇ〜キララは?」
私は昨日の、海辺にざわめく陽光を思い浮かべた
「いいね」
「じゃ、今から私はキララね!」

都会のデパート
最近、物忘れが多くて困る。
万年筆を新調しようと街に出たのだ。
「もう少し太字のモノはないかな?」
店員「こちらなど如何でしょう?
イタリア、デルタ社の品でドルチェビータと申します」
オレンジのレジンがキラキラと反射し夏を思わせる。
試し書きをしてみると
ニブのタッチも私好みだ。
これで新しい小説を書こう。
「貰おうか」
店員「畏まりました。お包み致しますので少々お待ちを」
店員は奥へ消えた
「素敵な万年筆ですね、先生」
振り向くとキララが微笑んでいた
「!」
「君は生きているのか?」
「やだなぁ、お化けじゃないですよ、ちゃんと脚ありますよ、ほら」
キララはミニスカートからすらりと伸びた美脚でポーズをとる。
「私が先生に逢えるのは、夢の中だけですよ」
いつの間にかまた夢を見ているらしい。
「私も何か欲しいな」
「先生の小説の主人公ですもの、ご褒美に!」
「さぁ行きましょ!」
キララは私の腕を取り歩き出した。
「ちょっと待って、万年筆を」
「ポケットの中にありますよ」
「?」
見ると包装された箱がポケットからはみ出している。

HARRY WINSTON.店内
「このイヤリング、どうかしら?」
キララは付けてみせる。
店員「お嬢様にピッタリかと」
高級ホテルのプールサイドやパーティで映えそうだ
キララならさぞかし衆目を引くことだろう。
「そうだね、とてもよく似合ってる」
「じゃ、これくださーい」
店員「畏まりました、サインをお願い致します」
金額を見て驚いた!国産のセダンが1台買える。
彼女が耳元で囁く
「大丈夫ですよ、これは先生の夢の中だもの」


高級ホテルのプールサイド(夜)
イルミネーション
あちらこちらからキララに集まる視線
コルビュジエのソファーにくつろぐ2人
テーブルに冷えたジンジャエール
キララの前にはフルーツパフェ
私はフルーツパフェにのっているオレンジを見ていた。

回想ー
陽光がざわめく晴れた気持ちの良い日だった。
ナイチンゲールがさえずっている。
庭先に柚子の木が茂っている。
この地に引越して間もなく妻の良子が植えた。
毎年採れる沢山の柚子を使って
妻はマーマレードを作った。
「おーい、収穫手伝おうか?」
「いいのよ、あなた」
「それより召し上がってみて!」
妻がスプーンを差し出す
「貴方、マーマレードがお好きでしょ、柚子で試してみたの」
「うん、いける!」
「良かった、じゃ、いっぱい作るわね!」
私はコーヒーに柚子のマーマレードを入れて飲むのが習慣となった。

「ねぇ?先生、聞いてる?」
「あ、あぁ、悪い」
「私、弁護士をやめて検事じゃダメ?
女検事、政界の巨悪を暴く」
「素敵でしょ!」
「先生が考えて下さったフィアンセのカルロスと一緒に事務所を開くって案ですけど」
「それが?」
「最近、彼と上手くいってなくて、、私以外に女がいると思うの」
「そんな馬鹿な、彼は誠実な男で優秀な弁護士の設定だ」
「2人で法律事務所を設立し、難しい裁判に立ち向かっていくストーリーなんだ」
「キララを心から愛しているし、その証拠に君の指には大きなダイヤの婚約指輪がはまっているじゃないか」
キララ手を開き
「そお?私、先生から頂いたイヤリングの方が嬉しいわ」
「そういうことじゃなくて、私が創り出したキャラクターで私が言うのだから間違いない」
「思い過ごしかしら?」
「そうだ!」
「誤解がとけて良かったよ、朝になった、私は起きるよ」
「いってらっしゃい」

家の庭
妻が丹精込めて世話をしていた庭だが
彼女が亡くなってから足を踏み入れていない。
雑草が生い茂る。

娘のエミが生まれる前のことだ。
私達夫婦は都会のマンションに暮らしていた。
やっと新鋭の作家として注目を集めだした私は
あるパーティーの夜
女性ファンと過ちを犯してしまった。

