どろどろ
こどものころ
ねぎが嫌いだった
おとなになり
ひとり暮らせば
あえて買うほど
なぜ苦手なのかと
告げる必要もなかったが
整えられた生き物の
くせのないものばかりだから
その悪意にふれずにきた
ということなのだろうか
たまたま
生活を大切にしようと思い
今日、手に取り
ぴんと伸びた
手提げ袋に余るねぎを家に持ち帰り
包丁で
容赦なく
ざくざくと刻めば
断面に見える
かつて苦手だった粘り
こんな葱がまだあったか
そう思いながら
しかしそれを除く
あるがままを頂けば
それは自然な姿
だのに
わたしはそれを消そうとした
そのことがふと
みずからの来し方の
象徴のようにも思え
すぐさま鍋に放りこんだ
料理なぞ
たいがいの言葉で
飾り立てるものでなし
自分の記憶を
こうしたいと思った
その小さな気づきを
いっしょくたに
混ぜるくらいのもの
そうでなくて
日々など
過ごせるはずがあるまい