マンションのキッチン
ガチャーン!花瓶が割れ床に花が散らばる(アネモネでは無い、他の花)
「何よ!こんな安物のイヤリングで騙されはしないわ!」
妻はイヤリングを投げかえした。
「どうせその女にも同じ物を買ったんでしょう!」
「どうぞ、その女と何処へでも行けばいい!!!」
「聞いてくれ!良子!あの女とは一夜限りの過ちなんだ!」
「ええ、ええ、そうでしょうよッ!」
「サイン会や講演で帰りが遅いのもその女と会っていたんでしょう!」
「それは違う、良子」
「もうあなたの事信じられない!私達、別れましょう」
「君と別れたくない」
「すまない事をしてしまった、許してくれ」
「僕は君のことを愛してるんだ」
「やり直そう」
「お願いだ」
私は床に泣き崩れる良子を抱きしめた。

タワーマンション
「ただいま、良子」
「おかえりなさい、貴方、お食事は?」
「今日は打ち合わせで外で済ませてきた」
「シャワーを浴びる」
妻が上着を受け取る。アルコールの匂い
「酒を飲んだのか?」
「ええ、ワインを少し、貴方のお帰りが遅いもので待ちくたびれちゃったの」
「そうか、すまない」
「これからは出来るだけ早く帰るよ」
あれ以来、妻は別の部屋で寝ている。まだ怒りはおさまっていない。
時間が解決してくれると思っていた。
私はサイン会と講演旅行でしばらく家を留守にした。

書斎
鳥がさえずっている。
窓からさす陽光に書斎でうたた寝をしてしまったらしい。
何やら台所で音がする。
娘が来たのか?
台所に出向いてみると
キララがエプロン姿でパスタを茹でている
「私だって料理くらい作れるんだから」
キララのエプロン姿が妻にだぶる。
良子の声で
「コーヒー、あちらのソファーに
用意してあるわ」
「ああ、ありがとう」
キララ
「壁の絵、素敵ね」
壁にプロクネとピロネラ姉妹の絵が飾られている。
私はソファーに座り
「プロクネとピロネラの絵だ」
「ギリシャ神話に登場する悲劇の姉妹」
「私の好きな絵だ」
「ふーん、そうなの」
キララがパスタを運んできた。
「はいどうぞ、召し上がれ」
パスタにオリーブオイルを混ぜ
ミニトマトと香草
そして何やら白い物が和えてある
料理というには簡単な品だ。
イタリア料理は妻の得意で
よくキッチンで作っていた。
「ヴァルサッシーナのカプリーノチーズを入れてみたの」
私は一口食べてみた。
酸味がありクリーミーでパスタに合う味だ。
白ワインが欲しくなる。
「おいしいよ」
「やった!婆やに教えてもらったの」
「男を掴むにはまず胃袋ですよって」
「白ワイン飲みます?」
「いや、やめておこう」

私はデッキの向こうに広がる
主をなくした庭を見ていた。

マンションのキッチン
「ただいま」
灯をつける
「良子?」
「貴方、早いのね?」
「どうしたんだ、このマーテルの瓶!」
良子の周りに多数のアルコール瓶
「ごめんなさい、あなた、私、寝れなくて」
「直ぐに食事の・・」
良子は床に崩れる
「良子!」
テーブルの上に手紙が
 ー彼と別れてー

病院
ベットに横になり眠る良子
医者
「アルコールの過度の摂取ですな」
「肝臓の数値、悪いです。以前からかなり飲まれていましたね?」
妻は数日入院し経過を見ることになった。
良子をキッチンドランカーにしたのは私だ。


ナイチンゲールが飛んできてさえずる
妻の身を案じ都会のマンションから
この地に引っ越してきた。
広い庭のある洋館を手に入れたのは
妻の療養に庭いじりが功を奏しないかと考えたからだ。
以前からガーデニングに興味のあった良子は
自分の好みの庭にするのだと張り切り
力仕事以外
私に手伝わせてくれない。
「何を植えるんだい?」
「柚子の木よ、そしてあの辺りはアネモネの花をいっぱい植えるの」
「ハーブや月桂樹なんかは、ここかな。香草類は料理に使うわ」
料理好きの妻は田舎に越してきて
新鮮な食材が手に入ると喜んだ。
「晴れた日はテーブルを庭に出して貴方と私と子供の3人で食事をするの」
「私、腕を振るうわよ」
「まさか、出来たのか?」
「触れてみて」
良子は私の手をお腹にあてた。
「良子!」
やがて娘のエミが生まれ人生で一番幸福な日々が続いた。


エミが3才の時だ。
私は車庫でオープンカーにホロをかけていた。
妻と娘はポストから郵便物を取り出し
先に家の中に入る。
「あなたに雑誌が届いてるわよ」
「きっと、この間のあなたの特集の記事ね」
「私、先に開けてみていい?」
「ああ、どうぞ」
ビーチパラソルと小物を納屋に片付け家に入ると

居間
「おかあさん、ねえ、どうしたの?おかあさん」
「どうしたエミ?」
「おかあさんが動かないの」
「おかあさん、寝ちゃったの?」
テーブルの上に開かれた雑誌
私の特集記事、パーティの写真
ーファンと語らう作者近景ー
浮気相手の女が隅に写っている。
妻に贈ったのと同じイヤリングが耳元に輝いている。
妻の心は壊れた。

寝室
ベッドの中、いつの間にか眠ったようだ。
目覚めると泣いていた。頬が涙で濡れている。
私は夢の中で妻に必死で何か叫んでいたが
目を覚ますと思い出せない。
長い間、心の奥底に固く凍らせていた記憶が
なぜ今頃溶け出してくるのか?
病室の床一面にアネモネの赤い花をばら撒き
手に握りしめて良子は死んだ。
妻が私を許すはずはない。
きっと恨んで死んでいったに違いないんだ。

台所
私が入ると
セントラルキッチンの上に赤い花の一輪挿し
「お庭に綺麗なアネモネが咲いていたの」
キララ、ソファーに座って紅茶を飲んでいる。
「お座りになったら」
カッシーナ・ガラスのテーブル越しに座る
「コーヒーいれましたよ」
私の前にコーヒーとお菓子
「ああ、すまない」
コーヒーを飲むとブラックだ、カップから口を放す
「クレーム・ブリュレを召し上がれ」
「マーマレードよりコーヒーに合うと思うの」
「パリのカフェ・デ・ドゥ・ムーランから取り寄せましたわ」
「焼きたてよ」
私はスプーンで割って一口食べてみた
濃いコーヒーに甘いブリュレが口に広がる
「美味しい」
「ウフフ、でしょう!」
キララ、ジノリのティーカップと皿をテーブルに置く
「お庭、随分と荒れてましたわ」
「妻が亡くなってから足を踏み入れてないんだ」
キララ、ブリュレを食べる
「最近、来てくださらないのね」
「小説が進みませんわよ、何かあったの?」
「思いたって庭の手入れをしたら、疲れて良く眠れるんだ」
「だから近頃夢を見なくてね」
「あら、そう」
キララ、紅茶を飲む
「先生、アネモネの花言葉をご存知かしら?・・許さない、、よ」
「・・・」
「やはり彼、浮気しているみたいなの、彼のシャツに口紅が」
「パーティー会場で女性にぶつかった時に付いたんだろうって言うの」
「・・・」
「喧嘩して飛び出してきちゃった」
「私、やっぱり女検事にして欲しい」
「それでね、先生、悪徳政治家を弁護する彼と法廷で闘うの!」
「どうです?」
私の顔を上目遣いに覗き込む彼女
「それでいこう」
「うれしい!」


草を刈る私
妻は都会の総合病院で精密検査を受けた。
大脳が肥大し脳に影響を及ぼしているそうだ。
大脳の肥大化を止める為、思考を停止させる投薬療法が始まった。
妻は徐々に記憶を失くしていった。
私が見舞いに病院を訪れると、少女に退行した妻は庭に咲いているアネモネの花を摘んで来てくれとせがんだ。
そしてやがて私の事もわからなくなっていった。
ベットで動かない妻。
庭の花を届けること以外、私にはどうする事も出来ない。
神が下された私への罰。
1ヶ月後、妻はアネモネの花の中で静かに息をひきとった。
医者は私に大脳が肥大化を続けた結果、脳幹を押し潰したと告げた。
記憶を全て失くした妻がいったい何を考えていたと言うのだろうか。
娘のエミは妻の両親に預けた。
妻の両親は孫の事を思い私を責めずに育ててくれた。

キッチンのソファー
ソファに座る私、テーブルの上に殆ど空いたコルドンブルー(酒)
少し飲みすぎた。
妻が私の届けた赤い花を病室に撒き散らしベッドで横になっている
「先生、飲み過ぎじゃありません?」
いつの間にか、キララがテーブル越しに座っている
「飲みたい夜だってあるさ」
「何か口に入れないと体に毒ですよ」
キララはテーブルにチョコレートのアルミケースを出す
「ジャック・ジュナンのミントチョコレート、持って来たの」
一つ頬張る、ミントの香りと滑らかな口溶け
「コルドンブルーの薫りが消えるよ」
「キララも飲むかい?」
「薫りがいいんだ」
「私、ハードリカーは飲みませんの」
「少し付き合えよ」
「ワインが良ければワインセラーからとって来るよ」
キララ立ち上がって
「酔っ払らってる先生はキライ」
「私、そのへんのチョコみたく甘くありませんの、ごきげんよう」
背をむけ歩いて消えていく。
私は呆気に取られて見送る
「何なんだ?勝手に出てきて、勝手に消えて」
「・・・」
テーブルのチョコを見る。
「全部食ってやる」
私の口の中は大変な事になった。


熱気球の中
白夜の長い夜を持て余してか、この地方では気球がたくさん空に浮かぶ。
足元に広がる白夜の街並みは、幻想的で美しい。
オペラグラスを覗きながら
「気球の上から見れば、地形が分かりやすいし、うまく伝えられると思うの」
「良く気がついたな、キララ、詳細な描写は読者に臨場感を与えるからね」
「でしょ?ウフフ、先生に相談して良かった」
「ワイロの受け渡し現場を押さえられ、とっさに秘書が現金の入ったバッグを持って逃走する」
「このあたりは古い街並みで細い通路が多い。小説も終盤に近づいている、読者がハラハラする展開になるぞ」
「で、先生、どこで犯人を捕まえます?」
「うーん、ガムラスタンはどうだろう?中世の城塞都市で、あそこなら四方を断崖の海に囲まれ、出入は橋一本だ、犯人一味を追込むには都合がいい」
「あ・・」
「キララ、どうした?」
「彼だわ、あの気球に乗ってるの」
「今日は出張のはず」
「カルロスとスザンヌ!」
気球の中、楽しそうに談笑する2人
「アイツらどうして!イヤまて、これは私の筋書きだ
そんなバカな事があるか」
「先生、私許せない!」
私はオペラグラスを外しキララを見る
「キララ、落ち着け、これは裁判の打ち合わせだ」
「ここは空の上だ、都合の悪い話は誰にも聞かれない」
キララ、オペラグラスを覗いたまま
「そうよね、、先生が書いていらっしゃるのですもの」
気球の中、スザンヌの肩に手を回すカルロス
「・・・私、、先生のこと信じます」
キララの横顔が硬い

書斎
私は原稿用紙に犯人追跡の件を書いている。
オレンジの軸からニブを走らせる。
ブルーに濡れた文字が走る。
背後からキララの声
「先生」
「!」
思わず振り向くとキララが立っている。
「先生がなかなか寝むらないから出てきたの」
「何だって?」
「だって、白昼夢っていうでしょ」
「てんでデタラメだな」
「急いでるの、細かいことは気にしないの!」
「悪徳政治家の妻、スザンヌのこと書いてます?」
「いや、重要な役じゃないし、あと回しだ」
「彼がゴルフのあとは仲間と飲みに行くから今夜は帰らないっていうの」
「怪しいでしょ?」
「彼を尾行しようと思うの」

ゴルフ場入り口
二人は車の中
キララと私、ワッフルを食べながら見張っている
「彼氏を見張るなんてイタズラ、ワクワクしますわ」
「このオープンカー奥様のお気に入りでしたわね」
「私の好みじゃありませんけど」
「お父様のロールスやアストンでは目立ち過ぎますもの」
「ポラックスのワッフル美味しいでしょ?」
「シナモンがけにしてみたの」
「朝から婆やとリエージュまで買いに行ったの
尾行してたらお腹すくと思って」
キララは上機嫌だ。
私は妻の手作りパイを思い
「よく家族で海辺をドライブしていた」
「エミちゃんは3才で可愛かったわ」
「奥様はバスケットに自慢のサンドイッチとパイを詰めてた」
「エミちゃん、貴方と一緒に作った砂の城が波にさらわれたって泣き出したわ」
「海が笑うようにキラキラ輝いてましたね」
「今じゃ夢の話さ」
「私も先生と海辺をドライブしたいな」
「いつだって出来るさ」
インパラ・コンバーチブルに乗るカルロス
「出て来た!」
後を付ける二人

銀行前
車を横付けし、銀行に入るカルロス。
暫くしてスザンヌとバックを持って出て来た。
二人、車に乗り立ち去る。
その後を仲間の車が追う。
「妙ね、銀行で待ち合わせなんて、追いましょう」
インパラはヨットハーバーに向かい二人はモーターボートに乗り込む
水の都、短い夏、多くのボートが海に出る。
キララ
「何処へ向かうのかしら?」
「ここなら私の船がある」
キララと私はボートに乗る。
距離をおいてカルロスのモーターボートを追う。
「気持ちのいい海風!最高だわ!」
キララの長い髪の毛が風に踊る。
冬は海面が凍り陸続きとなる。
私は厚い氷に覆われた海に車を乗り入れ、娘のエミとアイススケートをした。
厳冬の楽しい思い出。
妻がポットに入れ持たせてくれた
サフランが効いた熱いフィッシュスープは最高だったな。
「カルロス、桟橋につけるわ、追いましょう」
船を桟橋に付けた。
係が来て船をあずかる。
カルロスとスザンヌはソドラ・ティターンに向かう
「船だと陸を行くより遥かに早いな」
「ソドラのクラブかしら?」

ソドラ・ティターン クラブ
踊る人々
ビートの効いた曲とフラッシュライト
VIP席に陣取るカルロスとスザンヌ
キララ
「随分時間経ちましたけど動きませんね」
「そうだな」
「私あきちゃた−」
「せっかくのクラブですよ、先生、踊りましょう!」
「見つかる」
「だってあの二人、ブスっと座ったまま出てこないもの」
「私を見つけて、彼なんて言うかしら?」
「じゃ、私、踊ってくるね!」
キララはフロアに出て踊り出す。
政治家の秘書が仲間を連れて現れる。
何やら口論。懐ろのハンドガンを抜こうとする
仲間が止める、捨て台詞の秘書、席を立って仲間と消える。
カルロスとスザンヌ、互いに見つめ合う
カルロス笑いながらおどけて手を広げる。
手を打って笑い転げるスザンヌ。乾杯し、キスする二人。
大音量で聴こえない。
私はフロアのキララを探す。
見知らぬ男達と
踊るキララ、額に汗、耳のイヤリングが光る
踊りながらキララは私を見る。
一瞬目が合う。
フラッシュライト
不覚にも目が離せなくなった私の視線を感じながら
激しいビートに
身を任せ
踊り続けるキララ

家の庭
ナイチンゲールが鳴いて飛び去る
あれ以来キララに会うのが戸惑われ
庭の手入れに没頭している。
柚子の木も綺麗に剪定し
草一本残していない。
随分寝ていない。
白夜が延々と続く。
手入れを始めてから
数時間なのか数週間経ったのか。
過去や夢や妄想が現実と溶けて
何処までも白いベールで包む夜。
やがて太陽が昇り
ざわめく1日が始まるのか
それとも暗闇に包まれ
静寂の眠りにつくのか。
遠雷が響く
本降りになりそうだ。
私は家に入りシャワーを浴びた。
髪を拭きながら書斎に入ると
ズブ濡れのキララが
窓に向かい立っていた。
濡れた服が細い身体に貼り付いている。
「キララ?」
「彼、スザンヌと寝たって、お前みたいな金持ちズラした高慢で我儘なオンナはお払い箱だって」
「彼、バックから札束を出してばら撒いたわ」
「私、婚約指輪を引き抜いて彼目掛けて投げてやった」
「彼、額をおさえ痛いって血を流してた」
「いいきみよ」
「なんでも尽くしてきたじゃない!」
「二人の事務所だってお父様にお願いして一等地に開いたわ!」
「それもこれもみんな彼の為!」
「軌道に乗り出した途端にこのザマ!」
ダン!とキララは机を叩く、原稿が散らばり
万年筆が壊れオレンジの破片が飛ぶ。
「キララ、やめなさい」
キララは私の胸に飛び込み胸を叩く
イヤリングが片方落ちる。
「先生がいけないのよ!
ちゃんと二人のこと書いてくれないからこうなった!
どうして私のこと見てくれないの?
先生に嫌われたくないから彼と付き合った!
でももうイヤ!イヤなの!
好きだと言ってるじゃない!
愛してるの!
なのに夢見ないって、あなた嘘つき!
いつもあの人のこと考えてるわ!」

「私にはあなたしかいないの」
「私だけみて」
泣きながら
私の胸に顔をうずめるキララ
私は濡れて冷たく震える彼女を抱きしめた。


ガムラスタンの海崖
キララが車の中から叫んでいる。
車から投げ出された私は海に落ち沈んでいく。
海面の泡とブルーの海は
沈むにつれ色が奪われ
暗い海底に横たわった
静寂。
何て騒々しい日だ
これでようやく眠れる
誰に邪魔される事なく
永遠に。

海底に赤い花が
一輪咲いた
名前は何だったか?

寝室
目を覚ますとキララが横で眠っていた。
丹精な顔立ち。
幼さが残る。
土砂降りの雨の夜、あんなに激しく感情をぶつけてきたとは思えない
穏やかな寝顔
「キララ」
「ウ〜ン?ナニ〜?」
決着をつけねばならない。
これは私の物語なのだから。

中世の街
石畳を黒いバッグを持った犯人が走っていく。
「待ちなさい!逃げたってムダよ!」
検事キララと警官達が後を追う。
迷路の様に入り組んだ道を犯人を追って駆け抜ける。
「パトカーの手配は出来ている?」
「手分けして追いましょう!」
警官達
「はい、検事!」
その後から私が走ってくる。
「ハァ、ハァ、これは思ったよりキツイな、このままじゃ追いつかん」
人ひとりがやっと通れる狭い通路を駆け下る秘書、追いかけるキララ
「この狭い通路を駆け降りると秘書がバナナの皮にすべり脚を抱えている」
「クスッ、先生、今時バナナの皮なんて落ちてませんよ」
秘書は血を流し倒れている。
「エッ!死んでる」
キララバッグに近づく
「手を挙げな!お嬢さん」
カルロスとスザンヌ
二人の手には拳銃が
「カルロス!スザンヌ!」
「貴方達、一体どうしてここに?」
「俺達はボニー&クライドだ」
「そのバッグを渡して貰おうか」
「何言ってるの?カルロス」
「俺たちが銀行から奪った金だ」
「えっ!」
キララ、抱えているバッグを見る
ボニー
「焦ったいね、クライド!」
ボニーが撃つ
「パン!」
「ヒヤっ!」
キララ、来た道を駆け上がる
「とにかくここから逃げなきゃ!」
バッグを手に逃げる
キララと一緒だった警官達
「銀行強盗、逮捕する!止まりなさい!」
キララの行く手に立ち塞がる。
「私は特捜の検事キララよ!」
警官「バカメ、これを見ろ、お前の手配書だ」
手配書に
連続銀行強盗団ボニー&クライドの一味、キララ
「どうして!」
キララ脇道に逃げこむ
「私を消すつもり!先生!」

路面電車の中
白い服の女、夢中で本を読んでいる

中世の街中
「パン!パン!」
ボニー&クライドが追いつく
あとから警官達が追って来る。
キララが広い道に出ると
先生がオープンカーに乗り待っていた。
「先生!」
「キララ!話は後だ!逃げるぞ!」
キュキュ!タイヤを鳴らし発進する。
「先生、どうして小説の中に?」
「これは私の書いた話じゃない」
「誰かが私の小説を書き換えてる」
「えっ!」
「このままでは2人とも小説の中に閉じ込められ消されてしまう」
「どうしよう」
「とにかく逃げるんだ」
ボニー、車に箱乗りになりバズーカを打とうと狙いを定める
「カチッ!」
不発
「ちっ、カルロス!マシンガン!」
「ホイよ、スザンヌ!」
後ろからパトカーがサイレンを鳴らし追跡する
長い一本橋を過ぎ
車はガムラスタンに向かっていた。
「皮肉な話だ、犯人を追い込もうとした
我々が逆に追い込まれるなんて」
「何が待ってるか、行って見るしかない」
ボニー&クライドが後ろから銃撃してくる
「キャー」
「つかまってろキララ!」
街中をカーチェイス逃げ回る。
パトカー壁にぶち当たり大破
次から次へと追ってくる。
「キララ、ハンドルを持ってろ!」
「ハイ!」
私はハンドガンを取り出しパトカーのタイヤを狙い
「パン!」
街路を抜けた下り、先には陽光でキラめく海が広がる
ボニーがバズーカで狙う
「今度は逃がさないよ!」
ボムッ!
「ウワー!」
「キャー!」
車が欄干を飛び出し
海に向かってジャンプする
私は車から放り出され宙を舞った。

路面電車
「どうしたんです、大丈夫ですか?」
「誰か助けてー!」
その声に白い服の女は本から顔を上げ
声のする方を見た。



ピンポーン、玄関、カギを開ける
「お父さーん、いないのー?」
「勝手にお邪魔しますよー」
ベランダのカーテンを開け庭に降りる
「へ〜ぇ、草だらけだったのに」
一面に広がるアネモネ
「うわー、きれい」
「お母さんが大好きだった花」
しばらく見とれている
目が潤んでいる。
「さてと、部屋を掃除してあげますか」
書斎に入るエミ
「あ〜、こんなにちらけてもう〜」
散乱した原稿を拾い集める
「何にも書いて無いわ・・」
揃えて机におく、壊れた万年筆
細かいオレンジのカケラが散らばる
「荒れてるなお父さん、大スランプ」
「何だろ?」
 床に光る物
「はー!凄いキラキラしてる、このダイヤのイヤリング」
束ねた原稿の上に置く。
「さてはお父さんに恋人が出来たか?」
「・・イヤ、絶対ありえないわ」
「娘の私が嫉妬するほど、仲が良かったんですもの、あの二人」

回想ー
家族で海岸を散歩する。
後ろから娘はスネて父親の脚をキックしている。
手をつないだ2人が娘を見て笑っている。
陽光キラめく海

母の写真に手を合わせ
「きっとお母さん、天国からお父さんのこと見守ってるだろうな」


書斎のゴミを捨てようとし、クレジットカードの控えをみる。
「何よコレ!お父さん何買ったのよー!」
「早く帰ってダンナに相談しなくちゃ!」

ガムラスタンの海崖
「良子!」
空の彼方
微笑む妻の横顔にキラキラと涙が流れ
空中に放り出された私をめがけて流れてくる。
涙は赤いアネモネの花に変化し私を包もうとする。
宙に浮く車の中からキララが叫ぶ
「先生!行っちゃダメ!戻って来て!」
微笑む良子が必死で伝えようとしている。
声は届かない。
口の動きを読みとる
「ああ、そうだね、良子!」
心は爆発しそうだ。
私は振り向き、キララに
「思い出したんだ!」
「アネモネの花!」
「僕は生涯かけて、やっと分かった」
「本当に愛していたのは良子だって」
「行かせてくれ、キララ!」
涙目で睨むキララ
「許さないわ!絶対あなたの事!」
「ワタシ絶対、あなたのこと許さない!!」
キララ涙目潰したダイナマイトスマイルで
「でもね、でもね、先生〜」
さっさと行きなさいよー!!!このオオバカヤローーー!」
「・・・」
「ありがとう・キララ」

空一面
光の煌めきとアネモネの花の中
抱き合う二人
「君は僕のこと恨んでると思っていたんだ・・」
「バカね!」

アネモネの花言葉
ー私は貴方を愛していますー

完了A

エンドロールの後のシーン


処置室
看護師がキララを伴って入って来る
「偶然同じ電車に乗り合わせ、病院まで付き添ってくださった検事さんです」
キララ(片方の耳にだけイヤリング)
「この度は残念でした、できる手は尽くしたのですが、、」
遺族(娘と婿)、礼をのべる
看護師「手続きがありますので、ご親族の方はこちらへ」
親族を伴い退室する。
残されたキララは手を合わせ
「私、もっと先生の書く小説のヒロインでいたかったな」
「でもお別れ、天国で奥様とお幸せにね!」
「先生、私この世界で生きていく事にしたわ!」
バッグを片手に立ち去る。

or完了B


ここまで私の拙い作品にお付き合いくださった貴方様、誠にありがとうございます。

初稿は キララ7 良子3   の思い入れでしたが、
改稿を重ねて キララ5良子5  の比率にしたつもりです。

男ってバカですよ。

作品の舞台となるストックホルムの街並みですが
第二時世界大戦の戦渦を免れています。アニメ化出来れば素晴らしい事と思います。

ミニDVテープで街中を記録しています。作画の参考になると思います。

映画館の大スクリーンでキララを観たくないですか?  

僕は観たいのです。
皆様のご協力があれば可能かもしれないとnoteに掲載致しました。

ご感想頂けましたら幸いです。


キノ桜







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